80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.126

 

いわゆるひとつの誤解デス  CHA-CHA

作詞 尾関昌也

作曲 尾関昌也

編曲 山本健司

発売 198812

 

 

 

80年代に数々のお茶の間ヒット曲を送り出した欽ちゃんの最終兵器、コミカルなアイドル・ユニットの最大ヒット曲

 

今までにも何度か触れてきましたが、80年代における欽ちゃんこと萩本欽一は自分の冠番組から多くのヒット曲、人気者を世に送り出してきました。イモ欽トリオ、わらべから風見慎吾、よせなべトリオ、おめで隊まで、ヒット曲を産み出す一つのルートにもなっていたのです。その欽ちゃんがテレビ番組「欽きらリン530!!」カラ送り出した最後の人気者が、今回取り上げるCHA-CHAということになるでしょうか。結成前には、のちのSMAPのメンバーがレッスンに加わっていたというのは、わりと有名なエピソードですが、その厳しいレッスンを耐え抜いてデビューに選ばれたのは5人。その後唯一芸能界で生き残った勝俣州和をはじめ、おめで隊の一員だった中村亘利、唯一眼鏡をかけてコミカル担当だった松原桃太郎、後に西村知美の旦那様となる西尾拓美、途中で脱退する木野正人といった面々でした。

 

19889月のデビュー曲Beginningはいきなりのヒットとなり、オリコン最高5位、売上10.9万枚の実績を上げ、順調なスタートを切りました。そしてその勢いが出た状態でリリースした2枚目のシングルが『いわゆるひとつの誤解デス』でした。CHA-CHAというグループは、それまでの欽ちゃんが送り出したグループが一発の企画物的な色合いが強かったのに対し、継続的に活動できるようなグループであることを目標にしていたのでしょう。リリースしたシングルについてはわりと正攻法で、かつてヒットした『ハイスクール・ララバイ』『めだかの兄弟』のような曲のインパクトはほとんどありませんでした。一曲のインパクトが強すぎて、そのイメージがつきすぎてしまうことを嫌ったのかもしれません。お笑いのできるアイドルグループを目指していたともいわれ、実際中村亘利はジャニーズ事務所の所属でしたしね。ある意味、90年代にSMAPが成功させた、お笑いとアイドルの融合というものの原型、試験版だったのかもしれません。

 

『いわゆるひとつの誤解デス』は前作『Beginning』に比べると、言葉遊びが楽しいコミカルな路線にはなっていますが、80年代のアイドルというものは、トシちゃんにしても、マッチにしても、シブがき隊にしても、こういった言葉遊びが込められたコミカル路線のシングルというものは、どこかで切って来るものでしたので、その意味からしても、正統派アイドルソングの次にコミカル路線というのも、当時のアイドルとしては正攻法だといえるでしょう。作詞、作曲はともに尾関昌也が担当。Wink『淋しい熱帯魚』の作曲が有名ですが、そのほかでは工藤静香Jaguar Lineの作曲、田村英里子『プロセス』の作詞などがあります。

 

前述の様に『いわゆるひとつの誤解デス』は言葉遊びがふんだんに盛り込まれた、かなり凝った歌詞です。《君にBETTER SOプリテンダー みんな誤解さ間違っテンダー》といったダジャレ、《いぇ・あの・その・あのA,ha,so, 困ったあげくにA,ha,  従姉妹が増えてくA,cha,cha,》といった言葉変化の中での自分たちのグループ名の織り込み、《1つは車さ》《2つはBikeさ》といった数え歌風と、いろいろ考えたのでしょうね、きっと。それに合わせたメロディーとリズムで、調子の良い曲となった『いわゆるひとつの誤解デス』は、結果としてオリコン2位、売上11.6万枚と、CHA-CHA最大のヒット曲になったのでした。

 

この後、5枚目のシングル『約束』(19898)まで5作連続のトップ10入りを果たしたCHA-CHAでしたが、90年代に入ると人気も下降、木野正人が脱退してメンバーが減ると、19921月をもって解散となりました。現在は勝俣州和が時々番組内で語るエピソードの中で、時折CHA-CHAの名前を耳にするぐらいではありますが、90年代以降の男性アイドルグループのあり方の方向付けをしたという点で、CHA-CHAというグループの存在意義は、結果として大きかったようにも思います。