80年代青謡365アーティスト365曲 vol.120
愛・おぼえていますか 飯島真理
作詞 安井かずみ
作曲 加藤和彦
編曲 清水信之
発売 1984年6月
声優を務めたアニメ映画「超時空要塞マクロス」との相乗効果で、自身初のオリコンチャート入りを果たした癒しの名曲
飯島真理は国立音楽大学の学生であった1983年4月に『夢色のスプーン』でデビュー、この曲は松本隆&筒美京平という黄金コンビによる作詞・作曲で、NHKのアニメのテーマ曲にも起用されましたが、オリコントップ100にも入らない売上と、静かなデビューになりました。しかし1984年ぐらいから、その活動の幅が広がり、人気ラジオ番組『ミスDJリクエストパレード』のパーソナリティに起用されると、映画『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』の声優にも起用され、同時に3枚目のシングルが同映画の主題歌も歌うことになったのです。それが『愛・おぼえていますか』でした。
この『愛・おぼえていますか』は映画との相乗効果でヒット曲となり、テレビのランキング番組などで披露することで、飯島真理の名前と顔を売り出すきっかけになったのです。オリコン最高は7位、売上27.1万枚と自身唯一のオリコントップ10入り曲となったと同時に、その愛くるしいルックスのおかげで、声優アイドルの元祖的存在として、その後に繋がる道を作ったような、結果としてそんな形になりました。そして『愛・おぼえていますか』はヒットしただけあって、なかなかの良い曲で、やはり売れたのも曲が良かったかれということになるでしょう。そこにアニメ映画の存在と、飯島真理の透明感あるボーカルと、前述の愛くるしい童顔が調和して、ヒットに結びついたのです。とにかく聴いていて優しい気持ちになれる、癒しの曲で、私自身もアニメは知らなくても、この曲は大のお気に入りとなったわけです。
作詞は安井かずみ。当時すでに実績十分の女性作詞家で、多くのヒット曲を提供していました。代表曲としては、アグネス・チャン『草原の輝き』、浅田美代子『赤い風船』、石川秀美『あなたとハプニング』、伊藤つかさ『夕暮れ物語』、伊東ゆかり『恋のしずく』、郷ひろみ『よろしく哀愁』、西城秀樹『ちぎれた愛』『激しい恋』、沢田研二『あなただけでいい』『危険なふたり』『追憶』、ザ・タイガース『シー・シー・シー』、西村知美『わたし・ドリーミング』、辺見マリ『経験』などがあります。一方作曲は、夫である加藤和彦ということで、夫婦で作った曲ということになります。
歌詞は具体的、描写的ではなく抽象的、観念的な詩で、あなたの愛のおかげでひとりぼっちの暗い世界から脱出できたわという、あなたに対する愛と感謝を心から綴ったような、なんの衒いも感じられないピュアな内容で、飯島真理の透きとおる声には実にぴったりなのです。聴いているだけ、歌っているだけで自然に涙が伝ってきそうな気持ちにさえなるのは、この詩プラス飯島真理なのでしょうね。残念ながら映画の方は観たことがありませんので、映画とどうリンクしているのかは分かりませんが、アニメのファンにとっては、今もこの曲は人気で歌い継がれているようです。
このヒットをきっかけに、飯島真理はシングルチャートのトップ100にはコンスタントに送り込むようになり、その多くは自身で作詞・作曲を手掛けていました。地道にアーティスト活動も続けているようで、テレビのマクロスの特集では、この懐かしい『愛・おぼえていますか』を歌唱しました。実績からするといわゆる一発屋の範疇に入ってくるのかもしれませんが、あまり一発屋として語られることがないのは、音楽以外の活動もあるからでしょうかね。