80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.118

 

素直にI’m Sorry  チェッカーズ

作詞 藤井郁弥

作曲 藤井尚之

編曲 THE CHECKERS FAM.

発売 198810

 

 

 

チェッカーズの人気安定期にリリース、藤井ブラザーズ作詞・作曲による、喧嘩するほど仲が良いカップルを歌ったあたたかなラブソング

 

 19839月に『ギザギザハートの子守唄』でデビューしたチェッカーズは、2ndシングル『涙のリクエスト』(19841)の大ヒットで一気にブレイク、出す曲出す曲大ヒットさせてしまう人気バンドととして、音楽界を賑わす存在となりました。チェッカーズの代表曲といわれる『涙のリクエスト』『ジュリアに傷心』(198411)は、いずれも1984年にリリースされていて、『涙のリクエスト』の売上がキャリア2位の67.2万枚(最高順位は意外にも2位)、『ジュリアに傷心』の売上がチェッカーズ史上最高の70.3万枚という実績をあげました。またオリコン1位も、3枚目『哀しくてジェラシー』(1984年5月)から『神様ヘルプ!(198511)まで7枚連続(12インチ版含む)で獲得、チェッカーズはまさに人気絶頂にあったのです。

 

 ただチェッカーズというバンド、特にその初期においては、どうしてもアイドルバンド的な捉え方をされることが多く、おそらくそのあたりは彼らも歯がゆさを感じていたのでしょう。8枚目の1位獲得曲となったSong for U.S.A.を最後に、それまで楽曲を提供してきた芹澤廣明とばっさりと訣別してしまうのです。この訣別については、実はいろいろ裏ではあったと聞いたことがあるのですが、それはともかくとして、198610月発売のNANA以降、チェッカーズ解散まで、すべての楽曲をメンバーで作詞・作曲するようになったのです。そういった意味で、『Song for U.S.A.』までのアイドルバンド的な立ち位置から、『NANA』以降での本格的音楽バンドと、チェッカーズという存在はまったく違うものとなっていくのです。

 

 結果から記しますと、セールス面ではかつての爆破的なヒットはなくなり、オリコン1位獲得曲は、『Song for U.S.A.』までの8曲に対し、以後の自作曲では唯一WANDERER(19877)1曲のみ。売上枚数についても、『Song for U.S.A.』までは、12インチシングル『ハート・オブ・レインボー』(19859)29.5万枚を除いて、すべてが30万枚以上であったのに対し、『NANA』以降で30万枚を超えたのは、ラストシングルPresent for you(199211)のみと、明らかに勢いが衰えてしまいました。では、自作の曲がそんなに良くなかったのかといえば、実はそんなことは全くなく、それぞれに味わいのある作品を送り出していて、すべての曲がオリコントップ10に入る安定した支持を得続けていたのです。

 

 チェッカーズの『NANA』以降のシングル曲の作詞は、THE CHECKERS名義のラストシングル『Present for you』を除くと、すべて藤井郁弥が書いているのに対し、作曲はメンバーが代わる代わる務めていました。具体的には鶴久政治、藤井尚之、大土井裕二、武内亨が提供していますが、中でも鶴久政治と藤井尚之が多くなっていて、その中で今回取り上げた『素直にI’m Sorryは藤井尚之が作曲した曲です。いろいろなメンバーが作ったきたチェッカーズの楽曲ですが、テンポのあるロック曲の間に、フミヤが甘い声で歌い上げるバラード系の曲をちょくちょく挟んでくるというのがシングルの流れ。I Love you,SAYONARA(19873)が大土井裕二、Jim & Janeの伝説』(19886)が鶴久政治、そして『素直にI’m Sorry』が藤井尚之と、いずれもチェッカーズのバラード系の曲の中での名曲ですが、作曲者が違うというのも、彼らの懐の広さを表しているのではないでしょうか。

 

 さて『素直にI’m Sorry』はオリコン最高2位、売上19.3万枚という数字でしたが、文句なしの名曲といっていいでしょう。藤井兄弟が、どこか微笑ましくて暖かくなるような、奇を衒わないラブソングを作り上げました。車の中で喧嘩したカップル、怒った女性が《一人で帰ると 車から飛び降りた》のですが、車に残った男が《エンジンかけたら 振りかえり泣き出した》のです。それに対して《帰り道も知らないくせに 今すぐ仲直りをしてあげようか》ということで《素直に I’m Sorry》なのですね。すると女性は《まだ瞳は濡れたまま もうはしゃいでいる》と、言ってみればたわいもないカップルの喧嘩の歌なのですね。泣いたり笑ったり怒ったりしている彼女に対し、《いつも意地を張ってしまうけど》、やっぱり心から愛していると、彼女を見守るような視線をとても温かく感じる歌詞になっているのです。

 

 私自身、よくカラオケでも歌っていましたし、特にチェッカーズのファンでもない当時の友人が、この曲のことを気に入っていたのもよく覚えています。『NANA』以降のチェッカーズは、それまでのように爆発的に売れるシングルこそなかったものの、シングルを出すたびに、今度の曲は誰が作曲したのか、そしてどんな曲調なのか、それがいつも楽しみでしたし、実際にそれに応えて、彼らもいろんなタイプの曲を作ってきたわけですから、やはり実力派バンドでもあったわけです。

 

近年、懐かしのヒット曲などでチェッカーズが取り上げられるのは、自分たちで曲を作っていない頃の映像ばかり。もちろん大ヒットした曲はその頃の曲ばかりなので仕方ないのですが、どうしてもアイドル人気的なイメージばかりがクローズアップされてしまうのが、私としては惜しくて、自作曲を歌っていた頃の名曲の数々を取り上げることで、実力派バンドとしてのもう一面のチェッカーズも若い世代にも紹介してほしいな、などと思うわけです。

 

 

最後に、チェッカーズのシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。

1 素直にI’m Sorry 

2 I Love you, SAYONARA  

3 WANDERER 

4 哀しくてジェラシー 

5 Jim&Janeの伝説 

6 NANA 

7 Song for U.S.A.  

8 あの娘とスキャンダル 

9 ジュリアに傷心 

10 ONE NIGHT GIGOLO 

=80年代発売