80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.106

 

南回帰線  堀内孝雄・滝ともはる

作詞 山川啓介

作曲 堀内孝雄

編曲 石川鷹彦

発売 19804

 

 

 

グループでも、ソロでも、デュエットでもヒット、勢いに乗るベーヤンが無名の新進フォーク歌手と組んだサントリービールのCMソング

 

 堀内孝雄はいうまでもなくアリスのメンバー。特に1977年から1980年にかけてはトップ10入りのヒット曲を連発し、まさにグループとしての絶頂期にありました。さらにソロでも1978年に『君のひとみは10000ボルト』がオリコン1位となる大ヒットとなり、まさに勢いに乗りまくっていた中、今度は男性デュエットとして、当時無名の新進フォーク歌手の滝ともはると組んで出したシングルが『南回帰線』でした。滝ともはるは、1977年にアマチュアのコンテストで金賞を受賞し、翌1978年にアルバムデビューしましたが、堀内孝雄のコンサートツアーに参加したことが縁で、この『南回帰線』に繋がったようです。さらにこの曲はサントリービールのCMソングに使われ、アフリカかどこかの大地で象と戯れるような映像に、ふたりの男くさい歌がはまって、オリコン最高4位、売上37.6万枚のヒットになったのです。特に滝もとはるにとっては、唯一のオリコントップ100入りしたシングルということで、実に貴重な1枚になったのです。

 

 一方堀内孝雄にとっては、グループでヒット、ソロでヒット、そしてデュエットでもヒットと、3つの形態でそれぞれトップ10入りを果たすという偉業(?)を達成しました。ほかに、ソロ、2人組、グループの3つでトップ10入りを果たした歌手はいるのかと考えてみましたが、何人かいましたね。

 ・布袋寅泰  ソロ、2人組=COMPLEX、グループ=BOØWY

 ・高井麻巳子 ソロ、2人組=うしろゆびさされ組、グループ=おニャン子クラブ

 ・岩井由紀子(ゆうゆ)       〃

 ・工藤静香  ソロ、2人組=Little Kiss、グループ=うしろ髪ひかれ隊、おニャン子クラブ

ほかにもいるかもしれません。中でも工藤静香は、ソロ、デュエット、3人組、グループと4形態でヒットを出しているのですね。

 

 さて『南回帰線』ですが、タイトルがいいですね。夢を追い続ける男の生き方を、世界を股にかけて進む旅人に掛けて表現したような言葉です。《男は夢に追われる 孤独なランナー ありがとう 君は故郷》と歌った後で、《転がる石に戻って 夢を食べて生きるさ 南回帰線を越えれば 過去はみな蜃気楼さ》と、ワールドワイドに夢を追い続けているような表現で、地元に残した恋人に、男ならではの言い訳をしているように聞こえます。《無理やり愛の目かくし ほどくおれは罪人》と、愛をふりきって別れた自分を“罪人と言ってしまえば、相手はもう何も言えないという感じでしょう。一方で《追いかける夢があるかぎり 今は遠いあいつも ライバル同士さ》と、夢を選んで突き進むモチベーションとしては、かつて(おそらく)共に夢を語り合って過ごしたライバルの存在があったのですね。このあたりは、男性デュオで歌うとかなり効果的で、歌詞の中では遠い場所でお互いにそれぞれの夢を追い続けている二人が、ステージでは同じ場所で互いに互いを確認しながら歌っているように感じて、ある種のファンタジーにさえ思えてくるのです。

 

 この二人のデュエットはこれ一曲にのみで終わるのですが、特に滝ともはるにとっては、人生を大きく変える一曲になり、白髪のおじさんになった今も、地道に活動している姿が、ホームページなどでみられます。