80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.100

 

人として  海援隊

作詞 武田鉄矢

作曲 中牟田俊男、千葉和臣

編曲 大村雅朗

発売 198011

 

 

 

2の『贈る言葉』を狙った「3B組金八先生」第2シリーズの主題歌

 

 武田鉄矢率いる海援隊のデビュー曲は19738月発売の『恋挽歌』。そして早くも2枚目のシングル『母に捧げるバラード』(197312)がヒットし、オリコン最高10位、売上枚数27.7万枚のじっせきをあげたのです。この曲で1974年の紅白歌合戦にも出場し、一躍人気者になりました。武田鉄矢は俳優としても映画やドラマで引っ張りだことなり、その最たる作品が1979年に始まった「3B組金八先生」というわけで、その主題歌『贈る言葉』(197911)はオリコン1位、94.5万枚の大ヒット。卒業式などの別れの場で、現在まで歌い続けられるスタンダードとなったわけです。

 

 その勢いを持ち込んで1980年代に突入、「3B組金八先生」は第2シリーズを迎えることになり、当然のように主題歌は海援隊が担当することになりました。「3B組金八先生」第1シリーズでは、田原俊彦、近藤真彦、野村義男のたのきんトリオをはじめ、現在も俳優で活躍する杉田かおる、鶴見辰吾、小林聡美、そして今や議員さんの三原順子(じゅん子)ら、そうそうたるメンバーが生徒役として出演、どんな新しいスターが登場するのかという点でも、このシリーズは注目を浴びていくことになります。ちなみに第1シリーズと第2シリーズの間には、岸田智史が教師を務めた「1B組新八先生」が放映されましたが、このシリーズで有名になったのは、ほぼ見栄晴くんのみと、ややしょぼい感じになってしまいました。

 

 そしてこの『人として』が主題歌となった「3B組金八先生」第2シリーズからは、アイドルとして人気を得た沖田浩之、伊藤つかさ、ひかる一平、今も俳優として活躍する川上麻衣子などを輩出。前作と比べるとやや小粒な印象は否めませんが、それ以上にドラマの内容がかなり衝撃的で、当時社会問題になっていた校内暴力の問題を真正面から取り上げ、劇中のセリフで使われた「腐ったみかん」の例えは、その後いろいろな場面で使われることにもなります。そして不良少年を演じた直江喜一は、芸能界を去った以後も、あの人は今的な番組でしばしば呼ばれるほどの強いインパクトを残したのです。今ではすっかりいいおじさんになった姿も結構知られていますね。

 

 ただこの『人として』はあまりに前作が売れ過ぎたせいか、地味な印象を与えてしまったのかもしれません。オリコンでの最高順位は25位にとどまり、売上も12.1万枚と、『贈る言葉』と比べると、大きく売上を減らす結果になったのです。確かに歌詞の内容もやや哲学的といいますか、人間とは何だ、人生とは何だというような内容で、言ってしまえばあまり面白味がないのです。《思いのままに生きられず 心に石の礫なげて 自分を苦しめた愚かさに気づく》《私は悲しみ繰り返す そうだ人なんだ》《鳥のように生きたいと 夕空見上げて佇むけれど 翼は愚かなあこがれと気づく》《私は大地に影おとし 歩く人なんだ》…。なんか説教くさいですよね。先生という役柄が染みついてきたのでしょうか。作品に合わせて書き下ろせばこんな感じになるのでしょうから、10万枚を超えたというのは上出来なのかもしれませんね。

 

 海援隊はその後、解散と再結成を繰り返しながらも、断続的に活動を続けているようで、時折贈る言葉をテレビなどで歌ってくれることもあります。やはり『贈る言葉』という誰もが知っているヒット曲を持っているということは、大きな強みなのですね。