80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.99
愛が止まらない Wink
日本語詞 及川眠子
作詞・作曲 M.ストック M.エイトケン P.ウォーターマン
編曲 船山基紀
発売 1988年11月
当時流行りのユーロビートカバーの集大成、笑わない女性アイドルデュオのブレイク曲
女性アイドルデュオとして成功したケースは結構限られています。Winkがデビューした1988年当時まででみてみると、まず思い浮かぶのは社会現象にもなったピンク・レディーでしょう。それ以前にもザ・ピーナッツという存在があったのですが、アイドルという概念からは外れてしまいますので、やはりアイドルデュオということでは、ピンク・レディーでした。その後は数々の女性アイドルが、ヒットを目指してデビューしていきます。ザ・リリーズ、キララとウララ、リンリン・ランラン、ポピンズ、パンプキン…。しかしヒットチャートを賑わすようなデュオは登場せず、ようやくオリコントップ10にはいってきたのが1985年のうしろゆびさされ組でした。ただうしろゆびさされ組は母体がおニャン子クラブという大人数グループでしたので、純粋な二人組アイドルではありません。純粋な二人組としてはBaBeが1987年にデビューし、トップ10入りを果たしたぐらいでしょうか。ですから、1988年4月に『Sugar Baby Love』でデビューした、鈴木早智子と相田翔子の二人組Winkも、茨の道が待っているのではないかという思いも正直なところありました。
デビュー曲『Sugar Baby Love』はわりと有名な洋楽のカバー曲でしたが、当時人気の南野陽子主演のテレビドラマ『熱っぽいの』の主題歌に使われてこともあって、オリコン最高20位、6.1万枚とそこそこの広がりをみせます。このWinkにとってのカバー曲+タイアップという組み合わせが、実はその後のヒットパターンにつながっていくわけで、ひとつの伏線になっていたのです。ただ2ndシングル『アマリリス』(1988年9月)はオリジナルの曲でしたが、オリコン30位、売上1.4万枚と下降してしまい、なかなか女性アイドルデュオは難しいかとも思われましたのです。そんな中で二人の運命を大きく変えたのが3rdシングル『愛が止まらない』だったのです。
『アマリリス』が売れなかったことで、オリジナルを一曲限りで見限って、再びカバー路線へと走るのですが、そこで選択した『愛が止まらない』が見事に大成功するのです。『愛が止まらない』の原曲は、当時『ラッキー・ラヴ』がヒットしていた豪州のカイリー・ミノーグの『Turn It into Love』。当時日本で流行していたユーロビート系の作品で、まさに日本人が大好きそうなメロディーだったのですね。ユーロビート系の洋楽を日本のアーティストがカバーしてヒットするという流れが当時続いていて、カバー曲にするのだったら、その流れに乗ってしまおうと考えたのかどうか、選んだ曲が見事に正解だったわけです。さらにはこれまた南野陽子主演ドラマ『追いかけたいの!』の主題歌に起用され、多くの人に聴いてもらうチャンスを得たのです。その結果、楽曲の良さが徐々に広がりチャートを上げていくと、翌1989年になってついにオリコン1位に輝く大ヒットとなったわけです。売上も64.5万枚と、Wink最大の売上実績を残したシングル曲にもなりました。それまでけっしてアイドルとしての露出が多い二人ではなかったのですが、楽曲の良さに引っ張られて、Winkのふたりの「笑わない」キャラクターにもスポットが当てられ、以降はヒットチャート上位の常連になっていくのですから、この『愛が止まらない』との出会い、選択は彼女たちにとっては奇跡的で運命的な出来事といえるでしょう。
『愛が止まらない』はもちろん日本人好みのせつない系メロディーが受けたということは前提にあるものの、及川眠子がつけた日本語詞もヒットの大きな要因になっていると思います。恋人がいる相手に対して恋情が次第に高まっていき、心の中で抑制がきかなくなっていく様子を見事に表現しています。その及川眠子ですが、この後もWinkの作品に関わることが多く、『涙をみせないで』『淋しい熱帯魚』『Sexy Music』など、多くのヒット曲に歌詞を提供していきます。そのほかのアーティストではCoCo『EQUALロマンス』『はんぶん不思議』、ゆうゆ『-3℃』などがあります。
《Car Radio 流れるせつなすぎるバラードが 友達のラインこわしたの》で、いきなり危うい展開に引きずり込まれ、《彼女の存在なら 初めから百も承知よ》で女性の置かれた状況と覚悟が伝わってきます。さらには《走りだした愛に理性のバリアは効かない ルームライトを消す 指がふるえ》と後戻りできない状態へとなだれ込んでいくのですが、この危なっかしさが、Winkのふたりとなぜか重なっていくのですね。よくできた日本語詞だと思います。
この曲で一気に人気アイドルとなったWinkは、1989年『淋しい熱帯魚』(1989年7月)でレコード大賞まで獲得し1993年ごろまで、女性アイドルデュオとして一時代を作っていくことになるのです。その後は解散、相田翔子は天然系のキャラクターを見出され芸能界で活躍を続け、一方鈴木早智子は男性との問題をきっかけにヌードになったりと、やや対照的な人生を歩んでいるようにも思いますが、Winkの残したヒット曲は今でも愛され続けている(振り付けも含めて)ということは、素晴らしいことだと思っています。
最後に、Winkのシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。
1 愛が止まらない ★
2 咲き誇れ愛しさよ
3 真夏のトレモロ
4 背徳のシナリオ
5 Sugar Baby Love ★
6 Sexy Music
7 淋しい熱帯魚 ★
8 摩天楼ミュージアム
9 追憶のヒロイン
10 涙をみせないで ★
★=80年代発売