80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.97

 

リバイバル  五輪真弓

作詞 五輪真弓

作曲 五輪真弓

編曲 ミッシェル・ベルナルク

発売 19819

 

 

 

暗い曲を歌う女性シンガー・ソングライターとして、一気に認知度を上げた大ヒット曲の翌年にリリース、雨音と雷鳴が印象的な、失くした恋を歌った20枚目シングル

 

五輪真弓は197210月、アルバムと同時シングル『少女』でデビュー、いきなり10.4万枚(オリコン最高は30)のヒットとなりました。五輪真弓は当時から海外志向が強く、デビューアルバムからいきなり米国でのレコーディングをしたようですが、その後フランスでもアルバムを発売したり、楽曲の編曲を海外の音楽家がおこなったりと、繋がりは深かったようです。たしかに五輪真弓の歌は、日本の歌謡曲っぽさと同時に、古いフランス映画にでも流れてきそうなムードを持ち合わせているように感じられます。

 

その後19783月にリリースした13枚目のシングル『さよならだけは言わないで』がオリコン最高13位、売上26.4万枚と、なかなかのヒットとなり、次第にその知名度を上げていきます。そして、五輪真弓の名前を一気に日本中に広げたのが、19808月にリリースした18枚目のシングル『恋人よ』でした。1980年の年末から1981年の年始にかけて、ヒットチャートの上位に君臨する大ヒットとなり、オリコン最高1位、売上96.1万枚と、もうすこしでミリオンセラーとなるほどの実績を残したのです。後にも先にも五輪真弓のオリコントップ10入りした曲は『恋人よ』のみであり、これにより1980年の紅白歌合戦にも出場するなど、当時まだ数も限定された女性シンガー・ソングライターとしての地位を確立していったわけです。

 

ただ、この『恋人よ』のイメージがあまりにも強烈すぎて、五輪真弓=“暗いというイメージも一方で出来上がってしまった面はあります。確かに『恋人よ』に限らず、彼女の歌う曲の多くは暗いイメージですし、さらに輪をかけるように、歌っている表情が、どうしても暗く見えてしまうのでしょうね。暗い曲を歌うのですから、ニコニコと笑顔で歌うわけもありませんし、アイドル歌手ではないのですから、愛想を振りまく必要もないので、暗い表情で歌うというのは当たり前、むしろ歌詞の内容を表情でも伝えようとする表現力も素晴らしいと、褒められるべきことであるはずなのです。ただ同じ歌番組の中で近藤真彦や松田聖子らと一緒に出て歌ったりすると、どうしても五輪真弓の印象が際立ってしまうのでしょう。

 

そんなイメージが定着した中で、20枚目のシングルとして発売したのが『リバイバル』でした。この曲の編曲はフランスの音楽家ミッシェル・ベルナルクによるもので、このあたりは五輪真弓の独自性が現れていますが、特に印象的なのが、曲のイントロに響いてくる雨と雷鳴の音です。歌詞の中でも《降りしきる雨の中を》《夏の日の稲妻のように》とありますが、それに合わせて編曲の際に入れ込んだのでしょうか。その雨と雷鳴が実に効果的で、曲をよりドラマティックなものに仕上げているのです。ですから、他の五輪真弓の曲とはやや違った趣を感じられる面もあります。歌詞の内容は、過去にはかなく消えた恋を振り返って歌う曲で、けっして明るい曲ではありません。《はかなく消えたふたりの恋》《激しく燃えた心が今は灰色のリバイバル》《涙ぐむラストシーン》《あなたの面影が今は蒼ざめたリバイバル》…やっぱり暗くなるような言葉が並んでいますね。

 

それでも『恋人よ』や『さよならだけは言わないで』のズドーンと落とされるような暗さとはちょっと違っていて、どこかお洒落な感じはあります。メロディーもそれらに比べるとスマートでかっこよく聴こえてきたりもして、このあたりは編曲の効果かもしれません。結果、オリコン最高24位ながら、12.9万枚を売上げ、五輪真弓としては『恋人よ』『さよならだけは言わないで』に続く3番目の実績を残しました。それとともに、2年連続出場となった1981年の紅白歌合戦でも披露されたのです。これ以後はこれといったヒット曲は出ませんでしたが、独自の世界を歌い続け、音楽界でも一定の地位を築いていったわけです。