80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.96
ブルージーンズ・メモリー 近藤真彦
作詞 松本隆
作曲 筒美京平
編曲 馬飼野康二
発売 1981年6月
カラオケで歌うと気持ちいいこと請け合い、間奏に入る《バカヤロー》がとにかくかっこいい、マッチ自身主演の映画主題歌
いよいよマッチです。ヒット曲が多数ありますので、1アーティスト1曲限定とすると、どの曲を取り上げようか非常に迷いました。実は最初に『Baby Rose』(1986年9月)とタイトルまで書いたのですが、大人の渋いマッチもいいけど、やはりヤンチャ盛りのマッチらしい曲にしようと思い直して、『ブルージーンズ・メモリー』に変えました。この曲は近藤真彦3枚目のシングルで、同名の自身主演、たのきん出演の映画主題歌でもあります。
マッチこと近藤真彦は、1980年12月に『スニーカーぶる~す』でデビューし、いきなりオリコン1位&ミリオンヒット(104.7万枚)を達成。デビューと同時にトップスターに君臨し、以降出す曲出す曲ヒットと、1980年代前半の歌謡界を引っ張る存在となったのです。3枚目のシングル『ブルージーンズ・メモリー』も当たり前のように大ヒットし、オリコン1位、売上59.8万枚の実績を残しました。この売上は、近藤真彦のシングルでは『スニーカーぶる~す』、4枚目『ギンギラギンにさりげなく』(1981年9月)の81.6万枚、7枚目『ハイティーン・ブギ』(1982年6月)の60.7万枚に次ぐ4番目に売上が多いシングルになります。
『ブルージーンズ・メモリー』の作詞は松本隆、作曲は筒美京平と、まさに黄金コンビの作品でして、これはデビューから3作続けての組み合わせで、これ以降にも何曲か同じ組み合わせで作られています。『スニーカーぶる~す』、『ヨコハマ・チーク』(1981年3月)、『ふられてBANZAI』(1982年3月)、『ホレたぜ!乾杯』(1982年9月)、『ミッドナイト・ステーション』(1983年1月)、『ためいきロ・カ・ビ・リ・ー』(1983年7月)、『ロイヤル・ストレート・フラッシュ』(1983年11月)、『Made in Japan』(1988年4月)が二人の作詞・作曲による楽曲でした。その他にそれぞれ別の作詞家や作曲家との組み合わせでも、近藤真彦に楽曲を提供しています。
当時はアイドルの曲だときくと、とかく見下されがちだった風潮もあったのですが、80年代アイドルの曲が今でも歌い継がれている事実を思うと、実は80年代アイドルの曲は名曲の宝庫であったのだと、年月を経て認識させられます。『スニーカーぶる~す』なんかは、本当にかっこよくて、それでいて哀愁も感じられる素晴らしい曲ですよね。そしてこの『ブルージーンズ・メモリー』も、それに負けないくらいにかっこいい曲なのです。
『ブルージーンズ・メモリー』の肝は、なんといっても後半に入るセリフ《さよならなんて、言えないよ。バカヤロー!!!》の絶叫セリフでしょう。ヤンチャなイメージの当時の近藤真彦にはまさにぴったりのセリフで、なんでも元々のセリフを本人の希望で変えたともいわれていますね。私自身、このセリフを叫びたいがために、よくカラオケでこの曲を選んで歌ったものです。考えてみれば、当時のジャニーズを中心とする男性アイドルは、必ず1回はセリフの入る歌を出していました。田原俊彦は『悲しみ2ヤング』の《Oh BaBy, I Can't Say Good-Bye》で甘く囁き、シブがき隊の『挑発∞(無限大)』ではヤックン、フックンのあとにモックンが《もう迷わないぜ 抱いてやる!》と情熱的にシャウト、西城秀樹は《君が死んだら 俺は死ぬ でも 俺が死んでも君は死ぬな!》から続く長セリフが熱い『ジャガー』のほか、『白い教会』『ちぎれた愛』『リトルガール』などがセリフ入りとなっていました。最近こうしたセリフ入りの曲があまりないように思いますが、どんなものでしょうかね。
さて『ブルージーンズ・メモリー』に戻しますが、歌詞の内容はいわゆる上京ソングです。上京ソングには、旅立つ側からの歌と見送る側と歌とがありますが、こちらは後者。《ガラスの都会へと旅立つ》女を見送りに来た男。《列車の扉を右手で叩けば 別れのベルが鳴る》《動く列車の窓から お前が投げたネックレス ホームを走る俺への》と、まるで映画のワンシーンのような情景が浮かんでくる、ドラマティックな歌詞になっているのです。近藤真彦はけっして歌が上手い歌手ではありませんが、不思議と味があるのですよね。それもその時その時の年齢相応の味わいが。歌唱力については、人気を二分した田原俊彦がいろいろと揶揄されたこともあって、あまり近藤真彦の歌唱力を議論されるということはなかったのですが、片岡鶴太郎をはじめ、よく物まねもされていたということからすると、特徴的でやはり「味」のある歌唱でぁったということがいえるでしょう。
さてその後の活躍から今に至るまでについては、今さら紹介するまでもありません。ジャニーズ・アイドルのひとつり理想の形として、今も存在感を後輩たちに見せ続けている姿は、男からみてもかっこいいと思わせるものがあります。もっとも直近ではスキャンダルで謹慎という状態になってしまったようで、マッチのヤンチャぶりは、年をとっても抜けていなかったということで…
最後に、近藤真彦のシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。
1 ブルージーンズ・メモリー ★
2 スニーカー・ぶる~す ★
3 Baby Rose ★
4 夢絆 ★
5 情熱☆熱風☽せれなーで ★
6 アンダルシアに憧れて ★
7 真夏の一秒 ★
8 ヨコハマ・チーク ★
9 永遠に秘密さ ★
10 ロイヤル・ストレート・フラッシュ ★
★=80年代発売