80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.93

 

白い奇蹟  聖飢魔Ⅱ

作詞 デーモン小暮

作曲 エース清水

編曲 聖飢魔Ⅱ

発売 19898

 

 

 

デーモン小暮のキャラクターだけでない、音楽性を世間に認めさせ、紅白歌合戦でも歌ったファンタジック・ソング

 

 聖飢魔II1985年にアルバム(彼らの言葉では大教典)デビューし、翌19864月にはシングル(彼ら曰く小教典)『蝋人形の館』をリリース、これがオリコン最高17位、売上枚数9.2万枚のスマッシュヒットとなりました。ただ聖飢魔Ⅱというバンドは、地球征服のために地球へやってきた悪魔だという、そのとんでもない設定と、派手な白塗りメイクと独特の話し方で強烈なキャラクターを作り上げたボーカルのデーモン小暮のインパクトで、どうしても色物的な匂いを払しょくできない面はありました。

 

 デーモン小暮はタレントとしても引く手数多で、特に大相撲に詳しい好角家としても有名になり、後年には大相撲中継のゲストにも呼ばれるほどにもなりました。驚くべきは、そのNHKの相撲中継でアナウンサーからも「閣下」と呼ばれていたことで、NHKをしてまでその作られたキャラクターの世界に引き込んでしまう力、その徹底ぶりには恐れ入るばかりです。そして今でもそのバカげたキャラクターを守り通しているということは、凄いとしかいいようがありません。拍手です。

 

 さてそんなデーモン閣下のタレント性もあって、聖飢魔Ⅱとしてのバンドの知名度はずっと上がっていったのですが、一方で『蝋人形の館』のあとはなかなか曲も売れず、セールス面ではやや停滞をしていました。しかしそんな空気がやや好転し始めたのが、5枚目のシングルSTAINLESS NIGHT(19885)で、これがデビューシングル以来のトップ20入りの17位、売上も4.6万枚とやや回復の兆しが見えてきたのです。さらに6枚目Winner!(198810)は自己最高順位の11(売上は4.6万枚)を記録し、いよいよ音楽面でも支持を増やしてきていたのです。そしてそんな中でリリースした7枚目シングルが『白い奇蹟』であり、オリコン順位は最高で12位でしたが、売上は8.5万枚と、デビューシングルに次ぐ実績を残したのです。さらにこの『白い奇蹟』は、翌1989年に初出場したNHK紅白歌合戦で歌唱するところとなり、まさに人類に悪魔のバンドとして認められるターニングポイントの曲になったのです。

 

 さてこの曲はといいますと、悪魔のイメージとはまったく異なる、ファンタジックである意味美しい情景を思い浮かべさせるような作品になっています。《はしゃぎ疲れて 胸の熱奪う妖精よ》《傷ついた羽を広げ 無理して翔んだあの頃》《このまま時を止め かりそめ描いた絵の中へ》とファンタジーの世界に連れ込まれてしまうような言葉を並べ、それをデーモン小暮がしっかりとした歌唱で聴かせるので、普段のだみ声で「吾輩は…わっはっは」と高笑いする姿とはまるでギャップがあるのです。『蝋人形の館』は彼らのキャラクターと合致したような、詩も曲も音も結構ハードめな曲だったのですが、『白い奇蹟』では、違う面も見せようとしたのかどうかわかりませんが、とにかく日頃持つイメージとは異なる曲で勝負をかけ、それによって見事に新しいファン層をも獲得したのではないでしょうか。

 

 その成果として、次のシングルBAD AGAIN(19902)はオリコン最高5位と初のトップ10入りを果たすとともに、売上も自己最高の9.9万枚をあげ、名実ともに人気バンドの仲間入りを果たしたのでした。もっともそのキャリアにおいて、トップ10入りしたシングルは『BAD AGAIN』のみであり、この1988年から1989年あたりが、結果的にバンド聖飢魔Ⅱの全盛期となったわけです。その後19991231日をもって解散し、2000年代からは、時折期間限定で集結しては、断続的に活動を見せているという状態となっています。