80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.65
Doファッション 中村繁之
作詞 都志見隆
作曲 都志見隆
編曲 船山基紀
発売 1985年7月
たのきんに続けと送り出された、ジャニーズ最後のソロ歌手のデビュー曲
1985年にジャニーズ事務所からソロデビューした中村繁之。もちろん当時においては、ジャニーズのソロデビューという形は珍しいことではなくて、田原俊彦、近藤真彦をはじめ、それ以前はむしろ主流でした。郷ひろみ、豊川誕、井上純一、川崎麻世、ひかる一平などがソロデビューを果たし、賞レースなどを賑わしたものです。ただ一方でジャニーズ、フォーリーブス、シブがき隊などのグループとしての流れもあったわけで、この中村繁之のデビューを境に、主流というだけでなく、ほぼすべての歌手デビューはグループとして送り出す形になっていくわけです。実際中村繁之についても、ソロデビュー以前に、「イーグルス」という名前で1983年にレコードデビューをしていたのです。ですから、完全な新人といんわけではありませんでした。
ジャニーズからのソロデビューですから、当然大きな期待を背負っていたわけなのですが、なぜか中村繁之の人気はパッとせず、デビュー曲『Doファッション』のオリコン最高位は32位、売上枚数は3.0万枚にとどまったのです。しかもこれがキャリア最高で終わってしまうのですから、ジャニーズがソロデビューに二の足を踏んでしまうようになったのも、仕方ないのかもしれません。その後は生田斗真や風間トオルのように俳優としてのソロデビューや、グループに所属しながら、或いは脱退後にソロ企画というものはありましたが、純粋な歌手としてのソロデビューはほぼなくなってしまったのです。もっとも中村繁之の結果が、過去のソロデビュー組と比べて極端に悪かったかといわれればそういうわけでもなく、川崎麻世45位、井上純一43位、豊川誕22位、ひかる一平19位というキャリア最高順位と並べると、まああり得る範囲ではあったわけです。ただ他のグループデビューを果たしたジャニーズ達とくらべると、やはり見劣りしてしまうので、リスクを減らすという点でも、複数の個人の価値を上げるという意味でも、グループ重視という戦略は仕方なかったのでしょう。それも時代の流れということで、女性アイドルについても、男性アイドルに遅れて、やがてグループが台頭していくことになるのです。
『Doファッション』はジャニーズとの仕事も多い都志見隆の作詞・作曲で、安心して任せられるといったところだったのでしょうが、やはり楽曲どうこうよりも、中村繁之自身の人気が上がらなかったということが、セールスが伸び悩んだ最大要因であることには違いないでしょう。どうみても正統派イケメン(当時そんな言葉はなかったですが…)ではなく、爽やかな可愛い系でもなく、男らしいワイルド系でもなく、いうとすれば愛嬌のあるファニー系。グループの中であれば、対比による個性で際立たせることもできたのかもしれませんが、ソロとしては難しかったのでしょうか。
その後も2枚目『カイショウ無いね』、3枚目『雷魂』、4枚目『マジカル・シンデレラ』もパッとせず、1993年には事務所を退所するに至りました。ただアイドルをやめても地道に活動は続け、俳優として舞台を中心にテレビドラマなどで活躍、また音楽活動も行っているようです。