80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.46

 

愛のオーロラ  荻野目慶子

作詞 岩谷時子

作曲 林哲司

編曲 萩田光雄

発売 19837

 

 

 

女優さんも一度はレコードを出した時代、妹にさきがけて発売した出演映画のイメージソング

 

 荻野目姉妹というと、姉慶子は女優、妹洋子は歌手と、それぞれ別の道で活躍したのですが、実は姉慶子の方が歌手デビューも早かったのです。出演映画『南極物語』のイメージソングとして発売された『愛のオーロラ』が、荻野目慶子がリリースした唯一のです。映画も大ヒットしましたが、そのプロモーションもあって、テレビの音楽番組でも歌いましたし、ラジオでもよく流され、結果としてオリコン順位こそ29位でしたが、売上は6.4万枚と、そこそこの結果を残しました。ちなみに翌年の妹洋子のデビュー曲『未来航海』(19844)7.0万枚でしたから、結構いい勝負だったのです。

 

 お姉さんの歌ですが、それが妹さんとはまったく似ても似つかぬ歌声なのですね。どちらかというと妹荻野目洋子は、平べったくてはっきりしている歌い方なのですが、姉荻野目慶子はやわらかくて、透き通るような声なのです。上手かといわれると、そこは本職ではないので、まあこんなものでしょうね、ぐらいの感じなのですが、お姉さんはお姉さんで魅力的な声ではあります。曲自体も結構暗い曲なので、『愛のオーロラ』を聴くと気持ちも沈んでくるのですが、本人のキャラクターとも結果的にどこか重なってしまうようなところもありますね。このあといろいろ私生活でも、びっくりするような話が出てきたりもしましたから…。

 

 作詞はこの当時ですでに重鎮といった存在だった岩谷時子、対して作曲は売出し中の気鋭林哲司ということで、この組み合わせも意外性がありました。岩谷時子は、加山雄三やピンキーとキラーズ、初期の郷ひろみあたりの作品を多く手掛けていましたが、その他も島倉千代子や越路吹雪、フランク永井、ザ・ピーナッツ、石原裕次郎、橋幸夫等々昭和の重鎮と仕事をしてきたような作詞家です。そんな作詞家が歌手としては新人の荻野目慶子に詩を提供したのですから、レコード会社側もかなり力が入っていたということなのでしょうね。

 

 歌詞は当然ながら、《寒さに凍るとき》《光さえも忘れた地の果て》《白い大地いろどるオーロラ》など、『南極物語』を意識したものになっています。南極の大地を舞台にした男女の愛の物語という、壮大な歌詞なのです。もっとも『南極物語』は犬の物語ですし、あくまでもイメージソングということで、作品の中では使われてはいないようです。プロモーションのために作られた曲ということなのでしょう。それだからこそ、作品のストーリーとは一致しなくても、スケールを感じさせるような曲が必要だったということなのでしょう。そしてそれを出演者自身が歌うことで、話題も集めようと、そんな戦略で白羽の矢が立ったというわけなのですね。

 

 1980年代は、今と比べて、歌手が本業でない女優が歌を歌わせられるということは結構多くて、あんな人もレコードを出していたのということがままありました。荻野目慶子もそんな例のひとつだということでしょう。ただやはり歌手としての活動は好きでなかったのか、或いは妹に遠慮したのか分かりませんが、2枚目のレコードが発売されることはありませんでした。