80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.17

 

もう一度  竹内まりや

作詞 竹内まりや

作曲 竹内まりや

編曲 山下達郎

発売 19844

 

 

シンガー・ソングライター竹内まりやとしての最初の一歩を踏み出した、休業期間を経ての久しぶりのシングル曲

 

 SEPTEMBER』『不思議なピーチパイ』などのヒット曲を出していたものの、他の作家の曲を歌うことがほとんどで、ともするとアイドル的な扱いをされていたデビュー当初の竹内まりや。その後、198112月のシングルを最後に休業宣言し、この間に山下達郎氏と結婚。そんな中、24か月振りに発表したのが、この『もう一度』でした。しかも作詞、作曲とも竹内まりや自身が手掛け、結果としてオリコン20位という、『不思議なピーチパイ』の3位に続く実績を残したことで、この後女性シンガー・ソングライターとしての揺るぎない地位を確立していく第一歩となった、竹内まりやにとってのまさにターニング・ポイントとなる作品となったわけです。

 

 もっともソングライターとしての片りんは、この休業期間中に見せていまして、女性アイドルたちに提供した曲がなかなか良い曲だと、評価を得ていたのです。河合奈保子『けんかをやめて』(19829)Invitation(198212)、堀ちえみ『待ちぼうけ』(19828)、薬師丸ひろ子『元気を出して』(19842月 アルバム収録曲)、岡田有希子『ファースト・デイト』(19844)などなど、女の子の揺れる恋心を歌った佳曲を多く送り出していました。そんな中ですので、今度は自身に対してはどんな曲を作って来るのか、当然復帰作として注目されていたわけなのです。

 

 竹内まりやの作る曲は、日本人の琴線に触れるところを絶妙についてくるといいますか、どこか歌謡曲のニュアンスをうまく取り込んで、聴く者を巧みにくすぐってくるような、そんなところがあるように思うのです。この『もう一度』はまさにそんなところが最大限に発揮された曲ではないでしょうか。どこか懐かしさを覚えるような心地よさ、一度聴いただけですーっと入り込んで心を掴み、そこから離さない残りやすいメロディ、そしてそのメロディに調和した感情移入しやすい等身大の歌詞。これ以前は、ややもすると、英語の歌詞にこだわってみたり、ちょっとしゃれたメロディーを作ろうとしてみたりと、多少かっこつけたような面も感じられたのですが、アイドルへの曲の提供で、何かコツをつかんだのかもしれません。以降は『駅』然り、『シングル・アゲイン』然り、『純愛ラプソディ』然り。どれもどこか懐かしい歌謡曲の匂いがしながらも、歌詞の主人公の気持ちにすぐに入り込めるような等身大の詩で、歌の世界に素直に入り込めてしまうのです。その意味でこの『もう一度』は、やはり竹内まりやを方向づけたという部分で、大きな意味を持つ曲だと、私は勝手に位置付けているのです。

 

 この『もう一度』に関していうと、歌詞の内容はたわいのない内容です。簡単に言うなら、倦怠期を迎えたのでしょうか、結婚してしばらく経過した夫に対してかつての愛情を忘れかけた女性が、昔のような気持ちを取り戻したいと思い直す、そんな歌です。使っているのも、極めて普遍・普通の単語をばかりで、トレンド性の強い単語、刺激的な単語、意表をついてくる単語、そういった目を引く単語は一切使っていないのです。でも逆にそれによって、誰にとっても自分を歌の主人公に投影させやすくなっているようにも思うのです。これはアイドルに提供した曲にも言えることで、まさに聴いている人の心を掴み取る技を身につけたのが、この『もう一度』だったのではないかと考えるわけです。

 

 そしてもうひとつ、竹内まりやの曲で触れないわけにはいかないのが、編曲を担当している山下達郎の存在です。特にこの曲は、結婚後の最初のシングル曲であったわけですが、その曲のイントロで、いきなり誰が聴いても達郎だとわかるコーラスでぶちかましてくるのですから、堂々としたものです。ただそのコーラスの使い方がやっぱり巧みなのですよね。ともすると平凡になってしまいかねない曲に対し、絶妙の調味料をかけてくることで、不思議と懐かしさを誘うような味付けに見事に変身させてしまっているのです。

 

 結果的に同月にリリースしたアルバム『VARIETY』はアルバムチャート1位となる大ヒット。『もう一度』もそこに収録されていた関係で、前述のようにシングルとしては大ヒットというわけではなかったのですが、間違いなく竹内まりやの代表曲のひとつとして、今も輝き続ける、そんな曲になったのでした。その後の活躍は、いまさら言うまでもありませんね。

 

最後に、まず竹内まりやのシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。

1 純愛ラプソディ

2 もう一度 

3 家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)

4 不思議なピーチパイ 

5 駅 

6 恋の嵐 

7 SEPTEMBER

8 シングル・アゲイン 

9 カム・フラージュ

10 真夜中のナイチンゲール

=80年代発売

 

 

続いて、竹内まりやが他の歌手への提供したシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。

1 色・ホワイトブレンド 中山美穂 

2 待ちぼうけ 堀ちえみ 

3 哀しい予感 岡田有希子 

4 Invitation 河合奈保子 

5 ファースト・デイト 岡田有希子 

6 けんかをやめて 河合奈保子 

7 Miracle Love 牧瀬里穂

8 MajiKoiする5秒前 広末涼子

9 リトル・プリンセス 岡田有希子 

10 リンダ アン・ルイス 

=80年代発売