80年代青春歌謡 365アーティスト 365曲 vol.13

 

赤いポシェット  坂上香織

作詞 松本隆

作曲 財津和夫

編曲 萩田光雄

発売 198811

 

 

1980年代後半の美少女アイドルブームの中、当然のようにレールに乗って歌手デビューを果たした14歳の第2弾シングル

 

 1980年代後半、後藤久美子に始まる美少女ブームというムーブメントがありました。当時はデビュー=レコードデビューというのが当たり前の時代で、そのムーブメントにいた美少女たちは、順次レコードデビューを果たしていくわけです。その前半の中心となったのは、後藤久美子(19873月デビュー・デビュー日時点12)、小川範子(198711月デビュー・14)、藤谷美紀(19884月デビュー・14)、細川直美(19894月デビュー・14)らで、同じように坂上香織も1988年に14歳でデビューしたのです。

 

 ただし彼女たちの場合、必ずしも歌手としての成功を第一目標として掲げ、歌手デビューでヨーイ、ドン!という感じではなく、レコードデビュー以前から露出も結構あったりした上で、レコードも出してみるかといった雰囲気でのレコード発売というところはあります。したがって、わりと早めに歌手活動を諦めてしまうケースも多く見られます。坂上香織もすでに1987年にはいくつかのドラマにも出演し、『オレの妹急上昇』では布川敏和の妹役で、ほぼ主演といっていい扱いで主演しています。そんな顔を売ってからのレコードデビューということで、デビュー曲の『レースのカーディガン』はオリコン7位とまずまずの成績を残しました。

 

 その次の2枚目のシングルとして発売したのが『赤いポシェット』です。1枚目、2枚目とタイトルからしてど真ん中のアイドルソングといった趣ですが、14歳の女の子に歌わせるとしては、やはり無難な曲といった印象は拭えません。ただ2曲とも作詞が松本隆なのですよね。事務所としても、結構真剣に歌手としても売り出そうとしていたのでしょうか。作曲も来生たかおに続く財津和夫ということで、力の入れ具合がそれだけでも伝わってきます。松本隆&財津和夫といえば、初期の松田聖子と同じ組み合わせですからね。

 

 さてこの地味な曲ですが、詩の内容はいわゆる上京ソングです。上京ソングは旅立つ側からの視点と、見送る側の視点があるわけですが、これは後者です。バスに乗って都会へと向かう彼氏を見送った私、本当はそのまま一緒についていきたい気持ちでいっぱいなんだけれども、やっぱりそれはできなかった、簡単に言ってしまえばそんな内容です。さすが松本隆、手堅いです。当時14歳ということを考えると、彼氏は中学を卒業して、都会の高校へ進学するのでしょうか。1年後輩の私は当然一緒に行くわけにもいかず、彼の背中を叩いて見送るのが精いっぱい。その叩く勢いで肩ひもが切れて散らばってしまったのが、肩にかけていたタイトルになっている『赤いポシェット』だった、ということですね。

 

 ただこの詩の内容は《春行きのバス》とあるように、明らかに早春なのですよね。多分3月でしょう。ところが発売は、これから冬を迎えようという11月。まさかロングヒットを狙ったということも、当時のヒット曲のサイクルからすると考えにくいですし、この季節感のずれは、ちょっとしっくりこないところではあります。

 

 曲調はというと、これはさらに地味。デビュー曲が暗い曲調でしたので、それよりは随分明るくなってはいるのですが、それでもあまりインパクトのあるメロディではなく、無難な曲で終わってしまっています。狙っているところも、正統派のアイドルソングだったであろうことは、採用した作家からしても想像はつくのですが、やっぱり歌手業は“ついでだったのかなと思ってしまいますね。オリコン週間順位も前作と同じ7位。おそらくファンの人が続けて購入したのでしょうね。歌唱力は、まあ普通でしょうね。うまくもないけれど、音程を外すほど下手でもない。やや朴訥とした印象はありましたが。

 

 翌3枚目『プラトニックつらぬいて』は松本隆&後藤次利で9位。トップ10入りはここまで、5枚目までシングルを出して歌手活動は終了。以後は女優業にほぼ専念していくのですが、1993年にアッと驚くヌード写真集を発表し、以後は裸を厭わないセクシー系女優にシフトしていきます。しばらく活躍した後、現在は芸能界とは離れてしまっているようです。