80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.6
不良少女にもなれなくて 真璃子
作詞 阿木燿子
作曲 鈴木キサブロー
編曲 椎名和夫
発売 1986年11月
とんねるずの妹分アイドルが初めて歌う、等身大のリアルな女の子の歌
1986年にアイドル歌手としてデビュー、この年にシングル4曲を発売した真璃子の4作目のシングルレコードをとりあげます。ニックネームではなく芸名そのものを名前だけにしたというのは、戦略的なものもあるのでしょうか、どこか捉えどころのない、ふんわりした印象を残す女の子でした。とんねるずの妹分的な存在で、よく共演していた印象があります。
デビュー曲は『私星伝説』という曲ですが、アイドルのデビュー曲としては可愛くもなければ、印象に残りにくい地味な曲。タイトルやサウンドからすると、どこか異星から来たような謎めいた雰囲気を出したいような感じも受けました。作曲は鈴木キサブロー氏。オリコン最高22位で売上は8.1万枚でした。そして2作目は雰囲気をがらりと純粋で可愛らしくした『恋、みーつけた』で、作曲松本隆&作曲筒美京平という勝負曲! 3作目『夢飛行』は同じ松本・筒美のコンビでしたが、曲はデビュー曲の雰囲気に近いマイナー調。オリコンのチャート的には『恋、みーつけた』が14位まで上昇。『夢飛行』は19位。ただ、セールス的にはデビュー曲を越えられない状況でした。
そんな状況の中で発売した4作目のシングルが『不良少女になれなくて』です。作詞は阿木燿子に依頼、それまでのどこか空想的な世界感から、一気に現実感の強い世界へとシフトチェンジしてきました。自分でも自覚している平凡な女の子が、《学校追われてく あの娘の後ろ姿 映画のヒロインね》《軽蔑してるはずが こっそり憧れてた》と、退学していく同じ学校の不良少女に対し、密かに憧れていたという気持ちを歌っています。でも自分は《不良少女になる素質もない》《平凡な女の子 その他大勢》なのという、当時彼女は18歳でしたが、この曲で等身大の女の子になったのです。
作曲はデビュー曲と同じ鈴木キサブローですが、今作はメロディーも耳なじみが良く、すーっと入りやすい曲になっていて、私個人としては3作目にはがっかりしていた反動もありまして、なかなかいい曲ではないかと思ったものです。本当はこの曲あたりがセールス的に上がってくれると良かったのかもしれませんが、結局はオリコンの週間ランクで19位どまり。むしろセールス的には2.9万枚と、さらに落ちてしまい、2年目に向けてなんらかの抜本的な強化が必要な、そんな状況でデビュー初年度を終えることになったのです。
真璃子さん、アイドルとしては歌唱力があって、特に楽曲によって歌い方も器用に変えられる技術も持っていました。圧倒的な歌唱力で目立つというような類の上手さはないので、大々的に評価されるということは少なかったかもしれませんが、安心して聴くことができる歌い手ではあったのです。この曲でもそれは発揮されていて、1作目、3作目のやや抑制された歌い方や、2作目のほんわかと優しい歌い方とはまた違った、のびやかな歌唱を聴かせてくれています。さらには次の5作目のシングル『悲しみのフェスタ』ではかなり強めのボーカルも披露し、新しい一面も見せてくれたりもしています。なかなかかっこいい曲で、個人的にも結構好きでしたし、セールス的にも持ち直しを見せました。
その後はドラマに出演したり、ドラマの主題歌や挿入歌を歌ったり、或いはラジオのパーソナリティをやったりと、しばらく多方面で活躍をしていましたが、アイドルとしては、ルックス的にもキャラクター的にもやや地味な印象はぬぐえず、チャートのトップ10に届くことはありませんでした。ただ、本人はアイドルというよりはミュージシャン志向が強かったのでしょう。その後は作詞を手掛けたりもしましたし、それよりなによりシングルの作曲者リストがなんといっても凄いのです。高見沢俊彦、尾崎亜美、松任谷由実、中島みゆき!!!
さらにその後については、結婚で休んだ時期もあり、テレビなどに出ることはなくなったものの、実はマイペースで活躍を続けていらっしゃるようですね。