●山口百恵 出演映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

山口百恵 出演映画 ベスト10

 

1 風立ちぬ

かつてはこうしたアイドルを主人公にした文芸作品が頻繁に作られたもので、アイドルの登竜門的な要素があったものだが、いつの頃か作られなくなってしまいました。当作品も堀辰雄の原作の映画化ということで、物語自体は純文学的で、映画もそういった雰囲気を醸し出した正統派な作りとなっています。戦時中の普通でない社会状況の中で純粋に愛し合った2人の辿る悲劇。カップルの女性側が病気で若くして命を落とすという内容は、日本に限らず今でも時折見られる永遠の題材であり、山口百恵の影をもった雰囲気がはまっています。意表をついた演出などはなく、あくまでも正攻法でつくられていてその点で好感は持てました。

 

2 霧の旗

冤罪で獄死した兄の弁護を断った弁護士への復讐を山口百恵演じる主人公が果たすまでを描いた作品で、復讐に燃えた女性の怖さを芯から感じさせる映画になっています。たまたま弁護士の愛人が殺人現場に居合わせたことから、復讐の機会を掴んだ主人公は、警察の聴取に対してまるで別人になったようにうそを突き通し、また弁護士の懇願に一瞬許しを与えたようにみせかけ、女の武器を使ってさらに深い罠に陥れる恐ろしさ。今作では完全に脇役に回った三浦友和もたじたじといった感じでしょうか。

 

3 春琴抄

谷崎の文芸作品ですが、まさに激愛という言葉がふさわしい二人の結びつきです。大やけどをして姿を傷つけてしまった愛しき相手と同じになるために、自らの目を針で傷つける行為。上下関係がある中、けっして行動として思いあう気持ちをあからさまに見せることなく長年過ごしてきた二人。愛を確認するメタに触れ合うこともなく、しかしそれだけに二人の愛はとてつもなく深いものになっていたわけです。とにかく強烈なラストには唖然とさせられましたが、これが谷崎文学でもあるのでしょう。

 

4 エデンの海

そもそもが1950年の作品のリメイクということで、1976年舞台に変えられたとはいえ、それでもやや古い印象ですが、教師と生徒の恋愛というどの時代にも「禁断の愛」として取り沙汰されるテーマに真剣に取り組んだ映画になっています。山口百恵は今見ても、随分大人っぽい雰囲気の女子高生ですが、描かれているのは自分の気持ちをもてあましてどうしていいか分からない女子高生。一方で理性から本気で好きになってはいけないと言い聞かせているかのような若い男性教師。感情と理性の間で揺れている気持ちの描写は上手。主人公の2人が真剣な分、男子高校生3バカトリオや、同性愛の家庭教師など、ふざけたキャラクターも入れ込んでバランスをとろうとしていますが、ちょっとやり過ぎで浮いているシーンもあるにはありますね。それでも、島ののんびりした風景の中、10代で初めて経験する出会いと別れを甘酸っぱく描いたアイドル映画としては、少しくすぐったい思いをしながらも、瑞々しい気持ちにさせてくれる作品ではありました。

 

5 天使を誘惑

生活感があふれ、今見ると1970年代後半の時代の匂いというものが伝わってきて興味深いです。特に感じたのはまだまだ男尊女卑の考え方が強く、女性は男性に黙って受け入れ優しく包み込むものだという男女の関係が全編を通じて描かれていました。男性側はやはり自分勝手に描かれ、正直なところあまり共感を持つことのできるキャラクターはいません。結婚はしたくない、浮気は平気でする、かといって女の勝手な行動も許さない、一方女性、特に山口百恵演じる主人公はタイトルにあるようにまさに「天使」として描かれています。なんだかんだあっても、最後に戻る場所はその女性のところ。まるで菩薩様のような心で飛び回っている男を受け入れる母性が強調されています。当時観るとどんな感覚に映るのか興味のあるところですが、全体として男性の視点で描かれている作品であるようには感じました。

 

6 絶唱

こちらも一連の文芸路線の中で作られた哀しいロマンス映画です。愛し合う若い二人に訪れる悲劇に涙した観客も多かったのではないでしょうか。こんな儚い愛の悲劇が、山口百恵には不思議に似合うのですよね。

 

7 伊豆の踊子

デビュー間もないころの初々しい山口百恵が新鮮です。三浦友和とのコンビもこの作品から。定番の文芸ものもここから。

 

8 潮騒

こちらも定番の文芸映画。キャストを変えて何度か作られています。少女から大人に変わっていくその瞬間を繊細に捉えた作品で、当時の山口百恵と三浦友和の新鮮さがぴったり。

 

9 炎の舞

夫の出征と戦死により精神を病んでしまう若い妻の心理的に追い詰められていく様子を描く重い作品ですが、見え方としてはどうしても山口百恵演じる主人公の精神的な脆さだけが浮き彫りになってしまっているようでした。リメイクの元の作品「執炎」も観ていますが、「執炎」に比べ主人公が狂気に陥っていく過程の「狂気」度が当作ではやや抑えられた演出になっていて、その分で説得力の弱さを感じました。当時の山口と三浦友和が演じているということの限界だったのでしょうか。単純なラブストーリーから脱して、一歩進んだ作品を黄金コンビでつくってみようという意図があったのか分からないですが、当時の2人からしますと、ちょっと難しい作品であったかもしれません。

 

10 ふりむけば愛

世間知らずで軽率な女性が周りを振り回した末に好きな人のところに帰っていくというストーリーなのですが、いくら山口百恵だからといって、こんな馬鹿で自分勝手な女には共感は出来ません。作品全体がとにかく軽薄なのです。それでも、予想出来る展開のわりには面白くないわけではないので、評価的には☆3つですが、いくら「本物の愛」を追いかけるんだ!という感じで重厚に見せようとしても、主要登場人物たちの人格が皆疑問符がつき、感情移入は到底できませんでした。