●成島出 監督映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

成島出 監督映画ベスト10

 

脚本家としても多くの作品に関わっていますが

今回は監督作に絞ってのベスト10.

 

1 八日目の蝉

親子の繋がりとはいったい何なのだろうか、そんなことを改めて考えさせられる作品でした。血の繋がりがあっても母親らしいことを何もしてあげられない女、自分の産んだ子供でなくてもそれ以上に深い愛情を全力で注いだ女、そしてそんな二人の母親の想いを売れながらいざ自分が母親として何をしてあげられるのか分からない女。しかしその背景にある不幸な出来事がより構図を複雑化しているわけで、いったい誰が加害者で誰が被害者なのか、それぞれの胸の内を思うとせつなくてとてもやりきれなくなりました。映画として、観ている者の心を揺さぶる力の強さを感じました。良い出来だったと思います。

八日目の蝉 

 

2 ラブファイト

なかなか素敵な青春映画になっています。なんといっても北乃きい演じる主人公のキリッとした表情が素晴らしい。野球や飛び込みに続き、ボクシングに取り組む林遣都くんの健闘も光るし、大沢たかおがきちんとしめているので、ドラマとしてもしまってくる。いい映画でした。

 

 

3 ソロモンの偽証 前篇・事件

見応えのある前篇に仕上がっていて、早くも後篇が観たくてワクワクさせられています。登場人物がかなり多いのですが、それらが無理なく整理されていて、それぞれの性格や相関関係がすんなりと入ってきます。生徒たちは皆オーディションで選んだということで、それぞれが役柄にはまっていますし、特に主演の藤野涼子も演技経験がほとんどないとは思えないしっかりした演技で抜群の存在感。普段はチョイ役の多い木下ほうかや安藤玉恵といったいじわる(?)教師陣も見せ場が多く健闘。ほぼ素人の中学生たちを、豪華な俳優陣が周りから支えるといった構図がみごとにはまっていました。まだ半分なので、点数的に大盤振る舞いはできませんが、きっちりとした組立てで、原作力に加えて映画としての編集力・演出力にも優れ、後半に観客を引っ張るという意味では成功の内容といえるのではないでしょうか。

ソロモンの偽証 

 

4 聯合艦隊司令官 山本五十六

名前こそ聞いたことはある者の、実際にどういう人物なのか知らなかった私のような観客にとっては、親切丁寧で分かりやすい戦争映画になっていたと思います。山本五十六の見識、人となりにスポットを当てながらも、当時戦争に突入していった背景や、その作戦の意味、戦争に対する当時の世論など、戦争そのものについても解説されていて、一見無駄に思えるシーンも、実はその解説的な意味合いが込められたりしている好感が持てる作品です。幾分生真面目すぎるきらいはありますが、多くの人に太平洋戦争のさわりだけでも知ってもらうという部分で意義深いと思いますし、十分に見応えあるものでした。

聯合艦隊司令官山本五十六 

 

5 ソロモンの偽証 後篇・裁判

前半の出来が良かっただけに期待も大きかったが、それなりによくまとめ上げたものとなっていました。意外な真相が明かされるというよりも、裁判を開廷に持って行こうとした神原の真意が最後になって明かされるという展開。さまざまにものを背負いながらもどこでそれと折り合いをつけて生きていくか、生と死、因果応報について考えさせられる一方で、人が人を裁くという意味についても考えさせられるずしりと重いボリューム感ある作品でした。このあたりは宮部みゆきせしい原作といえるかもしれません。

 

 

6 油断大敵

役所広司演じる刑事と柄本明演じる泥棒の不思議な腐れ縁は、芸達者の二人の掛け合いが見事で、飽きさせません。一方で妻を亡くした刑事と一人娘との関係がもうひとつの軸となっていて、幼い時に娘のためにあきらめた新しい恋のエピソードを見た後に、成長した娘が家を出て海外へ旅立つところを見ると、父親の気持ちが痛いほどに伝わってきて、せつない気持ちにもなりました。

 

 

7 ミッドナイトイーグル

いかにも大ごとだという差し迫った感じがどうも伝わらなかったのは、演出が大人しすぎたように思います。どうせリアリティの薄い話なのだから、もっと派手に見せた方がスケール感も出せたように思いました。それから、描き方が守る側の視点だけで描かれているのも、映画を小さくしてしまっているように思います。かなり設定的にもストーリー的にも無理があるのが分かります。それをなんとか観られる程度にまでに持ってきたというのは、俳優陣がわりと頑張っていたということが大きいでしょう。雪山での撮影はおそらく過酷だったことでしょうし。ひとつひとつ突っ込んでいくとキリがないのですが、最後は力技で形にしたというところでしょうか。そういった意味でも、一言で言ってしまえば、この映画は小型版「アルマゲドン」なのでありました。

 

 

8 グッド・バイ 嘘からはじまる人生喜劇

愛人たちがとにかく豪華なキャストで、それだけで華やかさがあふれてきます。そんな軽薄なモテ男に痛烈な仕打ちが帰ってくるわけですが、最後は本当の愛に気づいて終わりということで、めでたしめでたしの雰囲気。華やかですし、軽やかでもあるのですが、もう少し毒が効いていた方が、作品としては面白かったかもしれません。最後はやや緩く、よく言えば優しくしめくくったので、物足りなさも残ったのも事実。昭和感ももう少しあっても良かったかも。

 

 

9 ちょっと今から仕事やめてくる

予告編を観て、いったいヤマモトの正体はなんなんだと思うのが普通の人。そこで考える正体は、幽霊か、双子かの二者択一しかないわけで、その意味ではこのオチはありきたりでがっかりした面はありました。とにかくこのブラック企業の描写がものすごく、朝礼時に言わせる社訓のようなものの内容が、今どきこんな会社があるのかと思わせるような前近代的な内容。当然残業はつかない。ただ休みはとれているみたい。有給はとってはいけないみたいですが。そして何よりも部長のパワハラぶりといったら。これ、録音しておいて訴えたら一発退場でしょうというほど。セクハラもしてますし。それでも当事者以外は知らんぷりなのか、何も言えないのか…。緊張感たっぷりの職場、でもやめられないのがサラリーマンの性なのでしょう。最後はちょっとしんみりでした。

 

 

10 ダディ、フライ、ダディ

完全にありえない設定というのが最後までしっくり来なかったのですが、全体の流れとしては悪くないでしょう。ただ岡田准一と堤真一の関係での言葉遣いが気になりました。最後の対決場面はまさにコメディとしての集大成といえるものでしたが、一方でバスで応援するサラリーマンたちなどの過剰演出はどうも好きになれなかったところもありました。