私が大好きな監督です。
しゃれた会話の中に描かれる人間がどこか可愛らしくて、
なんとなく微笑ましい気分にさせてくれる作品が多いです。
①夏物語
最初は不器用で、なかなか思いが届かない相手に振り回されている様子が滑稽だったのが、自ら努力するでもないのに3人の女性の間にしてしまった約束に頭を抱えてしまうもてぶりがまた滑稽で、その混乱ぶりが絶妙。日記風に綴っていて、海岸通の夏らしい風景がまた休暇中の開放感というものを感じさせます。友達だといいながらもどこかで気楽に話せるマルゴに惹かれ、マルゴもまたほかの女性をすすめながらどこかで嫉妬心が見え隠れしていて、若い男女の微妙な心理模様が、テンポのいい知的な会話の数々の中で表されていました。
②友だちの恋人
2組のカップルが最後には相手が入れ替わってハッピーエンド。気分のいいラブ・コメになっています。ロメールらしい可愛らしい作品。
③モード家の一夜
ロメールらしいウィットに富んだ会話で見せてくれます。モノクロの画像だが今見ても古さを感じないしゃれた雰囲気で、二人の女性の間で揺れる正直な男の気持ちをどこかユーモラスに映し出していて楽しい。対照的な二人の女性だが、どちらも離婚経験者。しかし宗教や主義のこともあり、誘惑にも自制心を失わない主人公に、軽さと真面目さが同居している不思議な親近感を持ってしまいました。
④グレースと公爵
晩年の作品ですが、ロメールとしてはやや暗い作品。混乱の18世紀終盤のフランスを描いた時代劇です。
⑤緑の光線
どこか偏屈だけれども淋しがりやで恋愛には純粋な気持ちを失っていない主人公が、そのシーンによって不細工に見えたり、可愛く見えたり、その七変化ぶりは監督の力量によるものか、俳優の演技力によるものか。日記風に綴って行く手法は「夏物語」と同様、しかも避暑地が舞台というところまで一緒。
⑥冬物語
ほかの男と付き合いながらも、自分のミスからあえなくなったかつての恋人が忘れられない主人公、こうなったらいいなと思う結末に期待通り持って行ってくれます。ときどき宗教感などに関する会話が長く、じれったいところもないではないですが、煮え切らないフェリシ-の態度がかえってリアルで可愛らしく、なんとなく応援したくなってきてしまいました。
⑦至上の愛 アストレとセラドン
5世紀を舞台にした牧歌的で可愛らしい恋愛映画です。いつの時代でも恋する男女は同じですね。
⑧恋の秋
最後はなんとなく幸せな気分になるようなお話です。なかなか複雑で普通とはちょっと違う人間関係が交錯する中で、自分と気が会う二人が出会い、これからいい方向に向かっていくのだろうなというハッピーエンド。自然の秋の風景も爽やかな印象を色づけし、好感の持てる作品に仕上がってます。
⑨満月の夜
ロメールらしい会話を中心にしたちょっとキュートな恋愛劇。自分勝手に男を振りまわすようにしかみえない主人公、パスカル・オジェにはどうも魅力が感じられないので、最後の最後までは全く感情移入できなかったですが、突然のクライマックスの急展開に、ちょっと同情心も生まれたり…。
⑩愛の昼下がり
妻子がいて幸せな家庭がありながら、不意に現れた気まぐれな昔なじみの女性にフラフラと気持ちが動きいてしまう主人公の男。世の中の男どもを代表しているようで、だらしなさに顔をしかめながらも、憎めないキャラクターとして観てしまいました。