宮内純子さんをお迎えして、「戦後の暮らし」についてお話しいただきました。
昨年の「戦中の暮らし編」に続く第二弾です。
宮内さんは現在91歳。終戦時は小学5年生でした。
朝鮮からの引き揚げ、そして焼け跡から暮らしを立て直していく――
私たち戦後世代には想像もできない体験を、ご自身の言葉で語ってくださいました。
印象的だったのは、非常時でも知恵と愛情をもって子どもたちを守ったお母さまの姿です。
お金を揚げ菓子や毛糸に仕込み、非常食の炒り豆をお手玉に入れて子どもに持たせる――
そんな工夫の数々に、母の賢さと愛を感じました。
また、引き揚げ後、何もないところから暮らしを立て直す中で、助けてくれる人もいれば、急に冷たい態度に変わる人もあったそうです。
生活の苦しい中でもお兄さまを進学させたのを知ると、手のひらを返すように冷たくされることもあったとか。
譲ってもらったものと思っていた冬の布団を、急に取りに来られた時には、子ども心にも心細く悲しい思いをしたそうです。
それでも、お母さまは「こちらからお返しに伺うべきところを、大変失礼いたしました」と深々と頭を下げられたとか。
人の本性は困難な時にあらわれるものですね。
宮内さん自身も、家も仕事もすべてを失った中で思春期を迎え、さまざまな感情を胸に抱えながら生きてこられました。
ある日、抑えてきたものがあふれ、涙が止まらなくなったこともあったそうです。
でも家族がそっとしておいてくれたおかげで、翌朝には元気を取り戻す――
家族に見守られ、情緒豊かに逞しく成長する姿が印象的でした。
わずか2~3年ほどの出来事を語られた講演でしたが、まるで大河ドラマを全話観たような濃密な時間でした。
戦後の暮らしの厳しさだけでなく、人の強さや弱さ、そして「自分はどうありたいか」を問いかけられるような内容でした。
何よりも驚いたのは、91歳の宮内さんが着物姿で2時間立ちっぱなしで語り続けられたこと
そして、淀みない語り口だったことです。
長年教師をされていた宮内さんのお話はとてもわかりやすく、まるで昨日の出来事を話されているかのようで、こちらも情景が目に浮かびました。
そして、押しつけがましさのない自然な語りは、聴く人の心を深く打ちました。
参加者の皆さんからも、たくさんの感想が寄せられました。
「どうしたらあんなに若々しく、しっかりと歳を重ねていけるのかと思いました」
「お着物姿で背筋を伸ばし、2時間も立ちっぱなしでお話しされる姿に感動しました」
「どのエピソードにも、単なる思い出話ではない“真に伝えたいこと”が込められていて心打たれました」
「宮内さんの語りは、体験を語るだけでなく、そこに生きる力や知恵、家族への愛が自然ににじみ出ていました。」
聴く人それぞれの心に、深い余韻を残したようです。
「このお話を、もっと若い世代にも聞いてほしい」
そんな声も多く聞かれました。
戦中戦後の極限の時代を生き抜いた宮内さんの言葉は、今を生きる私たちにとっても
「人としてどう生きたいか」を静かに問いかけてくれるものでした。
これからも、多くの方に届けたい講演でした。

