一昨年6月にスタートした映画「アジアンパラダイス」の撮影も、いよいよ今回のバリ島が最後ということで、撮影スタッフ5名、サーファー12名の総勢17名という、かってない最大のロケとなった。撮影の総指揮には本誌編集長の石井秀明があたり、チーフカメラマンにはディック・ホール、アシスタントカメラマンにグレッグ・ハグリン、水中撮影にダン・マーケル、スチール担当には近藤公朗が起用された。これに対してサーファーはこの映画のロケすべてに参加した添田博道をはじめ、ベテランの坂本昇、市川武昌、蛸操、若手ナンバーワンの久我孝男、糟谷修自、グーフィーフットに金子一則、奥田新志、加えて関西からは植田昌宏、山根祥治、木梨邦則、金岡直樹の計12名。一行はクタビーチのアリーナ・バンガローに滞在、波のある日はメインスポットのウルワツまで往復3時間の道のりを毎日通い、それ以外の日はタナロット・キンタマーニ火山などバリの名所見学も撮影に取り入れられたが、メドウィー・チャングーなどのサーフスポットでは残念ながら波がなかった。しかしなんと言っても今回のロケで最大の収穫は、2日間にわたる6~8フィーとのパダンパダンのセッションであろう。長いフラットの後、フルムーンとともの押寄せたグランドスゥエルは、それまでのスモールウェイブで燃焼しきれなかったエネルギーを一挙に爆発させ、これまでロータイドはタブーとされていたパダンパダンのセッションは、日本のサーフィン史上に輝かしい一ページを飾る名セッションとして長く語りつがれるであろう。もちろんこのセッションの一部始終は3台のカメラに収録され、この映画のハイライトになることはほぼ間違いないであろう。撮影したざっと1万フィートにも及ぶフィルムは、現在オーストラリアで現像され、編集用のワークプリントが出来しだいに日本に送られ編集にはいることになる。一部映画「ストーム・ライダース」に使用されたニアスのジャングル・パラダイスも添田博道・蛸操・市川武昌らのライディングは未使用のまま残っており、これに抱井保徳・増田昌章らのジャワのジェリー・ロペスとのセッションは、またパダンにはないスケールの大きさがあって、この3つのロケーションが織りなす一大スペクタクルには、日本初のサーフィング・ドキュメンタリーとして、早くも完成が待ち遠しいところである。もっとも完成までには、ナレーションやオリジナル・サウンド・トラックの制作など、まだ難問もひかえており、とりあえずバリ島ロケの成功をここでは伝えておこう。 SC SEPTEMBER 1983
July 09, 2009