病院で指圧デモンストレーション | つなさん夫婦ニカラグア・セントルシア

つなさん夫婦ニカラグア・セントルシア

全盲の鍼灸マッサージ師の夫とそれを支える妻のブログ。

盲学校を退職後、シニアボランティアとしてニカラグアとセントルシアの医療活動を支援しています。
現地での異文化体験を、夫婦で発信していきます!

71. 病院で指圧デモンストレーション

 

指圧講座2期生のコーデリアさんが指圧デモンストレーション依頼の

話を持ってきてくれました。

彼女が言うには、ラクレリーヘルスセンターと言う保健所と病院を

兼ねた施設で指圧を紹介してほしいと頼まれたこと。

糖尿病、関節炎、腰痛症などの痛みで悩んでいる患者さんが多いこと。

場所も視覚障害者協会から徒歩30分ぐらいで近いし、協会前からバスも

利用できるとのことでした。

 

それならば好都合です。研修生たちとの次なる指圧デモンストレーションは

ラクレリーヘルスセンターにしようと計画しました。

 

カウンターパートのデボラさんにその旨を話し、指圧デモンストレーションを

実現できるように取り計らってほしいと頼んだのは今年1月の初め。

忙しい彼女はすぐにはアクションを起こしてくれません。

なかなか計画通りには事が進まないのがセントルシアの社会です。

諦めずに何度もお願いし、ようやく3月半ばに実行のめどがたちました。

 

タクシーや協会の職員1人を移動介助として同行することも手配

してくれたデボラさんに感謝です。

 

ラクレリーヘルスセンターへ出発する前、研修生たちに再度

リスクマネージメントを呼びかけました。

 

「今日の患者さんは病人のお年寄りが多いと思われるので十分気を

張って指圧を行い、骨折などの事故が起きないように施術に集中し、

手の消毒をこまめにして自分自身の衛生管理にも気を付けるように」

そう伝えました。

 

遅刻してきたエディーさんは

「病人ばかりの場所で指圧デモンストレーションをするなんて理解できないよ」

などとブツブツ文句を言いながら、エタさんとガビーさんの後ろについて歩き出します。

 

移動介助としてロージーさんが一緒に行くことになっていましたが、急な仕事が入り、

代わりにコレッタさんが加わり、全員で6名が待っていたタクシーに乗り込みました。

 

ラクレリーヘルスセンター

 

予定時間より15分程早くラクレリーヘルスセンターに到着。

施設の「内部の待合室」も屋根だけの「外の待合室」も患者さんでいっぱいです。

 

医師1人、看護師4人、受付係1人の対応なので、患者さんを診るのは

1日35人までと限定されているそうです。

予約制ではなく、早く来た人から番号札をもらって順番に診てもらい、36番目

以降の人は残念ながらその日の診察を諦めてもらうしかありません。

 

セントルシアは国立の病院の医療費は無料です。

カストリーズは国立の病院が二つで、他はプライベート病院です。

プライベート病院のほうは初診料が200ドル(約1万円)、再診料が150ドル

かかり、医療費はかなり高額なので、国立病院がいつも混んでいる状態です。

 

ラクレリーヘルスセンターの受付係に今日来た目的を話すと、

職員たちは怪訝そうな顔をしました。

誰一人指圧デモンストレーションのことなど知らなかったようです。

(マンマ・ミーア)と思わず言いそうになり一瞬、頭のなかは空白。

 

「突然で申し訳ございませんが、指圧デモンストレーションを今から

ここでやらせてもらえないでしょうか」と頼み込みました。

 

周りを見回すと、多くの患者さんがごった返し、待合室と診察室しかない

小さなこの病院に指圧デモンストレーションを行うスペースのゆとりは

無いように見えました。

 

困っていると、ダイアナさんという看護婦長が機転を利かせ、診察室前の

廊下に椅子を4つ並べて、場所を作ってくれました。

そして、患者さんでマッサージを受けたい人を4名連れて来てくれました。

 

身動きぎりぎりの窮屈な場所での指圧デモンストレーションが始まりました。

しばらくすると窓もなく、扇風機もない、蒸し暑い廊下は息苦しく、研修生達も

次第にイライラしているのが伝わってきます。

場所を変えなくてはと「外の待合室」の込み具合を見に行ってみました。

タイミングよく患者さんたちは「施設内の待合室」へと移動しているので

指圧を行うスペースが十分空いていました。

 

ダイアナさんに場所を移してもよいかと尋ねると快く許可してくれました。

診察の順番待ちをしている人たちに指圧を受けてみませんかと呼びかけると、

次々にやって来てくれます。

 

東屋の様な外の待合室は背もたれの無いベンチが幾つか並んでいて、前列の

ベンチと椅子を使って指圧をすることにしました。

木陰と屋根の下で涼しく、心地よい風も吹いていて、指圧をするにも良い

環境になって、研修生たちの表情も和らぎ、施術に専念しています。

 

     

  外の待合室で指圧をする研修生たち(左からエディーさん、エタさん、ガビーさん)

 

 

男女様々な年齢の人が指圧を受けてくれました。

 

偶然にも以前出会った全盲のマヌエルさんと奥さんのアリソンさんが

そこに来ていて、指圧体験に参加してくれました。

 

二人の幼い子どもを連れたお母さんも指圧を気持ちよさそうに受けてくれました。

母親のそばにいた目のクリッとした小さな女の子が「ワタシも」と言って、

次の患者さんになりました。

 

        

 

背中をやさしくなでる軽擦をしてあげるとニコッと笑い、

「お兄ちゃんもしてもらったら?」

と7歳ぐらいの男の子を指圧に誘いました。

その子も指圧を喜んで受けてくれました。

 

研修生たちは指圧の効果を説明したり、パンフレットを手渡したりと

指圧クリニックの宣伝も積極的です。

 

指圧デモンストレーションの終わり近くには先ほどのダイアナさんと

もう一人の看護師さんもやって来て、指圧を受けてくれました。

 

 

1時間の指圧デモンストレーションで21名の指圧体験者を得て、無事終了です。

何らかの伝達ミスで今日の指圧デモンストレーション開催を全く知らなかった

ラクレリーヘルスセンター側でしたが、飛び込みのデモにもかかわらず親切に

対応してもらえました。

 

 

狭く窮屈な環境に指圧デモを拒否し、帰ろうと言い出した研修生もいましたが、

外の待合室での指圧デモに最後まで協力してくれました。

 

いろいろとハプニングがあったけど、多くの患者さんやダイアナさんから

感謝の言葉をもらい、初めての病院での指圧デモンストレーションが実施

でき、良かったと思いました。