本のあらすじ

 

看護師3年目の榛葉陽菜は先輩から言われた言葉を考え、看護師という職業に行き詰まりを感じていた。

 

「あなたがしているのは、看護じゃなくて業務でしょう」

 

自分は必死に考え、その時の最善を行なったのに、自分は看護をしていないのだろうか。

 

【看護師 求人 有名 すごい】

 

看護師になりたくてなったのに、先輩の一言にこんなにも困惑をするのだろうか。

榛葉は気晴らしに求人検索をしてみた。

 

それでヒットした病院

 

ディズニー記念病院

 

私もそこで働いたら、看護とは何かを学べるかもしれない。

勢いで決めた転職。

聞きなれない「イマジネーション・ケア」という看護方針

勤務中は病院のスタッフもオンステージだから笑顔を絶やさない。

 

イマジネーション・ケアとは何かを探し、奮闘する看護師4年目になったばかりの主人公の1年間を通した成長ヒストリー。

 

 

本の紹介

 

 

 

 

「イマジネーション・ケア もしもディズニー記念病院でケアを学んだら」

著:小出 智一

MC メディカ出版

 

分類:基礎看護/看護学一般

 

2022年9月出版

 

 

作者紹介

 

東京ベイ・浦安市川医療センター(出版当時)所属 看護師

2012年 入職

救急医療や趣味レーションん教育に従事する。

舞浜周辺は散歩や海を眺めるなどリフレッシュしに足を運ぶことが多い。

推しアトラクションはマークトウェイン号

推しキャラクターはラプンツェル

 

(本誌より抜粋)

 

 

つな的レビュー

 

正直な話。

看護師ってお給料高くありません。

その中で「ホスピタリティ」まで高水準を目指したら破産しちゃう・・・

っていうよりは、モチベーションが保てない。

看護師に夢を見ている人ばかりではなく、お金のために看護師をしている人は確実にいます。

私もそう。

もちろん看護師15年以上していれば、その中にやりがいを見つけたり

自分の看護感というものが芽生えます。

けれどお金も大事。

むしろ、お金が大事。

 

学びに行くのも、参考書を買うのもタダじゃない。

けれどそれらは経費として落ちない。

「自己学習」ってされてしまうから。

そんな中でホスピタリティを優先しきることは正直難しい。

それでも自分が業務時間の中で、限られた資源の中で最大限に提供できるように心がけても・・・

中には受取拒否をする人もいるんだ。

「自分はこんなことしてほしいって言ってない、余計なことをするな」って。

それが、朝起きた時に顔を拭けるようにと持っていった、たった1枚のタオルでも。

「ありがとう」と受け取れない人がいる。

 

こちらが提供するものに対して、受け手がいないとそれは一方通行。

例に出したタオルだって

「ありがとう、でも自分で持っているから大丈夫だよ」と受け取るのか

「こんなことは頼んでいない。よけいなことをするな」と拒否をするのか。

差し出す方だって、突っ返されたらいい気持ちはしない。

ポスピタリティって、双方に受け取り合うから成り立つんじゃないかなって思う。

 

そして物語に出てくるような素直な患者さんばかりではない。

患者「様」になってしまって、自分のわがままを通したい人がいる。

看護師を召使と勘違いしている人がいる。

少しでも自分の想い通りにいかないと「患者ファーストじゃない」と苦情を入れる。

こうなってしまうと、医師も看護師もお手上げで腫れ物扱い。

 

そういう現実が見えてしまう。

 

きっとこの本は、看護学生や新人さんに向けて書かれたのかもしれない。

看護師16年目の私が読む本ではなかったかもしれない。

けれど、私の学習テーマに「学生指導」「新人教育」がある。

今は部署の都合でそのどちらとも関わることができないが、日々自己学習は続けていたい。

だから、手に取ってしまった。

「看護教育」のブースにあったこの本を。

参考書でもなんでもない、看護師を主人公に、病院を舞台とした小説を。

 

この小説はフィクションだ。

そして夢物語だ。

けれど、憧れでもある。

 

なぜ夢物語か?

 

こんなにスムーズに医師とは連携できない。

双方の意図が違うところにあると、会話は成り立たないし

患者との約束の時間に、医師がぴったり来れることだって少ない。

それは生身の人間を扱っているから、いつ何時、どこで急変しているのかがわからない。

予定されていた医師主体で行う検査の終了時刻を超えても、検査が終わらないこともある。

 

こんなに素直な患者はいない。

物分かり良く治療に参加をしてくれたり

こちらの話に丁寧に返してくれたり

そんな人ばかりではない

 

こんなにゆったりケアする時間はない

対人間だから自分のたてたスケジュール通りにことが運ぶことは少ない

躊躇なくいろいろなことを聞けることだって、相手による

そしてこんなに「看護師」という職業に真摯に取り組んでいる人ばかりではない

 

患者のQOLのために、けれど状況としてわがままと思えるようなことに対してドクヘリ飛ばすなんて病院の経営上ありえない。

 

だから、夢物語だとおもった。

 

けれど憧れた。

これくらい密に一人の人生に関わることができたら、気持ちいいだろう。

 

 

もちろん、関わっていないわけではない。

けれど。。。

 

だから、この小説は本当にフィクションだ。

看護師をしているからこそ見えてしまう、嘘がたくさん盛り込まれている。

こんな風に看護できたら、医師と連携が取れたら気持ちいいだろうな。

って指を咥えるしかできないくらいに。

 

 

だから、もし看護学生でこの本を読む人がいるならばここに夢を見過ぎないでほしい。

けれど是非読んでほしい。

ここには看護とは何かの大切なことがたくさん書かれていた。

特に覚えることがたくさんありすぎる新人、後輩の指導係になる3、4年目あたりは自分のことで精一杯になってしまい忘れがちなことが、たくさん書かれていた。

 

看護師になりきってしまって、看護師じゃない時の自分の不安や学生だった時の自分が思い出せない人には、それを思い出すきっかけになるかもしれない。

 

そんな1冊だった。