後輩Aの証言


『この人、点滴入れるって言ったら色々とかこの事を掘り出してきて!私が当て馬のようになって沢山文句言われて泣いたんですよ。

なんなら、その人が目が見えないことに対して何も言ってないのに、その事もバカにしてるとか言ってきたり。

あーほんと、きもい。』


夜勤行ったそうそうに後輩がこのようなことを言ってきました。


あれ?おかしいな。

今日来た時はすごいいい人だったのに。

そんな人だったかしら?



感じ方は人それぞれ


人と関わる上で、誰かの受けた印象を伝えられると、誤った印象が植え付けられてしまいます。

だから受け持つ前に変な記録や申し送りは極力避けたいところ。

けれど申し送りを聞かない訳にはかない。


私も人間だから、その他者のイメージに左右されてしまうこともあります。



患者さん

私が受け持つ時間になりました。

特に何かを言われることはないけれど。

個室なので誰かと話をしたいのは確か。

増して、盲目なその方は個室環境って物音が限られてしまうから不安しかない。

見えないことって情報のほとんどが消えてしまう。

視覚からの情報を言葉で伝えるって、伝える側の解釈が入るから間違った印象を与えかねない。


目から情報がないから、肌や匂い、そして耳は敏感。

表情が分からないと、声だけが判断材料。

どんな声の温度なのか。

どこから声が聞こえるのか。

不安で仕方ないよね。


私の場合


まぁ、とにかくその後輩はいつも一言が多い。

そして『気がつく』ことが出来ない。



じゃあ、わたしは?

わたしは元々意識障害がある方を多くみてきた。

だからひたすら独り言のように話しかけてる癖がついてる。

『これから○○をします。』

『どこを、触りますよ』

『右に曲がりますよ』そんな些細なことでもひとつずつ伝える。

声はなるべく低く落ち着いた印象になるようにし、聞き取りやすい速度で。

一つ一つの動作をゆっくりとさせて。


声掛けの大切さ


中距離を車椅子搬送が必要になった。

右に曲がるよ、左に曲がるよ

ここは少し揺れるよ

エレベーター後ろ向きに乗るよ

1度止まるよ。

ウザイくらいに声を掛ける。


見えないと、体感でしか実際の速度が分からない。

これでもかってくらいにゆっくりと進める。



『丁寧に教えてくれるから安心できるよ。ありがとう』私がかけられた言葉。


けれどこれは、当たり前に身についてる私のスキル。



後輩A


もう5年目。

新人では無い。

なんなら指導者や、リーダーをやる。

早い人なら管理試験受けて、管理職にだってなれる。

でも、うちの部署はそうじゃない。

5年目なのに後輩がいない。

育つ機会が無い。

不貞腐れた態度で、周りも育てる気持ちが消えてしまった。

だから誰からも指摘を貰えない井の中の蛙状態。


普段のわたしは見捨てない。

けれど後輩Aに関しては手が上がる。

お手上げだ。

悲しいね。

自分の態度で教育の機会が無くなってる。



受け取って欲しいメッセージ


患者さんに色々言われたのは、必要であったから。

それを不貞腐れ、患者さんの責任にする。

とてもおかしなはなしだ。

誰も言ってくれなかったことを患者さんが変わりに言ってくれていたんだと理解した。

それを『気持ち悪い。ムカつく』

としか受け取ることが出来なかった後輩。


後輩Aよ。

大人になれ。

育つためのチャンス、無駄にするなよ。