支倉 凍砂
「狼と香辛料 (電撃文庫) 」
遅ればせですが、機会があって読むことが出来ました。結果、楽しい~!!
行商人ロレンスは、とある事情から豊作の神である賢狼ホロと道行きを共にすることになる。数百年の時を生きているという、この賢狼。耳付き、先のみが白いふさふさの尻尾付きではあるものの、人としての姿は可憐な乙女そのものである。けれど自ら「賢狼」を名乗るだけのことはあり、ホロは独り立ちして七年にもなり、行商人としては一人前であるロレンスを、すっかり手玉に取ってしまう。
馬を除けば話し相手など居るわけもない行商の旅。互いに憎からず思いながらのそんなやり取りが心楽しくないはずもない。互いの憎まれ口も、時にホロにドキドキしてしまうロレンスの心情もまた楽し。「助けて……くりゃれ?」、なーんて小首を傾げられたら、女性に慣れていないロレンスでなくとも、ちょっとぐらりと来てしまうのかも。
ホロが操るのは、「わっち」、「ありんす」など吉原を連想させる言葉なんだけど、これがまたホロの雰囲気にぴったりで、巧いなぁ。また、それが利益になるならば、靴の裏を舐めることすら厭わない、という商人としてのロレンスの考え方も面白い。ただし、商人としては優秀でも、ホロに言わせれば、ロレンスは「良き雄」としてはいま一つのようだけれど…(でも、食事や服、櫛などなど、ロレンスはなかなかやさしいおのこだと思うけど)。
一巻の旅は、麦畑実るパスロエ村から、港町パッツィオまで。ホロの生れ故郷である北の大地へはまだ遠い。くっつきそうでくっつかない、二人の関係もそうだけれど、旅が終わってしまうのが淋しくもある。って、現時点で7巻まで出てるみたいだから、まだまだ心配には及ばないようだけれど、ね。
まずは顔見世。身に降りかかった危機を一つ乗り越えて、二人の旅は続くのです。
・「狼と香辛料
Ⅱ」/豊作の神と行商人の旅2
・「狼と香辛料
Ⅲ」/豊作の神と行商人の旅3