和田 誠
「物語の旅
」
フレーベル館
冒頭から引きますと、
これから書こうとするのは、物語に関するささやかな四方山ばなしである。自分にとって印象の深かった書物についてごく個人的なことを記すだけだから、読書案内として役に立つものにはならないだろう。
一つ一つ挿絵を入れるが、仕事で描いたことのないものばかり。ぼくが面白がった物語は、挿絵を描きたくなった物語だと言うこともできそうである。
というわけで、これがこの本の性格です。
基本、読んだ時の記憶を大事にした文章で、後から確認したら~だった、などの注釈が良く入ってますが、そっか、こういう風でもいいんだ、と逆に安心しちゃったり。間違えちゃってる記憶の方が、時に印象深いのは何でなのだろ。特に幼少時に読んだものなどは、一部分のみを強烈に覚えてたりするから、物語のバランスが妙になってたりもするのですよね。
さて、和田誠さんが選んだのは「かちかち山」から「最後の仇討」まで、和洋を問わない全54編。これがね、結構、自分が読んだり、かすったりしていた本と被っていたので、なかなか楽しく読めました。「ねじの回転」なんかは、恩田陸さんのは読んだものの、本家(?)のヘンリイ・ジェイムズのは未読なもので、まさに”かすった”印象の強い本です。
この本を読んで、きちんと読んでみたくなったのは、実業家でもあるというヘンリイ・スレッサー(別名O・H・レスリー)による「怪盗ルビイ・マーチンスン」。キョンキョン主演の映画、「怪盗ルビイ」って、和田誠さんが監督してたんですねえ。そして、それはこの「怪盗ルビイ・マーチンスン」を原作としていたわけです(さらに同時期にこの作品を芝居にしていたのが、当時、一部ですでに注目され始めていた三谷幸喜さんだそう)。犯罪者に憧れる従弟のルビイに引き摺られる相棒の「ぼく」。設定が魅力的だ~。
村上 啓夫
「怪盗ルビイ・マーチンスン (1978年)
」
*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。