「夏期限定トロピカルパフェ事件」/小市民を目指した僕らは・・・ | 旧・日常&読んだ本log
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- 米澤 穂信
- 「夏期限定トロピカルパフェ事件
」
「春期限定いちごタルト事件
」の続編。珍しくも新刊で買っちゃいました。
恋愛関係にも依存関係にもないが、互恵関係にある高校生、小鳩くんと小佐内さん。
小鳩くんは、小賢しい狐である自らを封印するため、小佐内さんは執念深い狼である自らを封印するために、互恵関係を結ぶのであるが・・・。
目次
序章 まるで綿菓子のよう
第一章 シャルロットだけは僕のもの
第二章 シェイク・ハーフ
第三章 激辛大盛
第四章 おいで、キャンディーをあげる
終章 スイート・メモリー
高校二年生になったこの夏、彼らの運命を左右するのは、<小佐内スイーツセレクション・夏>。
小鳩くんと小佐内さんが結んだ互恵関係は、本来は、学校など人目がある所をしのぐためのもの。
彼らが目指す「小市民的である」という事にしても、それは人との関係性に表れるものであるしね。
であるからして、夏休みなどの長期休暇中は、この関係は一旦お休みしても良いはずだったのであるが・・・。
小佐内さんは、なぜか小鳩くんを<小佐内スイーツセレクション・夏>と題した、彼らが住む町の甘味所巡りに引っ張り出す。小佐内さんは、一人ではお店に行けないなどという、可愛いタマでは有り得ない。小鳩くんは、小佐内さんの腹のうちを探りながら、このセレクションに付き合う事になったのだが・・・。小佐内さんの意図はさて如何に??
日常の謎に終始し、犯罪の要素はカケラもなかった、前回に対し、今回の謎は何だか不穏。小鳩くんの幼馴染、健吾が探る、薬物乱用グループに、誘拐事件。
そして、二年近く、順調に続いてきた、小鳩くんと小佐内さんの美しい互恵関係にもついにはひびが・・・。小佐内さんのついた「嘘」、最後に小佐内さんの頬を伝った涙。うーん、これらの謎については、次作「秋期限定マロングラッセ事件(仮)」に続くんだろうなぁ。平穏な日常の謎系が続きつつ、彼らの過去が少しずつ明かされるものと思っていたので、この展開はちょっと意外だったけど、次作が楽しみでもある(今回のこの展開には、小佐内さんの過去も、関係してはいるのだけれど、全てのカードが開かれている感じはないんだよな)。
そういえば、この間、ケーキを買ったときに、珍しくもシャルロットを選んでしまったのは、確実にこのシリーズの影響だったり。私が買ったシャルロットには、不意打ちをかましてくれるマーマレードのようなソースは入ってなかったけどさ。
なんという旨さか!
泡がさらりと溶けていくような軽やかな口当たりに、見え隠れする程度のほのかな甘味。スポンジ生地の内側は、クリームチーズ風味のババロアだった。そのチーズの味わいは自己主張が強くなく、その穏やかな味わいをしみじみと楽しんでいると、内側に隠されたマーマレードのようなソースが不意に味を引き締めてくれる。このシャルロットはホールを八つ切りにしたものと見たけれど、外見からそんなソースが隠れていることはわからなかった。どうやら一ピースに切り分けた後で、スポイトか何かでババロアの中にソースを注入したらしい。手のかかることをするけれど、確かにこれは嬉しい不意打ちだ。酸味と甘味がこれほどマッチしたものは初めて口にした。
甘いものをそれ程好まぬという小鳩くんを虜にしたという、<ジェフベック>のシャルロット、ああ、美味しそうーー!!・・・って、本筋にはそんなに関係ないけどね。
リンク: 汎夢殿
(米澤さんの公式サイト)
*臙脂色の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡下さい。