レイ ブラッドベリ, Ray Bradbury, 小川 高義
「ブラッドベリがやってくる―小説の愉快
」
晶文社
SFとファンタジーの巨匠である、レイ・ブラッドベリ。
この本は譬えていうなら、ブラッドベリおじさんが、例えば親戚の若い男の子などに、その創造性の秘密をそっと教えてくれるような本。レイ・ブラッドベリの溢れる創造性の秘密とは?
目次
生命の木にのぼり、自分に石をぶつけ
骨も折らず、魂もくじけずに
また降りてくる法
本文にくらべて
さほど長くもないタイトルのついた序文
書くことの喜び
速く走る、ぴったり止まる
あるいは階段の上のもの
あるいは古い精神に発する新しいお化け
いかにして詩神を居着かせるか
酔っぱらい、自転車一台所持
10セント玉の投資―『華氏451度』
ビザンチズムとまで行かずとも―『たんぽぽのお酒』
ロボット博物館の黄昏
秘密の精神
禅と小説
創造性について
訳者あとがき
それは小説であったり、お芝居であったり、共通するのは「物語」を物語ることの秘訣であること。
レイ・ブラッドベリの小説は、しばしば郷愁溢れるものであると評されるけれど、それもそのはず、彼の中には少年の時に心に残ったものがそっくりそのまま残され、それが更に熟成されて芳香を放っていたのだ。無意識の中から紡ぎだされる物語。そう、後はそこから、如何に新鮮なまま物語を汲み出すか、ということ。
恃むべきは自分であり、オリジナルの物語こそが全て。
勿論、物語を書くための修練は必要であるけれど・・・。
どのような世界観を持つか。自分がプリズムだと思って、世界の光を測ること。光は精神を通過して燃え、どこの誰とも違ったスペクトル分析の図柄を、白紙に描きだすだろう。
自分を貫いて世界が燃えるようにする。白熱したプリズム光を紙の上に投げる。自分だけの個性あるスペクトル図形を描く。
そうすれば、新しい元素となった自分が、発見され、図表に載って、名前をつけられる。
(p157 「禅と小説」より引用)
物語ることに対する熱情溢れる文章なので、それに当てられ、小説家志望でもないくせに、うっかり「小説家って素敵♪」などと思ってしまいます。笑 ま、自分は勿論、「読む」側に過ぎないので、これからも色々な個性あるスペクトル図形を、うっとりと眺めたいものだと思います。
*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。