幻想文学の書き手として名が売れ始めた作家、阿坂龍一郎のもとに、「今はもういないキミへ」と題された、差出人の名が無い手紙が送られてくる。
その過去から来た手紙に阿坂は激しく動揺する・・・。
また、時を同じくして五芒星を描くように、阿坂のマンションを中心とした放火事件が相次ぐ。
阿坂を追い詰めるのは何なのか、阿坂は誰に追い詰められているのか?
それは手紙が指し示す、山梨の高校における、七年前の少年の焼身自殺事件が関係しているようであるのだが・・・。
フェアに書かれているし、ん?、と引っ掛かるところもあるので、勘の良い方は途中で一つのカラクリには気付くのだと思う。なんていうんだろう、ちょっと違うけど、歌野さんの「葉桜の季節に君を思うこと」的なトリックが仕掛けられているのだよ(あれも、そう思って読めば、確かにそう読めるでしょ?)。
ただし、こちらは動機がなー。作家・阿坂の誕生のきっかけになった殺人(というか、事故)や、阿坂を追い詰める人物の動機がいかにも弱い。
残念ながら、この本は「狐罠」 に出てきた刑事、四阿、根岸のコンビが活躍するのが嬉しいくらいだったなぁ。