「ことばで「私」を育てる」/ことばの力 | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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山根基世「ことばで「私」を育てる」

山根さんはNHKのエグゼクティブアナウンサー。つい最近、女性としては初のアナウンス室長(理事待遇)となられた。山根さんを知ったのは、テレビではなく、ブックオフの100円文庫。それが面白かったので、今回の本を借りてきた。アナウンサーであるだけに「ことば」を大切にし、またインタビューや旅番組(「関東甲信越・小さな旅」など)を多く担当されたために、相手の背後にまで深く思いを寄せる方であるという印象を受けます。

目次
はじめに
第一章 ことばの重みに気づくとき
第二章 ちょっと真面目なことばの知識
第三章 世間はことばで回っている
第四章 仕事に負けないことばを磨く
第五章 ことばから広がる情景
第六章 人を知り、ことばを知る

全編、謙虚で学ぶ姿勢が崩れない。働く女性のヒントになる言葉や姿勢も盛りだくさん。人に自分の気持ちを伝えたいとき、ある程度そこには理論や技法が存在するのだな。基本は自分の中の「ことば」をよく練ることなのでしょうけれど。

「会議必勝法(1)“女らしさ”を捨てる」の項より
会議必勝法―まず自分のいちばん言いたい結論から簡潔に話すこと、それが第一歩だ。しかしこの第一歩を踏み出すためには、自分のいちばん言いたい結論が何かを、しっかり把握しておく必要がある。そのためには、何段階もの思考のステップを重ねなければならない。しかもようやく見えてきた「言いたいこと」を簡潔にするためには、さらに何段階ものそぎ落としの作業が求められる。

「会議必勝法(2)如才なく」
女性の意見が会議で通りにくいもう一つの背景としては、女性自身が「組織人」として未成熟だということがある。

などにも成る程と思った。自分自身も多少特殊な職についていたので、あまり「組織」を考えずに会議などに出席していた。そして、それが多少薄っすら分かった所で、退職してしまった。同じ意の発言であっても、プレゼンテーション能力の違いによって、その受け取られ方は大きく異なる。何が言いたいのだか、どこに結論があるのか分からない発言も、受け入れられることは少ない。限られた時間の中で、その意を汲む所まではなかなかいかないものだ。

「嫉妬心をやっつける」の項も良かった。
山根さんは努力の人。女性アナ同士で椅子の取り合いのようになってしまう現状から、以下のような対策を採られた。
一定量の仕事を分けあう椅子取りゲームで、だれがどの席に座ったかを横並びで比べている間はいくつになっても、いや、定年まで、ほかの女性はみなライバルで、嫉妬の対象になってしまう。そんな価値観に支配されつづけるのは地獄だ。私は、私たち自身の中にあるそんな価値観を変えて、この地獄から抜け出さなければならないと思った。そのために、何人かの若い女性たちと勉強会をはじめた。(中略)気が付くと、女性同士がお互いの技術を磨きあい、よりよい番組をつくるために助けあっていた。私自身も、後輩がうまくなったり、よい番組をつくったりすることを心から応援し、喜べるようになっていた。年とった女性アナとして僻んだり妬んだりしているより、はるかに精神的に楽だ。結局こうした運動は、私自身の魂を救うためのものだったと気づくのだった。

女性でなくとも参考になる事が沢山あると思う。建設的で前向きな考え方が清清しいです。

著者: 山根 基世
タイトル: ことばで「私」を育てる

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、御連絡下さい。