演じる/「野ブタ。をプロディース」&「前略・ミルクハウス」 | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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白岩 玄「野ブタ。をプロデュース」

人にはその生活において様々な役割がある。だからその所属グループ(家族、友人、会社などなど)によって、少しずつ異なる貌を見せている。「本当の自分」というのはよく分からない言葉だけれど、きっと多少の演じ分けは皆がしていること。

これは超自覚的な演技で、クラスの人気者として君臨する、高校生・桐谷修二くんの物語。彼のクラスに小谷信太(信太、だから野ブタ)くんが、転校生としてやってくる。容姿に恵まれず、オドオドと挙動不審な「野ブタ」くん。クラスの仲間にも勿論入れてもらえないし(「キモい」、から。嗚呼、高校生って!)、早速いじめのターゲットになってしまう。偶々、いじめの場面に出会ってしまった修二。「野ブタ」に弟子入りを志願される。

修二は「野ブタ」をプロデュースして、人気者に仕立てあげることを決意する。「野ブタ」は見事人気者になるが、プロデューサーに徹していた修二の演技力は鈍る。さて、最後はどうなるのか?

これ、こんなにも若い作者が書いたのか、とびっくり。非常に上手い小説だった。今後の作品はどうなるのか? 次作にも期待。


「演じる」で思い出したのが、小説ではなく漫画だけれどこちら。

川原由美子「前略・ミルクハウス」

これは下宿屋「ミルクハウス」を舞台にした物語。ひょんな事から一緒に住むことになった男女数名。細かい所はもう覚えていないのだけど、日々演技をして生きていた「涼音」の事が強く印象に残っている。

涼音は過去色々屈折する思いがあって、本当は真面目なのにわざとちゃらんぽらんに見せて、誤魔化して、生きている(大体、男性なのになぜか女装しているし。しかも超のつく美少女っぷり)。途中までは普通にドタバタコメディなのだけれど、印象に残っているのは後半の展開。

平穏に暮らしていたミルクハウスに、ある日突然「涼音の元カノ」が転がり込む。涼音の元カノは、涼音の屈折した思いや日々を知っていて、「だから、私はあなたが分かる。あなたは私と付き合うべきだ」と復縁を迫る。涼音の元カノも、彼と同じような痛みを抱えて、彼女は「私はそんなに強くない」から、自分を分かってくれる、知っていてくれる人が欲しいのだ。でも、涼音は「演技しているのを解られるのは辛い」。それでどうせ演じるなら「何も知らない観客の前がいいよね」。

彼が好きなのは、多分自分の事を何も分かっていない、ちょっと鈍い天然ボケの主人公・芹香。芹香だって悩まないわけじゃない。「自分の知らない涼音さん」の存在に悩むし、それを私にも教えて欲しいと迫る。大体、涼音の告白の仕方がずるいんだよね。毎度ただ、「好き、好き」「芹香ちゃん、可愛い~。愛してるわっ(抱きっ)」と言うだけなの。ある意味、一番賢い口説き方なのかもしれないけど。

涼音は芹香の自分を見る目が変わることを恐れ、過去を知られることを恐れる。結局、芹香は過去の涼音を知ってしまうのだけど、それでも丸ごとの彼を受け入れる。「ほんとうの自分」なんてものはないと思うけど、「このように見られたい自分」と「あまり知られたくない自分」というものがあることは、分かる。大人になるにつれ、この間の差は縮まっていったけれど。

きっと涼音と元カノでは、傷の舐め合いのようなことになってしまったのだよね。芹香と生きることで、涼音は新しく生きることが出来る。芹香の魅力が当時はよく分からなかったのだけど、このある種の「鈍さ」と包容力が彼女のいい所だったのだと、今は思う。


冒頭に戻って、高校生・修二の今後はどうなるのかなあ、と思う。

著者: 白岩 玄
タイトル: 野ブタ。をプロデュース
著者: 川原由美子
タイトル: 愛蔵版 前略:ミルクハウス [少年向け:コミックセット]

*「前略・ミルクハウス」が手元にないままに、書いてしまいました。細かい部分など、間違っているかもしれません。そして、説明が分かり難くて申し訳ありません。うーん、ぐだぐだ。 うはー、そして画像も出ないですね。そんでもって、これって少年向け漫画だったのか??