イヴの魔法(下)だ!! | ツムラのチャンネルTブログ

イヴの魔法(下)だ!!

ツムラだ!!





小説もいよいよ後編。

ちなみに、ミカさんには一応ちゃんと事前に許可を取りました。



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イヴの魔法(下)



それから、アツシとは週1で会うことになり、食事をしたり、お酒を飲んだり、ドライブで遠出をしたり。

とにかく、突然やってきたこのキラキラした日々に、最初はミカも戸惑っていたが、次第に夢うつつから抜け出すように恋を噛み締め、おしゃれをしたりメイクを変えたり、毎日を楽しみだしたのだった。

そしてクリスマスも近付くある日の帰り道、アツシがミカに"次"の約束を放った。

「今度、イヴの夜なんだけど、会社の関係者でクリスマスパーティーがあるんだ。

そこに、ミカちゃんも一緒に来てほしいな。」

「え、あたしはええけど、アツシくんはいいん?」

「みんなにミカちゃんを紹介したいからさ。
でも…

芸人やってるってことは、黙っててほしいんだ。」

「えっ…?」

思わず驚いたが、もしかしたら世間的には驚くようなことではないのかもしれない、と思い、ミカはその感情を無理矢理飲み込んだ。

アツシが、少し口調をもごつかせながら続ける。

「というかさ、その、、辞めないの…?」


「…えっ??」

「ごめん!やっぱこの話やめよ!そのパーティーさ、ホテルの最上階でやるんだ!めちゃくちゃ料理おいしいから、ミカちゃんもすごく楽しめると思うよ!」

「う、うん。」


ミカは、帰った後も、1人でずっとアツシの言葉を反芻していた。

やっぱり、ガールフレンドが女芸人やったら恥ずかしいんかな。

あたし、大切な人が恥ずかしいと思うようなことを、こんなに必死になってやってるんかな。



12月24日。

ホテルに着くと、フロアにはいかにもな紳士たちと、煌びやかなドレスに身を包んだ淑女たち。

ミカも精一杯合わせようと、母に貰った真っ赤なドレスに、普段めったに履かないヒール姿だったが、全く太刀打ちできない。

それでも。

アツシくんが言う綺麗の一言が、ミカの魔法を蘇らせた。

そうだあたしはシンデレラ。
せめて、せめて今日だけは。


アツシは人気者で、次から次へと人が寄っては変わり、その度、ミカは挨拶をした。

周りのクスクスも、聞こえてはいたが、ミカは耐えた。
きっと気のせいだ。
あれはあたしのことじゃない。

しかし、


「おい、アツシ!!
お前今日はえらいの連れてきてるなあ!!
お前コレ、B専どころの騒ぎじゃねえよ!!」

べろべろに酔った会社の同期が、ミカを指差し、腹をかかえて笑った。

ミカはその瞬間に、スカートをまくりあげ、走ってホテルから飛び出した。

途中大きな階段があり、靴が脱げ落ちてしまったが、それをすくい上げ、手に持って走った。


外へ出た瞬間、アツシがミカの腕をぐっと掴んで引き止めた。


「ごめん!!!!」

向かいの通りの通行人が振り向くようなボリュームで、アツシは頭を下げて謝罪した。

「もうパーティーを出よう!」



2人で夜道を歩きながらも、ミカにはやはりさっきの出来事が頭にこびりついていた。

この人とあたしじゃ、やっぱり…。

「これ!クリスマスプレゼント!」
ふと立ち止まったアツシがバッグから取り出したのは、リボンの付いた可愛らしい靴だった。


「靴、いつも汚れたスニーカー履いてたからさ、あげる。」

「ありがとう!!」

さっきの出来事を吹き飛ばすかのような興奮に、ミカは瞳を輝かせた。


「それから…芸人を辞めて、オレと付き合ってほしい!」


「えっ…??」

刹那、時間が止まった気がした。

生まれてはじめての告白。

でも。


「やっぱりさ、彼女が芸人やってるっていうのはちょっと嫌かな。
今日みたいなこともあるだろうし、ミカちゃんには芸人を辞めてもらって、もっと普通の女の子みたいに…」


「…返す。」



ミカは、プレゼントの靴の入れられた袋をアツシに突きつけた。



「シンデレラはな。

シンデレラならな。王子様が迎えに来てくれたら、すぐにうんって言うねん。

でもな。

でもな。

あたし女芸人やから。

みんなに笑われてもな。
王子様に嫌がられてもな。

それがあたしの夢やねんか。」


途中から涙で言葉も顔もぐじゃぐじゃになり、嗚咽も止まらない。

それでもミカは、一生懸命言葉を繋いだ。

「ア''ヅジぐん、いままでありがどゔ…!!
ざよ"なら"!!」






12月25日。

いつもの喫茶店で、いつもの3人。

「恋ってさ、むずいよな。」

「なんやねんミカちゃん急に!」

そう言ってがははと甲高い声で笑うミカのか細い瞳には、笑い涙とは確かに違う雪の雫が光る。


「あ、もうこんな時間や!まりさんに怒られるわ!!」

そう言ってカフェを飛び出した彼女の背中は、0時を回っても解けない魔法で輝いていた。


END.






本日!
ロンリードッグコロッセオ前編

18:15開場18:30
OCAT4F講堂
200円
MC シバインシュタイガー
出場者はこちら

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12/27(土)
ロンリードッグコロッセオ後編
18:15開場18:30開演
OCAT4F講堂
200円
MC ジェットゥーゾ
出演者はこちら

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