希代加(きよか:中森明菜) は、歩くのも困難な状態ながら、病院を退院する。しかし、自宅へ戻ったものの、やり場のない怒りを抑えきれない。真っ暗な部屋の中でひとり荒れる。

そんな中、希代加は、亡き夫・公平(こうへい:辰巳琢郎) のノートパソコンを見つける。パソコンには、公平の生前のブログが残されていた。そこには、妻・希代加とお腹の子を愛おしく思う気持ちが綴られていた。希代加は、公平を思い出し、涙を流す。

 

希代加(中森明菜)を慕う、花屋の店員・丸山(まるやま:的場浩司)。希代加が早々に退院したことを知り、心配になって、希代加宅を訪ねる。そこで、痛む体に鞭打ち、必死にリハビリをする希代加の姿を目にする。

見るに見かねた丸山は、いろいろと世話を焼こうとする。しかし、そんな丸山をよそに、希代加は、ある日 忽然と姿を消してしまう。驚く丸山。あちこち探し回るが行方はつかめない。

 

数か月後、髪形や雰囲気が変わり、別人のようになった希代加(中森明菜)が街を歩いている。体が癒えた希代加は、美咲(みさき:永作博美) の暮らしぶりを観察し、接近する機会をうかがっているのだった。

 

一方、無事出産した美咲(永作博美)は、仕事を休職し、生まれたばかりの 息子・(ゆう)の育児に専念していた。しかし、勇の泣き声をめぐり、隣の家に住む意地の悪い高齢女性とトラブルになってしまう。

 

希代加(中森明菜)は、美咲(永作博美)に接近するため、まず、その隣の家を手に入れることにする。そして、高齢女性が心臓を悪くしていることに目をつける。

希代加は、女性に対し、陰から次々と不気味な嫌がらせを仕掛ける。その執拗さに女性の心臓が悲鳴を上げる。

ついに女性は倒れる。希代加は、空き家となった家をまんまと借り受けることに成功する。そして、手に入れた家で、偽りの姓を名乗り別人として暮らし始める。希代加が亡きニュースキャスター・椎名公平(辰巳琢朗)の妻であることは誰も知らない。

 

希代加(中森明菜)は、善良な主婦を装い、隣に住む美咲(永作博美)・ 万作(まんさく:伊原剛志)夫婦に近づく。自分は夫と二人暮らしの専業主婦で、夫は今は海外赴任中だと嘘の自己紹介をする。

以前の意地悪な隣人にうんざりしていた美咲は、上品で感じの良い希代加を歓迎する。こうして、希代加と美咲・万作夫婦は、お隣どうし互いの家を行き来する仲となる。

また、美咲の友人・麻巳子(まみこ:白島靖代) や、同じく友人であり美咲の夫・万作の職場の後輩でもある 圭司(けいじ:唐渡亮)とも知り合いになる。

 

その一方で、希代加(中森明菜)は、自宅近所の花屋でパートとして働き始める。その店は、なんと、丸山(的場浩司)の働く花屋だった。突然現れた希代加に丸山は目を丸くする。

希代加にとって、丸山は周囲で自分の過去を知る唯一の人物だった。美咲(永作博美)への復讐を遂げるには、その丸山に近づき手なずけておく必要があったのだった。

人の好い丸山は、初対面を装う希代加をいぶかしく思いながらも、調子を合わせる。

希代加は、自分の過去をばらさないよう丸山に無言の圧力をかける。


ある日、希代加(中森明菜)は、いつものように隣の美咲(永作博美)宅を訪ねる。そして、隙を見て、美咲のお茶にこっそり睡眠薬を入れ眠らせる。

傍らのベビーベッドには、美咲の息子・が眠っていた。希代加は、勇の顔に枕を押しつけ、窒息死させようとする。だが、どうしても殺すことができない。泣き崩れる希代加。放心状態でぼんやりと勇を見つめる。

やがて希代加は、勇を抱き上げ、自分の乳房を吸わせる。希代加は、勇に、かつて流産したわが子の姿を重ね合わせる。