セミファイナルまでの興奮の余韻が冷めやらぬ観衆。いよいよ本日のメインエベントです。

青コーナーから付け人の藤原喜明を従え入場するアントニオ猪木、方や赤コーナーからは参謀のドリー・ファンク・ジュニアと共に入場するジャイアント馬場。

観衆の大声援を背に双方同時にリングの中に入りました。

ここで殺伐とした中で一輪の花が咲き開くが如く、馬場には女優の吉永小百合さんが、猪木には議員繋がりで蓮舫参議院議員がそれぞれに花束贈呈。

続いて今日をもって引退する篠原リングアナが渾身のコール。

「エー、本日のメインエベント、インターナショナル選手権試合60分3本勝負でございます。」

「青コーナー、挑戦者~250バウンドー、アントニオーーイーノキーーー」会場から怒涛の如く足を踏み鳴らし、大声援と拍手。続いて「赤コーナー、選手権保持者~320バウンドー、ジャイアントーーバーバーーー」とこれまた会場割れんばかりの拍手と声援。

「レフェリー、オキーシッキナーー」と言い終えると、篠原アナ、何やら目頭を抑えながら、リングを降りていきました。

東京スポーツ桜井康雄「声援は猪木の方が勝っていたですね~」というと、

山田隆、負けずに「足を踏み鳴らした分だけ多いように感じましたね。馬場さんのファンは大人しいからそういう応援の仕方はしませんから」と負けずに応戦。

 

さぁ、いよいよ開始のゴングが鳴りました。

馬場はリング中央で大鷲の如く両腕を広げて猪木が懐に入って来るのを待ちます。

猪木はその馬場の周囲をグルグルと2回3回と周り、馬場を捕まえるタイミングを計っています。

と、その時意表をついて猪木がドロップキックの奇襲攻撃。もんどり打った馬場の無防備な起きざまを狙いさらに、2発3発・・・5発。さすがに不意を突かれた馬場は何もできず、そのままエビ固めに固められ、先制のフォールを奪われました。

僅か56秒の短期集中攻撃が功を奏したようです。

1分のインターバルが経過し2本目開始のゴングが鳴ります。

馬場は慎重に間合いを取り微妙な距離感を保ちます。

ようやく両者組み合い、馬場がアームホイップから猪木の左手を集中的に攻撃します。

アームブリーカー3発の後、腕ひしぎに持ち込もうとすると、猪木は懸命にそこから逃れようとしています。

ロープブレイクでやっと腕が解けたのでしたが、猪木はしきりに顔をしかめ、左腕をブラブラさせています。

馬場はこれを見逃さず再度左腕をアームブリーカーで攻めます。

馬場の執拗な左腕攻めが猪木の戦闘意欲を削いで、コーナーに蹲ってしまいました。

勝負と見た馬場は、猪木をリング中央に戻し、ココナッツクラッシュ2発、ロープに飛ばし跳ね返るところを水平打ち2発。16キック、さらに脳天唐竹割。

留めとばかりにフラフラの猪木をロープに飛ばし最後は32文人間ロケット砲。

1度はカウント2で跳ね返したもののすでに余力はなく、馬場が2発目の人間ロケット、さらにもう一発放ち、完全フォールをとりました。

 

両者1対1のタイスコアとなったところで試合時間は残り10分。馬場優勢でこのまま3本目も獲るか、あるいは猪木が起死回生の逆転劇を演じるか、15万人の大観衆が双方に分け隔てなく大歓声を送っています。

 

残り試合時間5分となったところで、フィールド奥にある控室の前が騒がしくなっています。

何と、ブルーザーとクラッシャーがレイス、マードックと何やら口論しているではありませんか!

後で判明したところによると、馬場と猪木のどちらを応援しているのかとレイスとマードックに聴き正したところ「勿論、馬場!」と答えたのに「お前ら、あれだけ痛めつけられたジャップなんか、応援するな!」言った刹那、ブルーザーとクラッシャーはリングめがけて疾風の如く駆け上がり、馬場にいきなり襲い掛かりました。

不意をつかれた馬場は2人の傍若無人ぶりに、なす術を失い、ひたすら、殴る蹴るの猛攻に耐えています。

猪木は事の成り行きを察知し、すかさず馬場の救援に乗り出します。

猪木という友軍を得て体勢をたて直した馬場はブルーザー、クラッシャーをチョップ、キック、サフォケーションクローと昔”東洋の悪魔”と言われた頃の自分に帰り、猪木はリング下から取ってきたバケツで2人を滅多打ちにしさらにリング下に落とし、馬場がブルーザーを猪木がクラッシャーをそれぞれ鉄柱に激突させ大流血に追い込み、二人は這う這うの体で控室に逃げ帰りました。

このブルーザー、クラッシャーの乱入で試合はノーコンテストとなり完全決着とはなりませんでした。

試合後猪木は「馬場さん今度は二人でタッグを組んで、ブルーザーとクラッシャーの野郎をぶちのめしてやりましょう!」というと、すかさず馬場が「おぅ! やってやろう!」と約束したのを見届けた観衆は、勝敗がつかなかったことより、もう一度BI砲が見られることの喜びに大満足でした。

 

PS.

これは、フィクションです。