こんにちは、つくるまなぶ京都町家科学館ものづくりナビゲーターのかちゅーです。

今回は、先日yahooニュースで記事になっていた話題です。
 

(ハフポスト)


中学入試で「あらかじめ解答が用意されていない」「受験生の数だけ答えがある」問題が増えてきているという内容です。

算数や理科、社会の学びが日常の中でどういう役にたつか、学んだことで未来をどう変えたいかといった問いが取り上げられています。
問題集をいくら解いても何を答えればいいかわからない問題の紹介と、じゃあどうすればいいんだろう?を考えていきましょう!

 


 


 

2017年 駒場東邦中学校の入試問題(算数)

 今まで算数を学んできた中で、実生活において算数の考え方が活かされて感動したり、面白いと感じた出来事について簡潔に説明しなさい。

「算数なんてなんのために勉強するの?」
親や先生を悩ませるこの質問を、だれかに答えをもらうんじゃなくて自分で考えろ!という問題です。
算数で感動したり面白いと感じた経験がなければ解答できません。

出題校である駒場東邦中学校は、出題意図について「自分で考え、答えを出す力を育む教育をしています。日々の勉強が日常生活にも繋がっているということを意識してもらいたいというメッセージを込めました」と語っているそうです。

子どもたちがどんな解答をしたのか考えるだけでもわくわくします。
どんな解答があったんでしょう…ちょっと考えてみましょう

・「たくさんあるものを数えるときに、1,2,3,4,…ではなく、2,4,6,8,…と数えることで素早く数えることができた。」


とっても簡単なことですが、こんなのもありじゃないでしょうか。倍数の性質を実生活に活かした例です。


・「簡易計測器を使って相似な三角形を考えることで、木の高さが測れたこと。」


http://scouts-yamaguchi.jp/yougo/06_k.html



ボーイスカウトの経験がある人からだったら出てきそうな解答。幾何学の知識を生活に活かすという点では、設計図を書いてものづくりをした経験なども語れそうですね。


・「車の模型をつくるときにギアでモーターの回転を遅くするとパワーが強くなって、回転を早くするとパワーが弱くなる、反比例の関係になっていたこと」

https://www.mabuchi-motor.co.jp/motorize/teck/


回転数とトルクが反比例になる関係のこと。工作が好きだったらこういう経験もあるかもしれません。
歯車は算数の学びと生活の関係がとてもわかりやすいものだと思います。
つくるまなぶではこんな↓オンライン講座を開催しています。


算数実生活の関係。意識したことがないと何を書いたらいいかわからないけど、考えてみればいろいろありそう。そんな問題ですね。

日能研のページでは解答例として↓こんなものが挙げられていました。


・マンホールのふたの形を円にするのは、下に落ちないようにするため。
・2進法の考え方を使って、両手の指だけで0から1023までの整数をすべて表せること。
・グラウンドに大きな直角を作りたいとき、30m、40m、50mが3辺となるような三角形をロープで作ることによってできること。

なるほど。思いつかない解答でした。しかし指を使った2進法はちょっと現実的ではないのでは?
たとえば、中指と小指だけ曲げてみようとしてみてください。


むりむり指つっちゃう!

 


 


 

2019年  芝浦工業大学附属中学校入試問題(理科)

(図)は、ウミガメが食料としているクラゲの写真です。近年、ウミガメが海洋にただよっているビニール袋(ぶくろ)をクラゲとまちがえて食べてしまい、それが原因で死んでしまうことが問題となっています。
ウミガメをそのような被(ひ)害から救うためにどのようなビニール袋をつくればよいと思いますか。あなたの考えを50字以内で答えなさい。ただし、ビニール袋として通常使用できる便利さは失わないものとします。


海洋プラスチック問題に関する出題。ポイントはビニール袋を使わないのではなく、「どのようなビニール袋をつくればよいか」を自分なりに考えようというところ。
環境に悪いからやめるではなくて、どうすれば持続的に使えるものになるかというSDGsの本質をつくような問いですね。工業大学の附属だけあってとっても工学的。

・カメが食べても無害で、排出できて、海の中で分解されるセルロースやポリ乳酸で袋をつくる!


とかでしょうか。といっても、セルロースは水に弱く通常利用が難しく、ポリ乳酸は硬くて割れやすく、水の中では分解されにくいなどいろいろ問題があります。
こういう機能の素材があればいい!と書くのがいいのでしょうか。

素材」を変えるという発想もいろんな素材でものづくりをした経験がないとなかなか出てこないんではないかと思います。学校の工作だと紙と粘土、木材ぐらいしか扱わないことが多いのではないでしょうか。

素材の違いをテーマにしたこんなオンライン講座もあります。

 

 

日能研のページでは解答例として↓こんなものが挙げられていました。
・ウミガメが消化でき、水にはとけずに海水にだけとける物質を使ってビニール袋をつくる。
・ビニール袋に、毒を持っている生物に似せた色や模様を印刷し、クラゲとまちがえないようにする。

 

素材を変えると、見た目を変えるの2パターンですね。たしかに問題ではクラゲの写真を載せています。ビニール袋とクラゲが似ないようにすればいいっていう発想への誘導の意味もあるんですかね。

水にはとけずに海水にだけとけるなんていう都合のいい素材なんてあるの?と思いますが、世界中が本気でそういう素材の開発を目指しています。国内でも何例か研究レベルではできているとのこと

 

 

 


 

答えのない問いとSTEAM教育

 

冒頭の記事内ではSTEAM教育という言葉は使われていませんが、「学んだことで何ができるか考えて実践した経験」を大事にするSTEAM的な学びの経験がないと何を答えればいいかわからない問題たちでした。

「答えのない問い」の答案に点数をつけることや、それを合否判定に使うことには賛否両論あると思います。
こういった問題の上手な攻略方法を考える受験業界も存在するでしょう。

それでも「答えのない問い」に立ち向かう力が必要であることに疑問を持つ人は少ないのではないでしょうか。
子どもたちに未来を楽しく生き抜く力をつけるためにも、「答えのない問い」と向き合うための「STEAM教育」体験してみませんか?

 

 



この記事を書くために16年ぶりに中学入試の問題をしっかりと見ましたが、
これ大学入試のセンター試験(今は共通テストですね)なんかよりよっぽど難しいんじゃないかって問題もありますね…
物理化学生物地学でわけずに「理科」というくくりだから出せる横断的な面白い問題もたくさんあります。今後もまたそういった問題にも触れたいなと思います。