こんにちは、筑田昌伸です。
2026年8月19日、大手フードデリバリーサービス「menu」が2026年9月30日をもってサービスを終了することが発表されました。
参考記事:
フードデリバリー「menu」、9月30日にサービス終了(CNET Japan) - Yahoo!ニュース
KDDI傘下としてKDDIとレアゾン・ホールディングスの共同運営で事業を拡大してきた同サービスですが、市場環境の変化に伴い幕を閉じることとなります。
外食の機会が増えたり、新しいサービスが台頭したりする中で、一度は利用したことがある方も多いのではないでしょうか。
今回はこの「menu」のサービス終了ニュースを切り口に、激化するプラットフォームビジネスの構造問題と、企業が持続的に成長するために不可欠な「撤退戦略(選択と集中)」の重要性について考えてみたいと思います。
1. 「menu」サービス終了の背景と市場の現実
発表によると、終了の理由は「フードデリバリー市場をめぐる競争環境の変化や今後の事業見通しを検討した結果、経営資源を最適に配分する観点から判断した」とされています。
国内のフードデリバリー市場の変遷を振り返ると、まさに群雄割拠と淘汰の歴史でした。
- 2022年1月: foodpanda 撤退
- 2022年5月: DiDi Food 撤退
- 2023年5月: Chompy サービス終了
- 2026年3月: Wolt 日本市場から撤退
- 2026年9月: menu サービス終了
世界的なテック企業や資金力のあるプラットフォーマーが次々と撤退を余儀なくされています。
一方で、2025年に日本へ参入した「Rocket Now」のように急速にシェアを拡大する新興勢力も現れており、今後はUber Eatsや出前館、Rocket Nowなどを中心とした激しいシェア争いが続く構図となります。
なぜフードデリバリーはこれほど過酷なのか?
フードデリバリーのようなプラットフォームビジネスは、「スケールメリット(規模の経済)」がすべてを握ります。
ユーザー数、加盟店数、配送員の3つが圧倒的な規模に達しなければ、配達コストやポイント還元・広告宣伝費などの固定費を吸収できず、構造的に利益が出にくいビジネスモデルです。
競合が乱立する中でシェアトップ集団に入り込めない場合、赤字を掘り続けながら事業を維持することになり、どこかのタイミングで決断を迫られることになります。
2. 注目すべき「KDDIの円滑な撤退プロセス(完全子会社化)」
今回のニュースで非常に示唆深いのは、サービス終了に向けたKDDIの手続きです。
KDDIはサービス終了に先立ち、共同運営パートナーであったレアゾンが保有するmenuの全株式を取得し、完全子会社化(2026年8月31日完了予定)することを発表しました。
一見、「終了する会社の株をなぜ買い取るのか?」と疑問に思うかもしれません。
しかし、これこそが企業としての「責任ある撤退プロセス」です。
- 利用者や加盟店、配送員への丁寧かつ迅速な対応
- 解散・清算手続きを単独でスムーズに進める意思決定スピードの確保
複数のステークホルダー(株主)がいる状態で撤退処理を行うと、補償や清算方法を巡って意思決定が複雑化・遅延するリスクがあります。
あらかじめ100%子会社化することで、ブランドイメージを損なうことなく、関係者に配慮した「美しい畳み方」を実行しようとしているのです。
3. ビジネスパーソンが学べる「撤退とリソース配分」の視点
新規事業の立ち上げや拡大ばかりが注目されがちですが、実のところ「見極めて撤退する」ことの方が何倍も難しく、そして重要です。
この事例は、私たち日々のビジネスや業務改善においても多くの示唆を与えてくれます。
① 「サンクコスト(埋没費用)」に縛られない決断
これまで投じた巨額の投資や開発コスト(サンクコスト)に執着すると、「いつか好転するかもしれない」と撤退のタイミングを逃し、会社全体の体力を奪うことになります。
市場環境を見極め、勝算が薄いと判断した段階で「経営資源を他へ配分する」決断を下すことは、敗北ではなく次の成長のための戦略的撤退です。
② 事業の「畳み方」にこそ企業の誠実さが出る
プロジェクトの中止や事業撤退の際、ユーザーや取引先、社内メンバーへのフォローを適当にしてしまうと、企業としての信頼は一気に失墜します。
「どのように始めるか」以上に、「どのように終わらせるか」に組織の真価と誠実さが問われます。
終わりは次のリソース配分の始まり
「menu」のサービス終了は、一見するとショッキングなニュースですが、経営の観点から見れば「限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ)を、より成長性のある領域へ最適配分するための前向きな決断」と捉えることができます。
私たちが個人やチームで進めている業務やプロジェクトにおいても、同じことが言えないでしょうか。
- 慣習で続けているけれど、成果に結びついていない業務はないか?
- 成果の出ない施策にダラダラとリソース(時間や予算)を奪われていないか?
- やめる時の「関係者への配慮」を怠っていないか?
「やめること」を恐れず、定期的にポートフォリオ(事業やタスクの配分)を見直し、真に勝てる領域へリソースを集中させていく。
目まぐるしく変化する時代だからこそ、この「選択と集中」のしなやかさを持ち合わせていたいものです。
筑田昌伸
