いろんな話を聞かせていただきましたが、特に経験値が低い鉋のことに関して濃い内容はちんぷんかんぷん(^▽^;)
台を直す技術を身につけるのにどれだけ時間かかかるのでしょうね(笑)
ですがそれだけ楽しめる世界があることがあるのでうれしいですね!!
研ぎ屋むらかみの村上氏に言われたのですが、海洋堂の社長さんは模型の疲れは模型で取るらしいので、私も研ぎの疲れは研ぎでとりたいと思います(笑)
参加されました皆様お世話になりましたm(_ _ )m
さて以前からかずかずけん氏が研いだ剃刀の顕微鏡写真を撮り、人造砥石と天然砥石の仕上げの違い、また機械での研ぎの違いを調べてきました。
多くの写真から砥石や研ぎ方によって仕上がりに違いがあること、またその刃先の形状によって切れ味が変わると感じております。
そのため良い切れ味を求めるとなると、切るものに対して適切な研ぎ方、適切な砥石の選択が重要となります。
私が専門としている庖丁は切るものが多種多様であり、また使われている鋼材の種類が非常に多いため、刃先の形状によってどのように切られた食材が変化するのかを研究することが良い切れ味への近道かもしれないと感じています。
今回はかずかずけん氏に研いでいただきました剃刀の写真を見て感じたことを元に、再度自分の剃刀を研ぎ、剃って実験したものの考察を書いています。
少しでも読まれた方の参考になれば幸いです。
まず以下の写真はかずかずけん氏に研いできていただきました剃刀の写真です。
通常の剃刀研ぎでよく行われる直線研ぎの写真をご覧ください。
ダイヤモンド砥石#12000直線研ぎ↓
やはり直線研ぎなので縦に傷が入っていることが確認できます。
ただ刃先はかなり荒れており、ダイヤモンドの高番手とはいえ数段階下の番数の砥石の傷に近いことがわかります。
中山硬口直線研ぎ↓
直線研ぎに共通することは刃先までしっかり研ぎ込めていることです。
精度を高く研ぐという意味では平らな砥石に直線研ぎは非常に有効に感じます。
しかし欠点としては刃物に対して砥石の粒子の粗さが素直に影響するため、粒子が粗いと刃先が大きなのこぎり状になってしまいやすいように感じています。
また傷が揃うことで使用する際に耐久性がある方向や動かし方もあれば、耐久性に欠ける方向や動かし方があるかもしれませんね。
中山硬口直線研ぎのさらに拡大した写真↓
これらの写真から剃刀砥は非常に硬く弾力性もないため、入れた力は刃物に跳ね返ってくると考えられます。
そのため硬い砥石での直線研ぎは特に力を抜くことが重要だと考えられます。
次にかまぼこ状の砥石(砥石が平面ではなく、表面にアールがついた状態の砥石)で研いだ顕微鏡写真です。
巣板硬口かまぼこ八の字研ぎとコマ名倉↓
やはり硬い巣板とはいえ、刃先の仕上がりは粒子が出たものになっています。
中山①かまぼこ八の字研ぎとコマ名倉↓
中山②かまぼこ八の字研ぎとコマ名倉↓
これらの写真から八の字研ぎの方が傷がアランダムに付く関係か、刃線が揃っていることがわかります。
ただ中山②かまぼこ八の字研ぎとコマ名倉の写真は巣板のような仕上がりとなっています。
ここで感じた疑問は、なぜ刃先のみ仕上がりが変化したのかです。
可能性としては八の字研ぎのアクションからも刃先が若干丸くなってしまうことが予想されるため、刃先へ当たる力が丸みが付くことで変わったのではないかと推測できますが、私は名倉(砥泥)の影響が関係しているのではないかと考えました。
実はいろんな実験をしている中で、誰もが使えないと言われるような軟らかい砥石が非常に傷を浅くすることがわかっています。
当然ながら軟らかい砥石は凹みが早いため、そのような砥石だけを使って研ぐと精度の高い研ぎはできないですが、やはり何度試して顕微鏡で確認しても傷が浅いのです。
このことからも軟らかい砥石は砥泥が多く発生することで砥石と刃物の間に砥泥の層が生まれ、その層を使って研ぐことで傷が浅くなるのではないかと推測できたため、硬い砥石にその層を作ることで精度が高く、傷の浅い研ぎができるのではないかと考えました。
そこでいてもたってもいられず、自分の剃刀を使い、できる限り条件を同じにして研ぎ、使ってみることにしました。
研ぎに使用した剃刀は天水作両刃ベタ剃刀、砥石は中山剃刀砥です。
手順はすべて一度巣板で表面を同じ状態に戻してからそれぞれ名倉を変えた状態の砥石で約3分ほど研いでいます。
※PEAK300倍の顕微鏡を使って撮影しパソコンに取り込んで載せておりますが、残念ながら肉眼とパソコンに取り込んでからの画像では仕上がりの違いが見えにくくなっております。ご了承下さい。
中山戸前直線研ぎ名倉無し↓
まず中山の剃刀砥で名倉無しで研いでみました。
この砥石は硬いため、当然ながらクッション性がありません。
フラットな切り刃の両刃という形状が幸いしてかほとんど力を入れることなく研ぐことができたため傷はかなり浅くはなっていますが、それでも砥粒が細かくても砥石に対して直接刃物を当てにいっている関係で粒子の粗さの傷を入れていると感じます。
またこの剃刀はベタのものなので地金の反応があり、そのおかげで傷が浅くなったことも考えられます。
この状態での使用感は刃先がのこぎり状になっているものは産毛などは切れにくくなりますが、硬い毛や太い毛を切るには良いのではないかと思います。
しかし直線的に動かすのではなくVの字のような少しスライドを入れた動きをすることで、切れ味をカバーすることができるかもしれません。
円線刃(反りがある)の剃刀も理屈は同じだと思いますので、技術が向上すると剃る際もスライドを入れて剃ることができるようになるのではないかとかずかずけん氏との話でも感じています。
ただ私はできません(笑)
中山戸前+WA#10000↓
次に同じ中山の剃刀砥に実験のため均質であろうWA#10000を使って研いでいます。
ここでのポイントは薄らとWAの粉を砥面に撒いた状態で研いでいることです。
名倉無しよりは傷が浅くなってはいますが、刃先が揃いきってはいません。
名倉があることで若干傷は浅くはなりますが、砥石と刃物の間のWAの粉のクッション性が足りないのか砥石の影響が残るように感じます。
剃り感は名倉無しのものよりは細い毛も切れるように感じます。
しかし少し動きが悪くなり、乾燥した状態で腕を剃ると皮膚を削っている量が増えたように感じます。
髭を温めて軟らかくし、シェービングソープで滑りをよくすると良い剃り心地になります。
次に同じ状態で、WAの粉の量を増やしてみました。
さらに傷が浅くなり、刃先がきれいに揃ってきていることがわかります。
このことから推測される結果は、力と砥泥の量によって刃物に付く傷が左右されるということです。
ただよく考えてみたら当たり前の話ですよね(笑)
一定の条件で研ぐには準備と時間が必要なため、庖丁以外で本気でデータを取るような実験はしてきませんでしたが、そのため結果にばらつきが出て遠回りしているのだと感じました。
やはりやるときは本腰を入れなければと反省しています。
剃った感覚では、ここまで刃が揃っていると身も削っている感覚になり、剃る際の抵抗がより強くなります。
そのため剃るのが下手な上に抵抗による操作性が悪いために力も入り、肌へも強く当たって痛みが出ることもありました。
最後の写真は中山に丸尾山本戸前名倉砥泥たっぷりのものです。
巣板の仕上がりに近いです。
ただ表面の粗さは肉眼でも輝きがあるため、こちらの方が浅く感じます。
おそらく名倉に使っている砥石の研磨成分が元から細かく、また砕けてさらに細かくなっているからではないかと考えています。
私の中では中庸な仕上がりです。
切れ味はWA#10000を薄ら伸ばしたものに近いですが、剃り感は少し肌への当たりが優しいように感じます。
WAの砥粒は形状がGやGCに比べて丸みはありますが、硬くて砕けにくいため刃先が鋭くなりやすいからか、炭化物を削った薄い刃先になるからかもしれません。
また今回WA#10000を使用しましたが、#15000や#30000を使うと結果が変わるかもしれませんね。
WA#30000ではおそらくさらに傷が浅くなることから、より刃先が揃うため、切れ味が重くなってしまうのではないかと思っています。
また時間を見つけて試してみたいです。
今回の実験でいろんな刃先を見ることができましたが、結果として万能の研ぎというものはないのだろうと感じました。
切る対象物が髭という一つのジャンルであっても、硬さや太さなど条件が異なるだけで切るのが困難となったり、すべてが切れても使用感が良くなくなるのです。
庖丁に関しては先にも言ったように食材の種類も、また庖丁に使われている鋼材の種類も多く、また庖丁は刃先のみならず切り刃が切る際の操作性や抵抗感を大きく左右するため、何を切っても万能だという刃先を作ることは、突き詰めれば突き詰めるほど不可能になるとは思います。
また使用者の技量もまな板の種類や状態でも評価は変わるでしょう。
ですが、幸い和包丁は食材によって形状を分けて作られています。
今後も毎週料理人と切れ味の実験を積み重ねて、少しでもそれぞれの形に対する最高に近い状態の形を確立できればいいなと思います。
最後になりましたが、かずかずけん氏の協力でまた一つ成長させていただきました。
ありがとうございましたm(_ _ )m
私は人に話をしながら物事を考え、書いて整理する人なので、かずかずけん氏に話を聞いていただくことが助けとなっています。
こんなマニアックな話を会って聞いてくださる人が近くにいるなんて奇跡です(-^□^-)
またよろしくお願いいたしますm(_ _ )m