あの頃、私達はなにを怖れていたのだろう。
決定的な行為に及びながら決定的な関係に陥ることを
私達は回避していた。

木もれ陽のように温かく胸だけは切なく、苦しい
恋愛小説の名品、全四編

彼のぬくもり、耳に残る言葉。
それはいまも 私を支え、私を不安にする。

揺れる想いと過去喪失と再生を描く
彼女達の恋愛小説







・キャトルセプタンブル
・容認できない海に、やがて君は沈む
・ドイツイエロー
・いつか、マヨール広場で

大崎さん作品にしては珍しく、女性視点で描かれてます。
いつもはどこか傷を負った男性が主人公だけど、
今回は捨て去れない過去を持つ女性だったように思います。
全編を通して、「静けさ」がとても残り、どこか切ない気持ちになります。

心から好きな人を待ち続けたり、
父親からの置き手紙に思いを馳せたり、
突き放してしまったことを後悔したり、
なぜか忘れられない人を思ったり・・・・

「喪失」ばかりだけど、いつか「再生」していく。
ほんとに大崎さんの作品はいいですね。
ただ、読み終わるとちょっとブルーになる自分もいますが。


人生は楽しければいい。
自分が何かの犠牲になることはない。P36

「人それぞれに別れには速度がある。百キロで別れていく人と十キロで別れていく人。そのスピードをうまく合わさなければ、体を引き千切られてしまうわよ」P43

やがて恋に落ち、恋に破れ、いつか自分は容認できない海に沈むときがくるのかもしれない。どうしても受け入れることができない、許すことのできない理不尽な海の中に沈んでゆくときが。
それが人を愛することであり、人間の逃れられない宿命なのかもしれない。P103