父子関係はどうやって決まるの?-「虎に翼」5/20放送より- | 橋本治子の弁護士日記~仙台より~

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仙台弁護士会所属。

NHK朝ドラ「虎に翼」
弁護士になった寅子さんの活躍
毎日ワクワクしながら見ていますニコニコ


5/20の放送では、寅子さん
依頼者にしてやられましたね。

ご覧になっていない方に向けて
どんな内容だったかご説明します。
 

 

 

依頼者は女性。

夫に先立たれ(病死)
遺されたのは
小さい子が1人
お腹の中にも1人。
 
 

そうしたところ
亡夫の両親から訴えられました。
女性が子どもたちの
親権者として不適だから
孫を引き渡せと。
亡夫の両親は
女性とある男性との関係を
疑っていました。

女性には、夫死去後
助けてくれる男性がいたのです。

亡夫の両親は助けてくれないのに
それで子をよこせとはひどい話だ!
 
憤慨する寅子さん。
寅子さんの活躍で
裁判では女性が勝訴したのですが...

判決確定した後に
小さい子もお腹の子も
実は亡夫との間の子ではなく
その男性との間の子だった
ということがわかったのですガーン
 
不貞してたってことですね。

 

父子関係の定めについて


母子関係は、分娩がありますので
その関係に疑問が入ることは
考えにくいですが
父子関係はどうやって決まるのか?

民法に定めがあります。

父子関係の規律に関しては
2024年4月1日改正民法が施行
されたこともあり
取り上げたいと思いました。
 
 

嫡出推定

 


子どもに関しては
次のような分類があります。
 
  • 嫡出子(ちゃくしゅつし)
    法律上の婚姻関係にある
    男女の間に生まれた子
        
  • 非嫡出子(ひちゃくしゅつし)
    法律上の婚姻関係にない
    男女の間に生まれた子


そして、民法は
父子関係を早期に確定させ
子の地位の安定を図る

という目的で
嫡出推定
という条文を置いています。
 
 
 

 

2024年3月31日までに
生まれた子(改正前)

 

 
  1. 婚姻中に懐胎した子は
    夫の子と推定
     
  2. 婚姻成立から200日後
    離婚後300日以内に生まれた子
    婚姻中に懐胎したものと推定
    (つまり、1の推定とあわせて
     夫・前夫の子と推定される)
     
  3. 女性は離婚後100日間再婚禁止 
    (前夫の子と推定される期間と   
     再婚した夫の子と
     推定される期間が
     重複しないようにするため)


推定を覆し
父子関係を否定するときは
嫡出否認の訴え
などの手続きをとる必要があります。
 


 
 

 

2024年4月1日以後に
生まれる子(改正法適用)

 

※改正箇所は緑マーカー

 
  1. 婚姻中に懐胎した子は
    夫の子と推定
     
  2. 婚姻前に懐胎した子でも
    婚姻成立後に生まれた子
    夫の子と推定
     
  3. 離婚後300日以内に生まれた子は
    婚姻中に懐胎したものと推定 
     (つまり、1の推定とあわせて
      前夫の子と推定される)
     
  4. 離婚から300日以内
    生まれた子であっても
    その間に
    母が再婚をしたときは
    再婚後の夫の子
    と推定
     
  5. 女性の再婚禁止期間の廃止
    (2024年4月1日以降の婚姻)

     
文字で読んでも分かりずらいと思いますので
法務省のHPもご参照ください。
 
 

 

父子関係の規律が改正されたのは
無戸籍の人たちの存在が
クローズアップされたことが
契機となっています。


改正前の民法ですと
婚姻中 or 離婚後300日以内に
夫(元夫)ではない男性との間の子を出産
したら
夫(元夫)の子と推定されます。

つまり、出生届を出すと
父は「夫(元夫)」となります。
役所の窓口で「夫(元夫)の子じゃないんだ」
と言い張っても通りません。
夫(元夫)以外の人を父として書いても
受け付けてもらえません。

夫(元夫)が父となってしまうことを避けるため
母が子の出生届を出さないと
子は無戸籍となってしまいます。


戸籍上は夫婦であっても
夫婦としての実体がない場合もありますので
婚姻中 or  離婚後300日以内に
夫(元夫)ではない男性との間の子を出産する
という事態はあり得るのです。

私も、以前、
相談を受けて法的手続取ったことありますが
それは、夫が長期間刑務所に服役していて
なかなか離婚ができず
そんなときに知り合った男性との子を
妊娠出産したという経緯でした。
 
 
 
 
様々な事情があるにせよ
子が無戸籍になったり
父が確定しないという不利益を
子が被ることはあってはならない
と思います。


今回の改正で
離婚後300日以内に生まれた子は
その間に母が再婚すれば
前夫の子ではなく
再婚後の夫の子と推定される
ことになりました。

しかし、再婚しなければ
元夫の子と推定されますし
何らかの法的手続きが
必要となる場面は出てきます。

次回は
民法において嫡出推定された父と
生物学上の父が異なる場合に
それを修正する方法について
改正法を踏まえ
整理していきたいと思います。

また読みにお越しください。
 
 
(改正前民法)
第772条 
妻が婚姻中に懐胎した子は、
当該婚姻における夫の子と推定する。
2 婚姻の成立の日から200日を経過した後
又は婚姻の解消若しくは取消しの日から
300日以内に生まれた子は、
婚姻中に懐胎したものと推定する。
 
 
(改正後民法)
第772条 
妻が婚姻中に懐胎した子は、
当該婚姻における夫の子と推定する。
女が婚姻前に懐胎した子であって、
婚姻が成立した後に生まれたものも、
同様とする。
2 前項の場合において、
婚姻の成立の日から
200日以内に生まれた子は、
婚姻前に懐胎したものと推定し、
婚姻の成立の日から200日を経過した後
又は婚姻の解消若しくは取消しの日から
300日以内に生まれた子は、
婚姻中に懐胎したものと推定する。
3 第1項の場合において、
女が子を懐胎した時から
子の出生の時までの間に
2以上の婚姻をしていたときは、その子は、
その出生の直近の婚姻における
夫の子と推定する。
(以下略)
 
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