「影響力の武器」より -権威に従ってしまう私たち- | 橋本治子の弁護士日記~仙台より~

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仙台弁護士会所属。

前回
 
影響力の武器 
なぜ、人は動かされるのか
ロバート・B・チャルディーニ著 
 
今回は本書で触れられている
承諾の心理のうち
 
権威-導かれる服従
 
について取り上げます。
 

 


ミルグラムの実験

 

あなたは「記憶の実験」に
参加することになりました。

研究者から、次のとおり
実験の説明を受けました。
 
 

実験参加者は
「教師」役と「学習者」役
に分かれます。
 
「学習者」は単語リストを暗記し
椅子に固定、電極を取り付けられます。

「教師」は「学習者」の記憶をテスト。
間違ったら電気ショックを与えます。

あなたは「教師」役をすることになりました。
「学習者」が間違うと電気ショックを与えます。
電気ショックのボルトは
間違えると、どんどん高くなります。
 
「学習者」は痛みに苦痛の声を上げています。
「教師」のあなたは、このまま続けることに
躊躇を覚えます。
 
しかし、研究者は
「続けてください」
と電気ショックを与え続けることを
指示します。
 
 
「教師」のあなたは
どういう行動を取るでしょうか。
 
 
 

ミルグラムの実験とは
ざっくり説明すると
こんな実験です。

なお「学習者」は役者で
わざと記憶テストを間違い
電気ショックも演技で
苦しがっているだけでした。
 

実験の結果
参加者40名のうち約2/3は
最高電圧(450V)まで
レバーを引き続けたそうです。
 

 

 

 

 

権威に従うこと

 


この実験では
 
研究者=権威者
 
という立場です。
 

冷静になって考えれば
 
「学習者」は非常に苦しがっている
 
続けるべきではない

この研究者、頭おかしいんじゃないの?
 

これ以上の関わりは無用

この場から立ち去ろう

 


となりますよね。

 


しかし、

 

権威者から命令されると
自分の思いと反するのに
その命令に盲目的に従ってしまう

 
というのが実験で得られた結果。
 


 
 
 
権威に従うことが一切ダメ
ということではありません。


本書でも次の記載があります。
 
(343-344頁より引用)
権威と認められた人からの情報は
ある状況でどのように行動すべきかを
決定するための思考の近道を
提供してくれる
 
権威者の命令に従うことは
常に私たちに実質的な利益を
もたらしてくれる
 
権威者に服従すれば
報われる場合が多いと知った途端、
自動的な服従の利便性に頼る
ようになる
 
盲目的な服従は多くの場合
私たちに適切な行動を
取らせてくれるが
私たちは考えているのではなく
単に反応しているだけなので
明らかに不適切な行動を
取ってしまう場面も出てくる
 
 
 
通常の場面では
自動的反応(権威に服従)でも
不都合は起きないが
ときに不適切なことに
なってしまうこともある。
 
 
これをどう防ぐかについて本書では
  • この権威者は
    本当に専門家だろうか
  • この専門家は
    どの程度誠実なのだろうか
という2つの質問が
自分自身を守ることになる
としています。
 
 
 

 

専門家と権威

 

 
権威はあらゆる場面で
登場するように思います。

親族であれば、親や兄姉など年長者。
職場であれば、社長、上司。

普段の生活の場面においても
自分にない知識や経験を
持っている人には
権威性がありますよね。

そのため、一般的に専門家は
権威者であることが多いと思います。
 
 

私事ですが、今月、母が入院して
全身麻酔で手術受けました。

医師から手術内容の説明受けて
同意しましたが
そもそも、全身麻酔して
体を切り開くとか
訳わかんないです。


確認のために質問もしましたけれど
知識の乏しい私が
手術方法を決定できるわけもなく
最終的には信頼して
お任せするしかありません。
 
 どのように行動すべきかを
 決定するための
 思考の近道を提供してくれる
 

医師は、まさに思考の近道を
提供してくれたわけです。

いままで関わったこともない医師に
(しかも、手術説明は
 対面ではなく電話でした)
信頼を持ち、命を預けるというのも
よく考えるとすごいことですね。
医者って、すごい職業だなあ。
 
 

しかし、権威者も誤ることがありますし
権威を笠にきた悪意者もいるでしょう。
 
 
権威に従ってしまう
という自動反応に対して
私が思う予防法は次のとおり。
 
  • あっけらかんと問いかける
  • 自分の感覚を信用する
 
 
 
これって、どういうことですか?
念のため確認させてください
 
など分からないなりに
問いかけすることは
大事なことだと思います。
 
 
聞いたら悪いかな
バカなこと聞くと思われるかな
 
とか考えないこと。
 
遠慮せず。
あっけらかんと。
 
 
何となく腑に落ちない
何となくひっかかりを感じる
 
そういう自身の感覚を
信用してよいのではないかな
と思います。
 
 
 
弁護士は先生と呼ばれる職業ですので
権威者の部類に入るでしょう。
 
 
気になったことを無かったことにせず
さらりと問いかけてくれる
お客さん、同僚、事務所の事務員
私にとってはありがたい存在です。
 
 
なお、問いかけるという行為は
自分の中に湧いた疑問を
言語化する作業を要しますので
普段から場数踏んで
慣れておくことも必要なのだろうなあ。
 
 
 

権威のシンボル

 


このほか、本書では
 
権威をあらわすシンボルに
影響されやすくなっている
 
といったことなどにも触れられています。
 
 
シンボルとは
  • 肩書
  • 服装
  • 装飾品
 
 

「市役所の方から来ました」
「消防署の方から来ました」
というように
役所と関係があるかのように語って
物を売りつける点検商法がありますが
これは肩書を権威のシンボルとして
利用しているということですね。
 
 
床下とか屋根の点検だと
自分では見ることができないし
専門業者を装う点でも
権威性を発揮するのでしょう。
 
 

特殊詐欺では
 
警察官
銀行マン
銀行協会職員
弁護士
 
が登場しますが
これも肩書を権威のシンボルとして
利用していますね。
 

そもそも詐欺する人って
服装や装飾品
かなり気を使っているなあ
と思います。
 
確かに、よれっとしたスーツ着ている人に
お金を預けようとは思わないですね~
 
 
 
自分は大丈夫!
権威などにごまかされない!
などと思わず
自動反応という弱さを認識することで
防衛できるところは多いだろうなあと
思った次第です。
 
面白い本です!
読んでみてくださーい!
 
 
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