「サンタクロース」

もうすぐクリスマスです。
クリスマスと言ったら、やっぱりサンタクロースが子どもたちにプレゼントを配る光景が、ロマンチックです。
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「良い子にしていればサンタさんからプレゼントをもらえるよ」

世のお父さんお母さんは子どもにそう言い聞かせ、当日、枕元にこっそりプレゼントを置きます。

手の込んだ家庭なら、サンタさんに実際に変装してみせてあげるかも知れません。

「サンタさん」は、日本において、もはや一つの文化と言って良いと思います。

ところで、

みなさんは、
「もし自分がサンタクロースだったら」
と考えたことがありますか?

前述のような、お父さんお母さんの変装ではなく、
コージーコーナーや不二家の売り子のバイトでもなく、
お色気コスプレでもなく、
本物のサンタクロースだったら、と。

今日は一つ、自分がサンタクロースになったつもりで、プレゼントを無事に届けるためのシミュレーションして頂きたいと思います。


STEP1 何に乗るか?

まず、サンタ道の初歩中の初歩として、目的の子どもの家へ行くための「足」を考えなくてはなりません。

もちろん、ベストチョイスはトナカイです。
トナカイにソリを引かせ、颯爽とそれに乗って登場する。
スタンダードなサンタです。

ちなみに、トナカイは英語圏では「レインディア」と呼ばれています。

「トナカイ」はアイヌ語です。
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さて、
そのトナカイですが、サンタさんの本場・フィンランドでは、家畜として人為繁殖もされています。つまり、調達が簡単なのです。

ですが、ここ日本ではそうは行きません。

私は、トナカイを連れて公園を散歩している人を見たことがありません。

トナカイは、日本国内では入手困難です。

ではどうするか?

まさか、単身、電車に揺られて行くわけにも行きません。
雪が降ったら都心の電車は即止まります。

そこで、トナカイに代わる移動手段として、3つの候補を想定してみましょう。

A 自転車
B 同僚のサンタ
C 前日から近所に宿泊


まず自転車。
これは手堅いです。
少々時間は掛かりますが、エサ代不要で、小回りも効きます。

しかしデメリットは、人の目に付きやすいことです。

白昼堂々、白ヒゲに赤服で大きなずだ袋を背負って自転車に乗っていたら、パトロール中の巡査がすぐ飛んで来ます。

職務質問で済めば御の字、最悪、ずだ袋の中身は手荷物検査です。

オートバイの類も危険です。
フルフェイスにずだ袋では、ちょいとした銀行強盗です。
職務質問では終われません。

車系はボツです。


では、同僚のサンタに背負われて街を闊歩するというプランはどうでしょうか?

同僚サンタをムチで打ち、手綱をしごいて、目的地まで走らせます。

駄目に決まっています。

街の中を、2人のサンタが騎馬戦よろしく走り回っていたら、どんな未来が待っているか、それこそ子どもにもわかります。

そうです。職務質問です。

これは避けねばなりません。

とすれば、
消去法で、目的地の近所へ前日から乗り込んでおくことが、最も無難と言えます。
前乗りというやつです。

これなら、武蔵野線でも常磐線でも、好きな列車で行けます。

二日間拘束になりますが、なりたくてサンタになった以上、多少の犠牲は覚悟しなくてはなりません。

目的地に着いてしまえば、後は、手頃なネットカフェか満喫あたりに入室し、お泊まりナイトパックを契約するのみです。


STEP2、どうやって渡す?

いよいよ、子どもにプレゼントを渡すシーンがやって来ました。
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子どもたちは目を輝かせてプレゼントを受け取り、
「サンタさんありがとう!」
と言うでしょう。

その一言が聞きたくて、その笑顔が見たくて、我々はサンタクロースになったのです。
この稼業の醍醐味と言えます。

しかしながら、
日本には、少なくとも東京圏には、サンタの正式な出入口たる「煙突」が少ないのです。

オートロックの高層マンションなんて、どう対応すれば良いのでしょう?

エントランスのインターフォンで「こんにちはサンタです」などと馬鹿正直に名乗ったら、即、セコムが走って来ます。

では、代替案をどうするか?
選択肢を考えてみます。

A 宅配業者を装う
B 外で渡す
C 変装して侵入



まずは、宅配業者を装うパターンについて。

サンタとは結果主義です。
何よりも「プレゼントを届ける」というミッションを成功させねばなりません。

そのためには、子どもと直接会えないことも、覚悟しなくてはなりません。

ボーダーのTシャツ、七分丈のパンツに身にまとい、ドアをノックしピンポンし、

「佐川急便でーす」

と言えば、ミッションは完遂されること間違いなしです。

最悪、近場のコンビニで手続きし、本物の佐川ドライバーに願いを託す、という道もあります。

ですが、この選択肢は最後の最後の奥の手でしょう。

なぜなら、そこにもはや、サンタとしてのプライドはないからです。

宅配業者に届けてもらったら、それはもうプレゼントではなく、お歳暮です。


そこで急浮上するのが、Bです。

家に入れないなら、始めから入ろうとせず、外でプレゼントを渡してしまうのです。

ターゲットの子どもを、学校の校門付近の電信柱でじっと待ちます。

足元には煙草の吸殻。手にはあんぱんと牛乳です。

下校時間になり、ターゲットが出て来たら、一定の距離をキープして尾行開始。

ターゲットが友達と別れ、一人になったそのタイミングを逃さず駆け寄り、

「おじさんはね、サンタさんなんだよ」

と耳元でつぶやき、ターゲットに考える隙を与えずプレゼントを握らせます。

……駄目ですね。
やっていることはストーカーです。

誰かに見られて通報されたら職務質問だけでは助かりません。

だいたい、100m先からでも目立つ真っ赤な服を着て尾行など、尾行をなめているとしか思えません。

杉下右京警部に、
「迂闊でしたねぇ」
と言われるのがオチです。

この選択肢は採れません。


とすると結局、Cの「変装」というプランにたどり着きます。

変装し、こっそりターゲットの家に侵入し、事を済まするのです。
この早業しかありません。

では、一体誰に変装すれば良いのでしょうか?

すんなりと家に入れて、
なおかつ子どもに警戒されず、
しかも、プレゼントを渡した後、子どもが笑顔になってくれる相手。

一つしかありません。

その子どもの、家族です。

お父さんお母さん。
おじいちゃんおばあちゃん。

その子どもが、一番安心出来る、一番愛している相手に変装し、プレゼントを渡すのです。

その時、きっと子どもは、最高の笑顔を見せてくれます。

それが本当に一番の「サンタさん」なのです。


今年のクリスマス。
あなたは誰のために、どんなサンタクロースになりますか?