同僚の勧めで読んだ本。「ひと」。

主人公は20歳で天涯孤独の身となった男の子。父を亡くし、時を経て母を亡くし、1人故郷とは違う土地で暮らしている。大学を辞め、極貧生活の中で縁があって惣菜屋に勤めることができ、そこから主人公の縁が広がっていく。良くも悪くも様々な人と出会い関わっていく。主人公が天涯孤独の身となってからの1年を描いた物語。

最初読む時に若干乗り気じゃなかったんだけど、読んでいくとぐんぐん読めて、なんていうか、深い。「ひと」というタイトルだけあって、出てくる登場人物一人一人の名前について漢字まで説明がついている。ただのモブではなくて、一人一人の人生があって価値観があってっていうのを大切にしているような感じ。主人公に、その人がその人であることを受け入れているようなところがあるから、こういう名前のこういう人がいてこの人はこんな考え方で生きてきて、こういう背景があってというのがすんなり入ってくる。

現実世界と重ねて考えさせられる作品。電車の中ですれ違う人にも、会社でしか関わらない人にも、その人の今まで歩んできた人生や私の知らない事情や感情がある。相手を慮るということとか想像力を持つことの大切さを改めて考えた作品だった。

あと、終わり方がいい。私は結構好きな終わり方だった。続編の『まち』も読もうと思った。