有給休暇、意外と知らない5つの疑問「今年の4月から初めて義務化する?」


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 厚生労働省の調査によれば、日本の有給休暇の取得率はおよそ50%となっています(平成30年・就労条件総合調査、有効回答数は3697社)。1年間の有給休暇の付与日数は18.2日で、そのうち労働者が取得した日数は9.3日です。

 世界的に見て、日本の有給取得率はかなり低いと言われています。前回の記事で、アルバイトやパートの方の有給休暇についてお話をしたところ、大きな反響がありました。

 その大半が「実際にアルバイトで働いている(いた)が、有給休暇など1日も取ったことはない」「会社に聞いても『そんなものはない』と言われた」「正社員であってもなかなか取ることが難しい」というものでした。

 また、なかには有給休暇について誤って理解をしている意見があったり、会社の正しいとは言えない運用に、よくわからないままあきらめて従っていたり……そんなケースも見受けられました。

 今回は、有給休暇の取扱いについて、少し踏み込んでQ&A形式でご紹介していきたいと思います。
【Q1】短い期間で契約を繰り返す場合は有給休暇は発生しない?
【A1】そんなことはありません

 確かに有給休暇が付与される条件は、会社に勤め始めた日から継続して6か月勤務していること、その人が働くべき労働日の8割以上出勤していることです。しかし短い契約を連続して更新し、結果的に勤続期間が6か月になれば、会社は労働者に有給休暇を付与しなくてはなりません。

 6か月ごとの契約を繰り返しているので有給休暇は発生しない、という説明があってもそれは誤りです。同じことがアルバイトから仮に正社員になったときにも言えます。

 勤続年数は、アルバイトとして採用されたときから通算してカウントし、付与される日数が決まります。
【Q2】会社が「合法的に」有給休暇を拒むことができる?
【A2】通常はほぼ認められない

 本来、有給休暇は、会社の承認によって与えるというものではなく、労働者が取得したい日を前日までに指定して無条件で与えられるものです。ただし、有給休暇の取得を認めると事業の正常な運営を妨げることになる場合は、会社は日を変えるよう求めることができます。これを「時季変更権」といいます。

 しかし、これは単に「忙しいから」「代わりの人が見つからないから」程度では認められず、非常に厳しく限定されており、通常はほぼ認められないケースがほとんどでしょう。
【Q3】時給で働いている人の有給休暇ってどうなるの?
【A3】法律に従って賃金が支払われる

 月給の場合は、有給休暇を取得した場合でも給与の額はそのまま、つまり「賃金を控除しない」ことによって有給休暇を取得したことになります。

 一方、時給で働く人は、通常の賃金にその日の労働時間をかけた金額、あるいは労働基準法で定められた平均賃金を「支給する」ことになります。

 残念ながらこの違いも、時給で働くことの多いアルバイトの方に会社が有給休暇を与えることを渋る、理由のひとつのように感じます。どちらも同じ趣旨ですが、時給の場合、「賃金を支払うことになる」ことに抵抗を感じるのでしょう。
【Q4】有給休暇って今年の4月から初めて義務になるの?
【A4】そうではありません

 4月1日から働き方改革の一環として、労働基準法が大幅に改正され、有給休暇をの取扱いについても大きく変わります。権利があるとはいえ、有給休暇の取得率は低迷を続け、有給休暇を取得していない労働者は長時間労働をしている比率も高いとの意見もありました。

 こういった状況を改善するため、1年に有給休暇を10日以上付与される労働者について、5日は確実に取得させるよう、会社の義務としたのです(罰則あり)。

 一方で、有給休暇の付与そのものは前回からお伝えしているとおり、法で定められているものですので、上記の改正と混同することのないようにしてください。
【Q5】それでも有給休暇をもらえないときは?
【A5】労働基準監督署に聞いてみるテも

 まずは労使とも落ち着いて話し合いをしていただきたいと思います。使用者が単純によくわかっていなかった、ということもあるからです。それでもうまく話が進まず、相談をするのであれば、会社の所在地を管轄している労働基準監督署が窓口となります。

 今後、人を雇う上で、法令遵守は非常に大切なことであり、事業を発展させる上では不可避と言えます。

 使用者側はそのことを切に自覚し、健全な事業の発展を目指すべきでしょう。有給休暇の問題はほんの一端かもしれませんが、良好な労使関係のもと、会社も働く人も「win-win」となるよう願います。