【2018/3/5段階】子どもを締め付け、表現も規制する!?「青少年健全育成基本法」問題点まとめ | 「月松橋」活動報告

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・はじめに

 

本記事は、「青少年健全育成基本法」(青健法)の問題点の要点をまとめたものです。

現在、この法律(案)を、2018年通常国会(6月20日会期終了予定)中に提出・成立させようとする動きがあります。しかし、2014年に初めて国会に提出されたこの法案には、以下に述べる3つの大きな問題点があります。

 

①「子どもを助けるための法律」を書き換えて、「子どもはこう育てろ!」と子どもを締め付ける法律にする法案であること


②大人が「これは子どもに悪い影響があるものだ」と判断したものを、子どもの気持ちを顧みずに、全国レベルで何でも規制できる法案であること

③既存法と全く異なる内容の"新法"になるにも関わらず、「『改正』案」として提出する
ことで本来必要な議論を省略して成立させられようとしている法案であること

 

 

以下、2014年に提出された法案を参考にしながら、この法案の問題点を詳しく見ていきたいと思います。

 

①「子どもを助けるための法律」から「子どもを締め付ける法律」への変化について

 

2014年に「青健法の法案」が参議院に提出された時、その法案の名前は実は「青健法」ではありませんでした。実際に提出された法案の正式な名称は、子ども・若者育成支援推進法の一部を改正する法律案」といいます。

しかし実はこの法案の冒頭に、「この法律の題名を『青少年健全育成基本法』に改める」という一文があったのです。

つまり青健法は、(少なくとも手続き上は)「『子ども・若者育成支援推進法』という法律を改正して生まれる法律」という位置づけになります。

しかし実際には、「子ども・若者育成支援推進法」「青少年健全育成基本法」は、全く別の内容の法律になってしまっているのです。これをはっきりと示してくれる重要な資料が、2014年に参議院法制局が公開した「子ども・若者育成支援推進法の一部を改正する法律案:新旧対照表」です。

 

 

「子ども・若者育成支援推進法」は、2009年の国会に提出された「青少年総合対策推進法」案が元になっています。この法案は、「子どもは健やかに成長するのが大事」「そのために貧困引きこもりニート等の問題の対応を行おう」と言う目的・基本理念に基づき提出されたものでした。国会議論の中で、「確かに対応は大事だけど大人が上から押しつけするのはよくない」「子どもの権利・意見・利益を一番に考えよう」「大人はあくまでも『サポート(支援)』を行う立場にいよう」等の意見が採用されたことにより、題名と一部条文の修正が行われます(同時に、不登校等の問題にも対応できるよう範囲を拡大)。こうして生まれたのが、「子ども・若者育成支援推進法」です(注:実際の修正時の国会議事録はこちら)。

 

ところが、改正案(=「青少年健全育成基本法」)では、この目的・基本理念の内容が完全に書き換えられてしまっています。

「子どもは健全に育成することが大事」「そのために大人はしっかり健全育成を行うこと」としたこの条文からは、「サポート(支援)」という言葉が消えています。それどころか、「子どもの権利・意見・利益を一番に考えよう」という言葉すら、跡形もなく削除されています。ついでに「貧困や不登校・引きこもり、ニートへの対応を行うこと」という条文もなくなりました(新旧対照表の第一条及び第二条を参照)。

 

このように目的・基本理念を変更したということは、「子どものことを一番に考えるのはやめにします」「これからは大人の意見で子どもの育成方針を決めます」「その育成方針から子どもがはみ出さないように、大人はしっかり子どもを締め付けておきなさい」という意思表示だと解釈せざるを得ません。

 

 

自分自身の権利を、意見を、利益を無視されて、大人の都合だけで締め付けられて育った子どもは、

本当に「健全に育った子ども」だと言えるのでしょうか?

 

子どもの成長・育成のことを考えるのであれば、絶対にこの法案をこのまま通してしまってはいけないと強く思います。

 

大人が「子どもに悪い」と思ったものを、何でも全国で規制できることについて

 

青健法は、「子どもを大人が健全に育成する」という考え方に基づき、大人に様々な形で「やるべきこと」を課しています。その幾つかを、以下紹介します。

 

【保護者がやるべきこと】

- 子どもの健全育成において、最も重要な役割を担っているのが保護者です(第五条)

- 保護者は自分に責任があることを自覚して、子どもの健全育成を行いなさい(第五条)

 

【国・地方自治体がやるべきこと】

- 国や地方自治体には健全育成についての対応を行う責務があります(第三条~第四条)

- 国や地方自治体は健全育成推進のため啓発活動を行いなさい(第十三条1項)

- 「強調月間」を設け、特にこの時期は大々的に啓発キャンペーンを行いなさい(第十三条2項)

- 国は健全育成のため、積極的に海外の意見を受け入れなさい(第十六条)

- 地方自治体は健全育成のため対応を推進しなさい(第十八条)

- 地方自治体は健全育成に悪い影響があるものの規制等のため条例を改正しなさい(第十九条)

- 国は新部署(青少年健全育成推進本部)を設け、健全育成のため対応を推進しなさい(第三十四条)

- 新部署の長は総理大臣が務め、国は「青少年健全育成担当大臣」を新設しなさい(第三十五条)

 

大人たちに「やるべきこと」を課した一方で、「子どもの権利・意見・利益」は先述の通り二の次もしくはそれ以下にされているこの法案。

子どもがどう思うかは無視して、大人の都合で「やること」を決めていけるというこの内容では、「これは子どもに悪い影響を与えるものだ」と大人が判断したものは何でも全国規模で規制する事ができるようになります。

 

 

ところで、この法案で求められている対応とは、具体的に何を指すのでしょうか?それを知るヒントが、「請願」にあります。

ここでは、「青健法の制定」を求める請願のうち、2018年の国会(参議院)に提出された最新の請願を取り上げます。この請願では、「インターネット・スマートフォン等のネット社会」「露骨な性描写や残虐シーンを売り物にする雑誌、ビデオ、コミック誌等」「テレビの有害番組の問題等」が真っ先に問題として提起され、「極端な有害環境」が放置されている、と主張されています。この彼らが主張するところの「極端な有害環境」の対応のために必要なのが「青健法の制定」と、そう読み解けます。

 

ここまで分かれば、あとは簡単です。

もし青健法が成立すれば、青健法を推進した人々がまず行うのは、インターネットや雑誌、書籍、ビデオ、テレビ等の規制だということです。

この時、どんなに子どもが「それは僕の好きなマンガだ!」「私の好きなゲームを取り上げないで!」と泣き叫んだとしても、その声は恐らく無視されます。大人の判断の一方的な押しつけで、規制をどんどん進められるようになります。

 

非常に厄介なことに、特にこれらマンガ・ゲーム・アニメ等の「表現の自由」を規制するにあたって、青健法の条文は無敵の力を誇ります。

青健法には、「表現規制に必要な要素」が全て入っているからです。

 

 

それぞれの要素について、簡単に説明します。

 

【自主規制の推進・奨励】

- 特に十八歳未満の子どもの健全育成のために「社会環境の整備」を行うこと (第二条3項)

- 企業等は、健全育成に悪い影響のある仕事をしたり、商品を売ったりしてはいけない(第七条)

 

これらの条文は、かなり曖昧なものになっています。「具体的にどの程度『不健全』なものを売ったらいけないのか」等の明確な決まりがあるわけではありません。

しかし「明確な決まりがないこと」こそが、大きな問題なのです。明確な決まりがない以上、企業は常に「これくらいなら合法だろうか…」「いや、これはもう違法かも知れない…」等の疑心暗鬼にかられながら仕事をするしかありません。また、もしPTA等から「これは不健全な商品じゃないんですか!?」と文句を言われた場合には、「いや、これは不健全じゃないですよ」と言い返したくても、明確な決まりがない以上説得力のある反論はできません。

このような環境では、「少しでも危なそうだったらやめておこう」と判断するのが一番無難になってしまいます。こうした構図から発生しているのが、いわゆる民間による「自主規制」の問題です。

 

※「自主規制」の詳しい解説↓

青健法の第二条3項・第七条等は、この民間による「自主規制」を推進・奨励するために最適化された条文であると言っても過言ではありません。

 

【外圧の受け入れ】

- 国は健全育成のため、積極的に海外の意見を受け入れること(第十六条)

 

海外からの圧力(=外圧)も、表現の自由における極めて重大な問題です。日本のマンガ・ゲーム・アニメ等は、以前から国連をはじめとする海外機関に「規制すべきだ」として狙われ続けています。

2015年、国連の特別報告者として来日したブキッキオ氏が「日本の女学生の13%が援助交際をしている」と根拠のないデータを発信し、それに基づき「日本は表現規制を行うべき」との勧告を出そうとしたことは記憶に新しいです。

 

※ブキッキオ氏騒動含む「外圧」の詳しい解説↓

ブキッキオ氏の発言に対しては、結局日本政府が「根拠のないデータに基づく勧告が来ても対応はできない」と宣言しました。これでこの時は規制の試みは不発に終わりましたが、もし青健法が成立すればそうは行きません。

「積極的に海外の意見を受け入れる」とは言い換えると、「海外から規制しろと言われたら規制する」ということです。もしブキッキオ氏が来た時に青健法が既に成立していたら、日本政府は(その主張に根拠があろうとなかろうと)言われた通りにマンガ・ゲーム・アニメの規制を始めていたはずです。

 

【有害図書の基準強化】

- 地方自治体は健全育成に悪い影響があるものの規制等のため条例を改正しなさい(第十九条)

 

この条文と表現規制の関係を探るには、「青健法の位置づけ」を踏まえ考える必要があります。

自民党の機関紙によれば、青健法は「全国の都道府県の『青少年健全育成条例』に対応するもの」とのことです。そしてこの「青少年健全育成条例」こそが、各都道府県のいわゆる『有害図書』の基準を定めている条例です。

 

※2010年に起きた東京都「青少年健全育成条例」改正を巡る騒動の解説↓

『有害図書』をはじめとする、青少年健全育成条例に基づく規制の基準は現在、各都道府県でバラバラになっています(図書に関しては「一番厳しいのが長崎県、一番緩いのが長野県」とも言われます)。もし実際に青健法が成立し、各都道府県の条例が改正を迫られた場合、かなりの確率で「最も厳しい都道府県の規制基準に、他の都道府県が合わせる」展開になることが予想されます。

これは、四十六都道府県で規制が強化される…というだけの問題ではありません。今までは「都道府県ごとに規制の基準が違う」ため、県をまたいで『子どもに有害なもの』の規制を行うことは難しい状態でした。しかしこの基準が統一されれば、全国一律の規制が可能になります。今まで条例による規制がほぼ皆無だったオンラインのマンガやゲームといったものを、容易に規制できるようになるのです。

 

【規制を前提にした調査】

- 国や地方自治体は、社会環境が子どもに及ぼす影響に関する調査をすること(第二十二条)

 

この条文に危機感が抱かれているのには、ある前例に基づく事情があります。

2013年に「児童ポルノ禁止法(児ポ法)」という法律の改正案が提出された時、その中に以下のような条文があったのです。

 

- マンガ・ゲーム・アニメ等と、子どもの権利を侵害する行為の関係性を調査する(附則第二条1項)

- 調査の三年後を目処に、(調査結果がどうあれ)表現規制を開始する(附則第二条2項)

 

この「附則第二条」は後に法案から外され、この時は表現規制を回避しましたが、「『児ポ法改正案の附則第二条』と『青健法の第二十二条』って基本的に同じこと言ってない?」「『社会環境』に『マンガ・ゲーム・アニメ等』も含まれるとしたらもはや全くと言っていいほど一緒では?」という懸念が示されています。

 

【表現規制の実質合法化】

- 健全育成に悪い影響があるものの規制等にあたっては、言論・出版その他の「表現の自由」妨げないよう配慮せよ (第二十三条)

 

「妨げないよう『配慮せよ』」というのがポイントです。もし表現の自由を守ろうとするなら「妨げてはならない」と書かれるはずですが、そうではないのです。

つまりこれは、将来「この対応は表現規制ではないんですか!?」と問い詰められた時に、「法律にある通り『配慮はした』」「だからこれは『表現規制には当たらない』」と言い訳するための条文だと考えるのが自然です。

この言い訳用の第二十三条が存在するということ自体が、「この法律で『表現の自由』を潰すぞ!」「マンガ・ゲーム・アニメを規制するぞ!」という意思表示になっているのです。

 

近年使われてきた「表現規制」の手法を、全て詰め込んだと言えるこの法案。

この法案がもしこのまま成立すれば、マンガ・ゲーム・アニメ等の文化は壊滅的な被害を受けえます。

 

③議論もなしに"新しい法律"を作れることについて

 

先述の通り、青健法は現行法である「子ども・若者育成支援推進法」とは全く別の内容の法律です。書き換えられたのは「題名」「目的」「基本理念」のみに留まらず、『改正』された箇所は全条文の8割に及ぶとすら言われます。

また、先述の請願の内容を見ても、「青少年を健全に育成できる法律は今までなかった」「だから青健法が必要なんだ」と推進派は考えていることが見て取れます。このことを見ても間違いなく、青健法は"新しい法律"として扱われるべき存在です。

 

ではなぜ、この法案はかつて「『改正』案」として提出されたのでしょうか?

これには、国会の仕組みが深く関わっています。

 

 

国会は、「衆議院」「参議院」という二つの院で構成されます。このそれぞれの院に、「委員会」と「本会議」と呼ばれる会議があります。

一般的に法案は、まず衆議院・参議院いずれかの「委員会」で審議されます。その審議で「この法案は通して良さそうだ」という結論になれば法案は「本会議」に送られ、そこでの採決をもって可決されます。一方の院で可決されればもう一方の院に法案を送り、そこでも可決されれば法案は成立することになります。

 

そして、「新法案」に比べて、「改正案」は、圧倒的に成立させるのが楽なのです。

「新法案」は立法にあたり「立法事実(=「この法律は必要な法律なんです」と言うことを示す根拠となる数字や情報のこと)」が必要ですが、「改正案」に「立法事実」は必要ありません。

そして、委員会審議にかける時間も「新法案」か「改正案」かで全く違います。「新法案」が何日~何十日も時間をかけて議論される一方で、「改正案」は大体の場合、一日で審議を終えてしまいます。それどころか、「委員長提案」という裏技を使えば、あくまでも反対者がいなかった場合に限られますが、委員会審議そのものを全く行わずに法案を本会議に送ることすら可能です。

 

議論を圧倒的に簡略化・短縮できるのですから、青健法推進派が大喜びでこの方法を使いたがるのも分からないではありません。

しかし、作りたいのは"新しい法律"であるにも関わらず、本来"新しい法律"を作る際に必要な手順をすっ飛ばし、半ばだまし討ちのようなこそくな手段でもって自分たちの目的を遂げるようなやり方をもし今国会でも使うというのであれば、それはあまりにも不誠実ではないでしょうか?

 

・この問題、一体どうすれば?

 

以上説明した通り、この「青健法」は非常に大きな問題を持った法案です。しかしながら同時に、この法案は「なんとかしよう!」としても非常に対応が難しいのも事実です。

仮にこの法案が国会に提出された場合、最悪の事態として考えられるのが「担当の委員会で反対者が一人も出ず、『委員長提案』によって委員会審議なしで本会議に送られることです。

上の行を読んで、賢明な方なら「つまり一人でも反対する議員が委員会にいれば最悪の事態にはならないんでしょ?」とお気付きになられたかと思います。…が、それすらもなかなか難しい状態です。

 

「子どもの健全育成は大事だよね!」と言われて、「そんなことない!」と言い返せる議員はほとんどいません。少しでも疑問を感じる議員がもしいれば、その議員は恐ろしく有能な議員でしょう。「その通り!子どもの健全育成は大事です!」と即答して、何も考えずに大賛成してしまうのが普通の反応です。

↑確かにこの題名であれば賛成する議員は激減するでしょうが…。

 

ただ、「青少年の健全育成」を盾におかしな規則(法律・条例)を通そうとされることは、今に始まったことではありません。そして、そんな過去の出来事の中でも、「おかしな規則」の反対派はやられっぱなしだった訳ではありません。

※上記呟き添付画像のソース

1枚目=松下玲子元都議(現武蔵野市長)の発言動画

2枚目=西沢けいた都議のブログ記事

 

今必要なのは、ひとつは青健法をなんとかしようとしてくれる「味方の議員」、そしてもうひとつは味方の議員を支える「世論」です。

 

簡単に始められるのは、「世論」への働きかけです。まずは、自分の知り合い(家族・友人・フォロワー等)にこの問題を広めて、知ってもらって下さい。

この問題を知っている人が増えれば増えるほど、「青健法はなんとかするべきだ」と思う人が増えれば増えるほど、問題解決のチャンスは近付きます。

 

「もっと協力したい!」という方にお願いしたいのが、議員へのアプローチです。

議員へのアプローチ手段は色々とあります。直接議員の事務所に連絡するのも一手ですし、議員とのコネがありそうな団体に連絡を取るのも一手です。

今回、もし「子ども・若者育成支援推進法」「青健法」に改正されてしまえば、(マンガ・ゲーム・アニメ等の規制が始まるよりも先に)一番最初に困るのは「貧困」「不登校・引きこもり」「ニート」等の支援を行っている議員や団体です。

現在、「表現の自由」に関心のある議員の一部(本当に一部ですが…)は既にこの問題を「聞いたことはある」あるいは「対応中」という状態ですが、「表現の自由」に限らない、広範な議員・団体を動かしていく必要があると考えられます。

 

知ってもらわなければ、賛成も反対もありません。

そして、何も意見を言わなければ、この法案が提出された時、それはそのまま通ってしまいます。

 

一人でも多くの方にこの問題を知っていただくために、何卒ご協力をお願いします。

 

※2018/3/6追記:本記事の内容・画像をtwitter上で拡散するためのリンクを設置したページを作成しました。ご活用頂ければ大変幸いに存じます。

 

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