散歩道の片隅にポツンと咲いた花

その花は話すことが出来た

可愛い花なのにその上、話が出来たのだ

 

散歩していた誰かが気付き、嬉しそうに話しかけた

「奇麗だね、可愛いね」

花は答えた

「今日満開に咲いたよ、奇麗でしょ」

 

翌日また誰かが気付き、しんみりと話しかけた

「奇麗だね、可愛いね」

花は答えた

「ううん、少し萎れてきた。いつまで咲いていられるのかな」

 

その翌日また誰かが気付き、優しそうに話しかけた

「奇麗だね、可愛いね」

花は答えた

「もう花弁が落ちてしまう、さよならだよ」

 

翌日花は散り、冬の眠りについた

 

永い眠りの中で花は気づいていた

本当は話す事など出来ていなかったことを

あれは見に来てくれていた人たちが

話さずとも自分を分かってくれていたのだと

 

自分をじっと見つめながら

時には嬉しそうに

時にはしんみりと

時には優しく

自分に話しかけてくれていたのだと

 

やがて春が来て

散歩道の片隅の花は、また美しく咲いた

 

散歩していた誰かが気付き

じっと見つめる中で

花は何も言わず、ただ懸命に咲いていた