深夜二時。

スマートフォンのバックライトが、狭い部屋を青白く照らしている。
健太は、一週間前に亡くなった親友・直樹とのトーク画面を眺めていた。
不慮の事故だった。
最後に送った「また明日」という文字に、既読がつくことは二度とない。
その時だった。
画面の最下部。
止まっていた時間の横に、小さな**「既読」**の二文字が浮かび上がった。
心臓が跳ねた。嫌な汗が背中を伝う。
「……誰か、直樹のスマホを触ってるのか?」
直樹のスマホは、警察から遺族に返され、今は仏壇に置かれているはずだ。
直後、画面が揺れた。
『……あ……つ……い……』
直樹からのメッセージだ。
指を震わせながら、健太は夢中で打ち返した。
『直樹か? どうしたんだ、そこはどこだ?』
既読は、送信した瞬間に付いた。
『……暗い……狭い……ここ……どこ……?』
『落ち着け、すぐ直樹の家に連絡するから!』
『……健太……助けて……後ろ……』
後ろ?
健太は反射的に振り返った。
しかし、そこには自分の勉強机と、閉まったままのクローゼットがあるだけだ。
再び、通知音が鳴る。
『……違う……僕の……後ろ……』
健太は息を呑んだ。画面を凝視する。
ふと、ある違和感に気づき、全身の血の気が引いた。
トーク画面に表示されている、直樹のアイコン。
それは、直樹が自撮りした写真だ。背後に健太の部屋のクローゼットが写り込んでいる。
そのアイコンの中の「直樹」が、ゆっくりと首を動かし、**画面の中からこちらを覗き込んでいた。**
スマホの画面が、鏡のように健太の顔を映し出す。
その鏡面の中、健太の背後には、焦げ付いた手でスマホを握りしめた「何か」が、ぴったりと貼り付いていた。