At the end of my suffering
there was a door. 

Hear me out: that which you call death
I remember.  

Overhead, noises, branches of the pine shifting.
Then nothing. The weak sun
flickered over the dry surface.

 It is terrible to survive
as consciousness
buried in the dark earth.

Then it was over: that which you fear, being
a soul and unable
to speak, ending abruptly, the stiff earth
bending a little. And what I took to be
birds darting in low shrubs.  

You who do not remember
passage from the other world
I tell you I could speak again: whatever
returns from oblivion returns
to find a voice:  

from the center of my life came
a great fountain, deep blue
shadows on azure seawater.

 

悩み苦しんだ末に
たどり着いたドア

聴こえるかしら、わたしの声
あなたが死と呼んでいるもののこと
ちゃあんと憶えているわ

頭の上を過ぎていく、ざわめき、松の木の葉擦れの音
あとはもう、なにも聴こえない 弱々しい太陽の光が
ちらちらと地表を漂うだけ

生きていくってことが恐ろしいのは
はっきりとした意識が
暗くなった地面に吸い込まれていくようなものだから

そうして終わりが近づいてきて
恐れていたこと、生きてあること、
話せなくなること、突然、すべてが終わりを告げ
硬い地面に身を横たえるの
自分を鳥だと思って、低い灌木のなかに身体を投げ出すのよ

別の世界からの知らせを忘れているあなたに
わたしは教えてあげる
また話せるようになるわと、忘却の彼方からやってくる
それがどんなものであれ、その声は確実に戻ってきてくれるのよと

あなたの生命の中心から、とめどなくやってくる
尽きせぬ泉から、深くて青い
紺碧の海の彼方から、その声はきっとあなたを訪れるはずだからと

 

(キャロル訳)

 

 

ちなみにこの詩は、とある書評家(かもめ通信さん)によれば「2年間1篇の詩も書けなかったルイーズ・グリュックが暗闇を抜け、たった2か月で書き上げた」作品ということです。まさに文字どおり、辛苦の果てにたどり着いたドアを開けた途端、彼女の心の泉からは「深くて新鮮な」詩想がつぎからつぎへと溢れ出たことでしょう。