「歌集　シチュー鍋の天使」
　　　　北川草子：著
　　　　沖積舎／2001.10.1／1800円

風を待つ草のように、予感に満ちた言葉の数々
永遠の子ども部屋から、少女の心音が聞こえる…
　　　　　　　　　　　　　　＜帯より＞

彼女の歌集を「絵のない絵本」と解説していた方がいたが、
まさに絵本の中から飛び出してきたような言葉が並ぶ。

童話も書かれていた方であり、少女なんである。

ソフトなんである。

やわらかくて、巻き毛の天使だったり、ジャム瓶や
甘いお菓子だったり、かわいいウサギだったりが、
ふわふわととんでる感じ。

おしゃれなカタカナ語が多くてスタイリッシュなものもある。
そして、ちょっとせつなく淡い恋の歌もある。

この歌人さん、2000年に30歳という若さで病死されているので、
これが、はじめてにして最後の歌集。

私が好きだった歌五首。

シチュウ鍋から目をはなした一瞬に白い巻毛の天使がこぼれる

もう愛とよべないことを知りながらコーラの壜の意匠をみつめる

落ちていく林檎の皮の裏側できみと螺旋につながれている

ミニチュアを愛するおんなの瞳のようにときどききみはひどくとおい

アラジンの魔法のランプを前にしても願いはひとつ想うはひとり

「歌集 シチュー鍋の天使」