みなさま、感謝いたしております。
自分を楽しむ人生を
はじめられた、えみちゃんの話の続きです。
えみちゃんには、今年三十になる長男を筆頭に
三人の息子さんがいます。
えみちゃん曰く「三人三様なんですよ」とのことですが。
とくに、最近、彼女自身が変わったのは
長男とのことが大きな要因でした。
長男は親に相談をしたことが
ほとんどなく、だいたいは事後報告。
高校卒業後は就職すると
自分で決め、十九歳になった頃には
家を出て一人暮らし。
仕事は転々とするものの
働くのは大好き。
じっとしていられないタイプだったこともあり
かけもちで、寝る間も惜しんで働いて
二十代前半には経済的は基盤ができていました。
親の経済力を頼みにすることが
一度もなく、そのあたりは何の心配もいらなかったの
ですが……。
えみちゃんは
「難しいなあ、この子は」
そう感じていたそうです。
昔からずっとそうでした。
長男は、ちいさい頃から
変わった子
と言われていて、
母親のえみちゃんも
「ちょっと他の子と違うかなあ」って。
普通に育てようとしても、なんか、うまくいかない。
「難しいなあ」と感じていたそうです。
えみちゃんは
「勉強をしなさい」とか、
一切、言わなかったのですが。
「ふりかえって考えると、私
普通にしてほしいと、
ずっと思っていたみたい。
みんなと、いっしょがいい、
っていうかね。
でも、長男は〝普通〟の枠に
自分をはめることができない。
はまろうと努力しても、
彼にはそれができないんです。
つらかったんだろうな、って思います。
今だから、そう思えるんです。
昔は、はみ出してほしくない、って
思っていたんです」
それでも、長男は母親のえみちゃんのことが大好きでした。
二十歳になっても、人前で
「お母さんのことが大好きで、大好きで」
と言っていたぐらい好きだった。
それが。
二十代半ばの一時期
一年ぐらい、「お母さん、大キライ」
になってしまって
えみちゃんとは口をきかない。
えみちゃんを無視して
ついうっかり、顔を合わせると
(一一”)ムカつく息子。
そんなことをしながら、
ちょこちょこ仕事も変えながら、
地元を離れ、東京で生活をはじめた長男と
音信不通になっていたところ
今から２年前に、突然、長男から電話。
「たぶん、お母さんは知らんやろうけど
実はオレ、アスペルガー症候群なんだよ」
いきなり、そう言われて一瞬、思考停止
言葉をつまらせた、えみちゃん。
「長男は、１人悩んでたみたいです。
なぜ、自分は仕事が続かないんだろう。
ふつうに人とコミュニケーションすることが、
なぜ、こんなにも、できないんだろう。
なぜ、自分は
ふつうがしんどいんだ？
なんでかなあ、というのがあったらしくて、
自分なりに調べて病院をたずねたんですって。
そしたら、
アスペルガー症候群だと診断されて。
聞いたことのない病名で
私はただ、ただ驚いてしまったんですけど
診断名がついたとき、
うちの息子は、あぁ、そうだったんだ、って。
ほっとした、って言うんですね。
お母さんはオレの気持ちをわかろうとしないから
信じられないだろうけど
オレはほっとしたんだよ、って。
この子は、そんなこと、思ってたんだ
そう思って私は
アスペだから、こんなに、いろいろ
難しかったんだ、とか、
あまり言わないほうがいいかな、って。
長男の話を聞いてあげて
わかったよ、って言って
電話を切ったんですね」
それ以来、用事があるときだけ、
電話をしてくる感じだったのですが。
去年の１１月
またまた突然
長男から衝撃のＬＩＮＥ。
つづく。
舛岡はなゑ
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