4月より、高齢者虐待防止の推進に関する義務化になりました。虐待には、身体的虐待 、介護・世話の放棄 、心理的虐待 、性的虐待 、経済的虐待 などがあります。介護職員は高齢者と身体的に接する機会が多い職種であるので、虐待が起こりやすい環境であります。「介護職員は虐待をしない」ことは言うまでもありませんが、介護職員自身が高齢者から虐待を受けた場合、どのように身を守るのか、また、人間関係にトラブルになりやすい仕事なので、言葉や感情な行き違いなどを、高齢者やその家族から「心理的虐待」と行政に通告されたときに、どのように行政は公平な対応をするかという視点が抜けている制度改悪であると思う。

 

 実は、私のデイサービスにも虐待の疑いで介護保険課から調査されている。本年2月、デイサービスの従業員が利用者を虐待して、それを会社が行政に報告していないとの理由で介護保険課給付係が調査に来ました。虐待していると疑われた件は9か月前の入浴介助の出来事でした。当社介護職員H氏(女性78歳)が入浴介助をする際に、利用者S氏(女性84歳認知症あり)に「おむつに便が付いているので自宅でよく洗ってから来てください」と言いました。そのことを自宅に帰ってから長女様にS氏が言ったところ、長女様が激怒して苦情の電話があり、驚いて、直ぐにS氏自宅に介護職員H氏、管理者、私と3人で謝りにいきました。しかし許してもらえず、他のデイサービスに変更になりました。実際、介護の現場ではこのようなケースはよくあります。介護職員H氏には始末書を書かせて、厳重注意したところ、本人から「私は悪くない」と辞表を提出されました。つらかったが、私は、この件はこのまま終了だと思っていました。ところが、2月に(しかも実地指導の4日ぐらい前)、給付調整係の方が3人、デイサービスに来て、「区民から情報があった。虐待をしていた事実を御社が隠ぺいしていた」と2時間もの取り調べがありました。給付調整係の主査は、「なぜ虐待の事実があったにもかかわらず、介護保険課に通告しなかったのか。会社が隠ぺいしていたのでないか」と問われました。「確かに不適切な言葉があったが、虐待とは、言えないのでないか」と反論しました。また「虐待の研修をしていない」とも言われ、その後の実地指導でも、違反の項目にされました。介護職員H氏も役所に2回呼び出されて、「認定調査の仕事はするな」と言われました。介護職員H氏は自治体で介護の仕事に20年以上携わっていたベテランです。ケアマネや自治体の認定調査の業務もしていました。「通報をうけたという一方的な理由だけで、仕事を奪い、虐待介護職とレッテルすることは、あまりにも理不尽である、介護職員の人権やプライドを傷つけている」と抗議しました。私は「当社にはそのような事実はなく、もし、虐待施設として不当に認定された場合、行政不服審査もしくは、東京地裁に控訴します、行政の傲慢ゆえのパワハラ、虐待でなないでしょうか?」と担当者に言いました。その後、行政から調査結果の報告はまだありません。

 

 利用者や家族からの苦情が「介護職の虐待」と捉えられることはあってはならない。このケースのように一方的な行政指導が日常的に行われると介護の業界は崩壊してします。介護事業所や介護従事者は、行政の指導には当たり前に従うだろうという驕り、介護という職業を低く見ていることが根底にあるのではないか。私は、訪問介護もデイサービスも経営していましたので、高齢者自身が介護職員に対して暴力やセクハラ、言われなき泥棒扱いなどのケースをたくさん見てきました。多くは、これらに耐えて、訴えることもなく、ただ我慢してきました。でも、行政も事業所も守ってくれないのであれば、介護従事者は介護の現場を去るしかありません。そして、このような仕事にはだれも従事しなくなるでしょう。行き過ぎた行政指導を無くし、介護職自身も虐待を受けないように予防するマニュアル作りにしていかなくてはならない。