「不毛地帯」ー辛い時こそ誇りを忘れないことー



要約

主人公の壹岐が終戦後ロシアに抑留されシベリアで強制労働に遭う。その中でかつての上司を裁く東京裁判への出廷を余儀なくされた際の葛藤、収容所の中で看守に媚びるものがある反面日本人としての誇りを捨てず助け合うものもあるという過酷な環境だからこそ生まれる人間模様の中でどのように生きるか、またどんな思いで日本人捕虜が過ごしていたのかが描かれる。日本に帰還後は経験のない商社に勤め、優秀で個性豊かな人々と共に仕事をし、第二の人生を生きてゆく姿、戦後の日本経済の復興が描かれている。

所感、学び

シベリア抑留と教科書ではたかが6字でしか表現されていないですが、その裏には戦争が終わったあとも、戦争のせいで苦しむ日本人がいた後鳥羽決して忘れてはならないと思います。要約では表現しきれないが想像を絶する過酷な環境の中で仲間を思い助け合う姿、日本人として軍人としての誇りを忘れない姿には感銘を受けました。

その一方で体験した本人が綴るドキュメンタリーではなくまたまだ未熟な私の読解能力では、当人等の細かな感情の機微を読み取るのは難しかったです。想像の域を出ないが誇りを守る裏にはソ連への憎しみなども隠れていただろうし、同じ事実でも書き方によって多様に表現されあるという事実もまた忘れてはならないと思います。戦争を実際に経験した人が数を減らす現在、こうした作品の重要性は論ずるまでもないがどんな本を読む時も心に留めておこうと思います。

歴史を政治史ばかり、資料ばかりから読み取るのもいいですが、このような人々の記録を記した本から読み取ること、歴史の裏側を見ることは歴史の勉強としても有意義なものだと思います。教科書では描かれない人間模様が描かれた価値ある作品だと感じました。