オレはウソの天才だ。
Fはベッドの上で改めてそう思う。
隣では浮気相手が寝息をたてている。
この女を落とすのも楽勝だった。
若くキレイでプライドが高い女。
ただし頭が悪い。
こういうタイプが一番得意だ。
Fはマージャンやポーカーといった
ゲームに負けたことがない。
とにかくウソがうまい。
ウソが顔にでない。
とにかく表情をつくるのがうまいのだ。
…さて、帰るか。
家に着いた。
ずいぶん遅くなってしまったが
妻には得意のウソで切り抜けよう。
「ただいま~」
「あなた遅かったじゃない。ゴハンは?」
「仕事が大変で何も口にしてない。何かくれ。」
しれっとウソをつく
「お疲れさま。それじゃすぐ作るわね」
と、ニコニコしながら台所に消えていった。
ほら、気付かない。
これだからバカな女は扱いやすい
「浮気なんてしたら舌を噛みきって死んでやる!」
なんてオレは結婚前に言ったが、バカな女だから
それで信用したのかな。
アハハ。
「はい。あなた。これ味見してみて」
妻が食事を運んできた。
両手で頬杖をついてニコニコしながら見てる。
「ああ。うん、うまい…、っつ!!」
口の中に激痛がはしる。
何か入ってる…。
吐き出すとカミソリが。
舌が切れて血だらけに。
「なんでこんなものが…!」
妻は両手で頬杖をつき
目が飛び出るほどカッ広げ言う。
「だってあなた、舌を噛みきらないじゃない」